三浦九段の辛抱は実らず
藤井聡太棋聖への挑戦権を懸けて争われる、第93期ヒューリック杯棋聖戦(主催、産経新聞)の決勝トーナメント、渡辺明名人―三浦弘行九段戦が3月24日に東京の将棋会館で行われ、144手で渡辺名人が勝利しました。
渡辺名人は前期挑戦者で、決勝トーナメントからのシードです。1回戦では島朗九段を破りました。対する三浦九段は二次予選からのスタートで、深浦康市九段と井出隼平五段に連勝し決勝トーナメント進出、1回戦では黒田尭之五段を破っています。
本局は三浦九段の先手で、角換わりに進みました。三浦九段の攻めを渡辺名人がとがめることに成功しリードを奪います。ですが三浦九段も辛抱強く指し回してチャンスをうかがいます。112手目、三浦九段が飛車と金の両取りに急所の割り打ちを入れた▲6一銀に対して、渡辺名人が構わず△7六歩の銀取りで攻め合った局面では形勢が急接近していました。
渡辺名人は自身のブログで、ここで▲6六銀と当たりになっている銀を逃げる手を気にしていたと明かしています。また銀取りに構わず▲5二銀成と王手で金を取る手もありました。いずれも難しい戦いですが、三浦九段にも十分にチャンスのある戦いのようです。
実戦の三浦九段の着手は▲7二銀不成。これは自玉の玉頭をにらむ飛車を取る手で、こちらも有力に見えますが、対する△7七歩成▲同金△6五桂がより厳しい攻めでした。先手は飛車を取ったのはいいのですが、攻め駒が後手玉から離れたのが大きいのです。三浦九段は取ったばかりの飛車を自陣に投入して頑張りますが、以下は着実に先手玉を追い詰めた渡辺名人が勝ち、準決勝進出を決めました。
相崎修司(将棋情報局)