安産祈願や子供のお宮参り、厄払いなどで神社にご祈祷をお願いする際、その謝礼として「初穂料」を納めます。しかし、普段あまり馴染みがなく、「どんな封筒に入れていったらいいの?」「名前や金額はどうやって書くの?」と戸惑ってしまう人も多いでしょう。
この記事では、初穂料の封筒・のし袋の選び方や金額の書き方などについて解説します。
マナーを知って、恥ずかしくない態度でご祈祷を受けられるようにしましょう。
初穂料とは
初穂料とは、神社でご祈祷をしてもらうときに納めるお金のことです。
元々日本では、秋に神様にお供えする、その年に初めて収穫された稲穂などの穀物のことを「初穂」、野菜や魚などを「初物」と呼び、これを神様にお供えしていました。
しかし、農業や漁業従事者が徐々に減り初穂や初物を用意することが難しくなったことや、初穂が「その年初めて収穫された穀物」よりも「神様にお供えするもの」と捉えられるようになったことから、段々とお金を「初穂料」と呼んで初穂の代わりにお供えするように変化していったと考えられています。
現在では、季節に関わらず神様に供えるお金を「初穂料」と呼びます。
お葬式以外の神社で行う祭事全般、つまりお宮参りや七五三、地鎮祭や厄除けなどはすべて表書きに「初穂料」と書いてしまって構いません。
神様の前にお供えするという意味で「御神前」、あるいは玉串や榊の代わりにお供えするお金として「玉串料」「御榊料」と書くこともできますが、「玉串料」「御榊料」はお守りや御札を受ける場合にはあまりそぐわない点に注意しましょう。
初穂料を入れる封筒とのし袋の選び方
初穂料を神社に納めるときに、そのまま財布から出してお金を渡そうとするのはマナー違反。
ご祈祷を受けようと考える時期は人生におけるさまざまな節目に当たるはずです。あらかじめ準備して、丁寧にのし袋、あるいは白い封筒に入れて準備しておくようにしましょう。
基本的に水引は蝶々結びを選ぼう
基本的に初穂料を入れるのし袋は「紅白の蝶々結び」を選びましょう。
神社にご祈祷を願うお宮参りや七五三、厄除けなどは、すべて「何度あっても嬉しい出来事」だからです。
ただし、結婚式で初穂料を神社に納める際には「繰り返しあってはならない」ため結び切りの水引を使用します。
また、「家を建て直すような天災が起きませんように」という願いを込め、地鎮祭で淡路結びのものを使うケースもあります。
金額によって印刷と水引を使い分ける
のし袋には水引が印刷されたものと、実際に水引がかけられているものの2種類が存在します。どちらもコンビニや100円ショップ、文房具屋などで購入可能です。
1万円以下の場合は印刷されたもの、それ以上の額になる場合は水引のかかったものを使用しましょう。
パッケージに目安となる金額が書かれているものもありますので、そちらも確認すると安心です。
初穂料を入れる封筒とのし袋の書き方
初穂料を入れる封筒・のし袋には表書きが必要です。短冊がついている場合は短冊に、そうでない場合は中央の、どちらも水引より上段に「御初穂料」、下段に名前を書きます。
名前は姓名両方記入するのが基本ですが、夫婦連名の場合は姓のみでも構いません。保護者や初穂料を払う人ではなく、必ず「ご祈祷を受ける人」の名前を書くようにしましょう。例えば、赤ちゃんのお宮参りなどのケースでは赤ちゃんの名前を、安産祈願では夫婦の名前を書きます。名前の読みが難しい場合はふりがなを振っておくと読み間違いを防げます。
夫婦で記入する場合は夫のフルネームを中央より右寄りに書き、左側に妻の名前のみを書き、全体がバランスよく中央にまとまるようにしましょう。連名にする場合も同様に、目上の人から順番に右側に書くようにします。
使用する筆記用具は筆、あるいは筆ペンです。
会社の場合
会社でご祈祷を受ける場合は、代表者の名前を中央にフルネームで書き、その右側に会社名をやや小さめの字で書きます。
中袋の書き方
