米Appleは3月23日(現地時間)、米アリゾナ州が「ウォレット」アプリに運転免許証や州発行の身分証明書(ID)を登録できる最初の州になったと発表した。登録すれば、フェニックス・スカイハーバー国際空港の一部のTSAセキュリティチェックポイントなどで、iPhoneまたはApple Watchをかざすだけで公的身分証明書の確認を完了できる。

同社は昨年6月に、開発カンファレンス「WWDC21」でモバイル運転免許証(mDL)対応をiOS 15に追加すると発表。9月に8つの州との提携を発表し、そして3月14日にリリースしたiOS 15.4でmDL対応を実現した。

クレジットカードなどと同様に、運転免許証やIDもいくつかの簡単なステップで「ウォレット」アプリに追加できる。画面上部の+ボタンをタップし、「Driver’s License or State ID」を選択。公的身分証明書の人物と同一であることを確認するために、自撮りと運転免許証などの表裏のスキャン撮影が求められる。それらのデータが発行元の州に送られ、州が確認・承認する。また、偽装防止のステップとして、セットアップの過程で顔と頭を動かすように要求される。

mDLは、個人情報の漏洩、偽造や詐欺のリスクを軽減し、また公共や民間のサービスをデジタルで使える利便性をもたらすと期待されている。その普及のカギとなるのが、導入に踏み切る州の拡大だ。米国で運転免許証やIDカードは州の管轄下にあり、mDL導入は各州の判断に委ねられる。Appleによると、昨年に同社が提携を発表したコネチカット州、ジョージア州、アイオワ州、ケンタッキー州、メリーランド州、オクラホマ州、ユタ州に加えて、コロラド州、ハワイ州、ミシシッピ州、オハイオ州、プエルトリコでも導入計画が進められているとのこと。

mDLを実装するためのインターフェイス仕様を規定した「ISO/IEC 18013-5」の国際標準が固まり、それに準拠してAppleがmDL対応に乗り出したインパクトは大きく、デジタルセキュリティ産業の業界団体であるSecure Technology Allianceが昨年末に研究会で公開したデータによると、一年前はごく一部の州にとどまっていたmDL導入の動きが、短期間で少なくとも30州以上に拡大した。