Unityは3月21日、「Adam」や「The Heretic」で話題を集めたUnityデモチームの新作「Enemies」を公開した。チェスの駒を手にする40代の女性の肌感やシワ、頭髪、シャツの生地などをリアルに表現、まるで映画のワンシーンのようなリアルタイムCGを実現している。
デモチームは「The Heretic」でフォトリアリスティックなデジタルヒューマンの制作に取り組み始め、Unityはその成果を「Digital Human」パッケージとしてコミュニティに提供した。「Enemies」は、それを土台に発展させたもの。エンジニアリング・チームのロードマップに沿って、HDRP(High Definition Render Pipeline)、SSGI(Screen Space Global Illumination)、新しいAdaptive Probe Volumes、レイトレーシング、NVIDIAのDLSS(Deep Learning Super Sampling)などを採用し、新しいストランド・ベースのヘア・シミュレーションをとり入れた。
例えば、顔や表情のリアリズムという点で、透明感のある明るい肌では血流の微妙な変化が表情の表現に影響を与える。それを反映するテンションテクノロジーを開発した。また、GPU上のスキンアタッチメントによる高密度メッシュによって、産毛による肌の繊細な質感を実現した。目もライティングの効果に加えて、虹彩にコースティクスを加えてリアリズムを高めた。
リアルな髪の表現を求めてデモチームはR&Dチームと、ストランド・ベースで髪のオーサリング、スキニング、ストランドベースシミュレーション、レンダリングを統合的に行うソリューションを共同開発した。HDRPでのヘアシェーディングでは、パラメータを変更することなく、あらゆる光の状態で優れたビジュアル効果が得られるという。
未来感あふれるデモだが、これは数年後に実用化される技術ではなく、「The Heretic」と同様に、このプロジェクトから得た知識、ツール、技術を開発者コミュニティと共有し、開発者やクリエイターが独自にリアルなデジタルヒューマンのプロジェクトを推進できるようにする。まず、サンフランシスコで始まったGame Developers Conference(GDC:3月21〜25日)でリアルタイム4Kのレンダリングのライブデモを披露し、いくつかのセッションでUnityチームが技術やプロジェクトについて解説する。そして1〜2カ月の間に、Digital Humanパッケージからのアップデートと機能強化を含む「Digital Human 2.0」パッケージをリリースする予定だ。