攻め合いからリードを奪い、トドメの金打ちで快勝

渡辺明棋王へ永瀬拓矢王座が挑戦する第47期棋王戦五番勝負(主催、共同通信社)の第4局が、3月20日に栃木県日光市「日光東照宮」で行われました。結果は115手で渡辺棋王が勝利し、五番勝負の成績を3勝1敗として、棋王防衛を果たしました。

本局は先手の渡辺棋王が矢倉を目指し、永瀬王座は中住まいを作戦に採ります。40手目に永瀬王座が△7五歩と先手玉のコビンを目指したのに対し、構わず▲1三角成△同香▲2四歩と渡辺棋王は強気の攻め合いで応じて、局面が一気に動き始めました。65手目▲6六歩は桂取りになっているだけでなく、▲6五歩~▲6四歩とまで進めば、後手玉を挟撃する形を作ることができます。このあたりから渡辺棋王は形勢に自信を持ち始めたようです。

■重い金打ちが決め手に

控室では渡辺よしと見られていた87手目、局面はすでに終盤です。ここで42分の長考から渡辺棋王が▲2三金と王手に打ちました。戦力が重複する上に手順に相手玉を逃がすように見える金打ちで、相当に打ちにくい手ですが、この手が事実上の決め手になりました。対して△同玉は▲1三角成△3二玉▲4四香で先手よし。永瀬王座は△4一玉と逃げましたが、▲3三角成△同銀▲同桂成と後手玉に圧力を掛けて、先手の攻めは止まりません。以下は王手竜取りを掛けて自玉を安全にし、最後に即詰みに打ち取った渡辺棋王の快勝となりました。

この勝利で渡辺棋王は棋王戦10連覇を達成。同一棋戦の2桁連覇は大山康晴十五世名人、羽生善治九段に続く3人目の快挙です。「10連覇のチャンスはもうないと思うので、意識しているところでした。それが達成できたのはよかったです。20代後半からはいい時期も悪い時期もあったので、いろんなことに対応できたことがいちばん価値としてあると思います」と喜びを述べました。

相崎修司(将棋情報局)

10連覇の大記録を成し遂げた渡辺棋王(左)(写真提供:相崎修司)
10連覇の大記録を成し遂げた渡辺棋王(左)(写真提供:相崎修司)