シャープは3月23日、大阪の八尾事業所に開設した、同社のAIoT家電のある生活を体験できる「AIoTショールーム」を報道陣に初公開。AIoTを活用したスマートライフ事業の取り組みと、今後の重点戦略を紹介した。

  • シャープのAIoT家電のある生活を体験できる「AIoTショールーム」(大阪・八尾事業所)

シャープの家電製品などで広く展開しているプラットフォーム「AIoT(AI+Internet of Things)」。同社は「AIoT=人に寄り添うIoT」をコンセプトに掲げ、家電を道具ではなく「愛着を感じられるパートナー」、「もう一人の家族」として価値を高めることを目指している。

AIoT対応家電は、ユーザーが機器を使いつづけると調理メニューの嗜好や、洗濯状況、生活時間などの習慣を学習し、最適化していくのが特徴だ。長年使ううちに選ばれる調理メニューが変わるといった、“暮らしの変化”を察知して対応することもできる。また、AIoTオープンプラットフォームにつながる他社サービスが増えており、今後も拡充していくとのこと。

さらに、今後の商品開発においては、AIoT家電を買い替えても、それまでの最適化情報を新機種に引き継ぎ、ダウンロードできるようにするという。

「AIoTで白物家電と事業を改革」

シャープは、AIoTで白物家電と事業を改革することを重点戦略として掲げ、AIoTによるスマートライフの実現を目指している。

具体的には、AIoTと、プラズマクラスターなどの独自技術を組み合わせてユーザーの暮らしに役立つ商品を創出し、それらとソリューション事業の融合を図る。家電同士のデザインをマッチングさせてつながる“デザイン家電”も展開。さらに、機器から集めたデータを活用したクラウドサービス事業への参入を進め、AIoTでビジネスシーンの課題を解決するB to Bソリューション事業を強化していく。

今回、同社はAIoTを活用した4つの新規ソリューション事業の具体的な中身を紹介した。

■ヘルスケアソリューション

同社は耳にかけて“噛む”動作を計測する咀嚼計「bitescan」を2018年に実用化。現在は、大学の研究用、食品メーカー、高齢者向けのイベント、学校教材としての活用有用度が広がってきているという。

また、女性の健康における課題をテクノロジーで解決するフェムテックにも取り組む。月経管理アプリとIoT収納ケースにより、生理日の記録と生理用品の在庫管理を実現し、女性の健康への貢献を目指す。

■ストック管理ソリューション

冷蔵庫内や食料保存スペースに専用トレイを設置し、スマホ向けの専用アプリ、関連するECビジネスと連携。食品の購入日や在庫の状況の情報をチェックしたり、調味料の個数や購入時期を管理するといった、健康ソリューションへとつなげていく考えだ。

■集中管理ソリューション

同ソリューションは、ホテルや高齢者施設などの業務用空間への展開を想定。AIoTを活用して複数台のエアコンや空気清浄機、洗濯機をPC/タブレットなどからダッシュボードで集中管理できるようにするもので、2022年度に日本とASEAN諸国、台湾、北米で順次導入するとのこと。

■他社連携ソリューション

COCORO HOMEアプリを中心に、他社メーカーとのサービス連携を拡充。これまでにもシャープのエアコンと他社製の照明機器や給湯器が連携して動作するようにする仕組みを実現したほか、洗濯機用の洗剤・柔軟剤のECサービス連携、KDDIや関西電力と連携した見守りサービスなどを提供している。こうした他社連携ソリューションは、、2022年度も順次拡充していく。

AIoTのグローバル展開に注力、台湾・米国の事例紹介

さらに、AIoTを活用し、地域ニーズに寄り添った海外事業を拡大。日本で培ったオープンプラットフォームとサービス基盤を活用し、地域ごとにローカルフィット化を行い、グローバルなAIoT商品・ソリューションサービスの拡大を目指す。

2022年度には、日本発AIoT家電のグローバル展開を台湾で開始。ウォーターオーブン「ヘルシオ」では、レシピのダウンロードができるようになるほか、音声対応を実現し、食材キットの提供も行う。冷蔵庫向けには、庫内の在庫確認や、家族への伝言/見守り機能を提供。洗濯機では、運転状況やエラーメッセージの通知に対応する。

米国では2020年から、ビルトイン家電を中心としたスマートキッチンを展開しており、AIoTを活用した買い物やレシピ、調理、キッチン空間のサポートを提供。また、ストック管理から自動発注までのサプライサービス、オンラインでの料理教室や点検サービスの提供といったサービス・ソリューション事業も展開している。

今後も米国の文化生活環境にフィットしたソリューションを見出し、ローカルフィットしたAIoTの活用を目指す。

  • Sharp Electronics Corporation (SEC)家電本部長のJames Sanduski(ジム・サンダスキー )氏が、米国市場におけるAIoT関連の取り組みを紹介

国内家電のネット接続率8割へ。「売上成長は海外が一番伸びる」

シャープは、国内のAIoT家電(白物家電、テレビを含む)のネット接続率を現在の5割から、2024年度には8割以上に引き上げることを今後の目標として掲げる。

また、国内の白物家電において、AIoT対応製品の販売金額の構成比を現在の3割から、2024年度に7割以上に拡大することを目指す。欧米・中国・台湾では販売金額構成比で5割以上を目標とする。

説明後に、シャープ 専務執行役員 スマートライフグループ長 兼 Smart Appliances & Solutions事業本部長の沖津雅浩氏が、報道陣からの質問に答えた。

スマートライフ事業全体においての国内/海外市場の現在の売上比率と今後の目標について問われた沖津氏は、「2021年には約50%超が国内、海外が50%を少し切るという状況。2023年度には海外売上が国内売上を追い越すことを目指している」と回答。上記の重点戦略においては、AIoTや既存商品も含めて海外市場での売上が最も成長を見込める、という認識を示した。

また、家電のネット接続率の現状と今後の目標について質問が及ぶと、同氏はエアコンなどは接続率がまだ低いとしつつ、「テレビはほぼ100%、調理器具のホットクックは6割以上に接続率が上がってきている」と強調。「ユーザーメリットが高い製品は接続率も高くなってきている。極端に言えば、(将来的にはネットに)つながないと使えないような商品を作ってもいいのかなというふうにも考えている」とした。