のし袋には、のし袋よりやや小さめの白封筒が中に入っているものがあります。これを中袋と呼び、お金はこの中に入れます。
中袋に記入する際にも筆か筆ペンを使用し、表面の中央に大きめの字で「金 ◯円」と金額を、裏面の左側に小さめの字で住所と氏名を記入します。中袋にガイドがある場合はそちらを優先しましょう。
金額を記入する際には大字(だいじ。壱・弐などの漢数字のこと)を用い、金額が簡単に改ざんされないようにします。
【大字と通常の漢数字の対応】
(四・六~九は使用頻度が少ないため省略しています)
漢数字 | 大字 |
一 | 壱 |
二 | 弐 |
三 | 参 |
五 | 伍 |
十 | 拾 |
百 | 佰・陌 |
千 | 仟・阡 |
万 | 萬 |
例えば5,000円であれば「金 伍阡円」、1万円であれば「金 壱萬円」となります。
お金を中袋に入れる際は、のり付けをして封をする必要はありません。そのままのし袋の中に入れましょう。
中袋がない場合の書き方
中袋がついていないタイプののし袋や白封筒を利用する際は、封筒の裏に金額と住所を書きましょう。封筒の左下に右側が金額、左側が住所となるように記入します。こちらもすぐ金額を確認してもらうため、のり付けはしません。
もちろんこの場合も筆か筆ペンを使い、大字で縦書きにして書きましょう。
初穂料の相場目安
初穂料を包む際、金額が神社側によって明示されていれば困ることはありませんが、「お気持ちで」と言われるケースもあります。 おおむねどの程度の額を初穂料として包めばいいのか、相場は以下になります。
安産祈願(戌の日) | 5,000円~1万円 |
お宮参り | 5,000円~1万円 |
厄払い | 5,000円~1万円 |
地鎮祭 | 3万円~5万円 |
基本的には5,000円が目安。祈願を受ける人数が多い、祈願後に御札などをいただける場合は多めの額を包むとよいでしょう。
会社で祈祷を受ける場合は、神社と会社の規模(祈祷を受ける人数)にもよりますが、1万円~5万円が目安になります。
お札は新札でなくとも可
「あらかじめ準備するものだから、初穂料も新札ではないといけないのかな」と考える人もいますが、初穂料ののし袋や封筒に入れるお札は必ずしも結婚式のように新札を準備する必要はありません。
ただし、シワシワのお札や汚いお札などを入れるのはやはりマナー違反。もらった人が嫌な気持ちになってしまいます。新札でなくてもよいですが、きれいなお札を使うようにしましょう。
また、封筒や中袋にお札を入れるときには「向き」がある点にも注意が必要です。
お札の向きを全部揃え、お札の表面と封筒の表面が一致するように、かつ肖像画が上になるように封筒の中に入れます。
封筒を開けたときに、最初に見えるのが肖像画の部分になっていれば大丈夫です。
袱紗(ふくさ)に入れて持ち歩こう
封筒やのし袋はそのままスーツの内ポケットなどに入れていると折れたり汚れたりしてしまうため、袱紗(ふくさ)に入れて持ち歩くのがよいでしょう。袱紗は100円ショップでも手に入りますが、忘れてしまった場合はハンカチや風呂敷で代用できます。
ただし、袱紗を使うのは「持ち歩きの間」だけ。初穂料を渡すタイミングで袱紗から出し、相手にはのし袋や封筒だけを渡すようにしましょう。
初穂料の封筒の選び方と書き方を知っておこう
初穂料とは、ご祈祷のお礼として神様にお供えするお金のこと。「その年に収穫された稲穂を神様にお供えした」ことを起源としています。そのため、七五三などでお参りするとしても、お寺などでは使えない表現である点に注意が必要です。
「初穂料」という表現を使うのは、基本的に慶事のケースになります。そのため、蝶々結び、つまり「ほどける、何回も結び直せる形」ののし袋を使いましょう。
普段はあまり馴染みのない冠婚葬祭のマナーですが、初穂料が関わるときはお宮参りや七五三など、人生の大切な節目になることが多いもの。 よい思い出にするためにも、正しい作法を知っておきましょう。