女優の上白石萌歌が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、3月20日・27日の2週にわたって放送される『新・上京物語2022』。上京して、有名洋食店「レストラン大宮」に入社した若者たちの奮闘を追った作品だ。
2年連続でレストラン大宮の人たちを見つめた上白石は「私もここで修業したいなと思うくらい(笑)」と、その人間関係にすっかり魅了されたようだ――。
■料理人を夢見て真っすぐ突き進んできたが…
21年4月、料理人を目指し上京してきた3人の若者がいた。栃木県から上京してきた同じ高校出身の千春さん(18)と楽壱(らいち)さん(18)、彼らより1つ年上で、茨城県からやってきたあかりさん(19)。就職先は、かつて『料理の鉄人』にも出演した洋食界の巨匠・大宮勝雄シェフ(71)が経営する有名店「レストラン大宮」だ。
新人3人の中で、料理への思いが特に強い千春さん。仕事が終わっても、寮の自室で自炊し料理の腕を磨いていた。千春さんが料理人を目指すきっかけは、中学時代、がんとの闘病生活で食欲のない祖母のために料理を作ったこと。食の大切さを実感し、料理人を目指す千春さんは、往復2時間半も掛けて調理科のある高校へ進学。パティシエ部とそば打ち部に所属し、料理漬けの高校生活を送った。
夢に向かって、真っ直ぐに突き進んできた千春さんだが、彼女の配属はホール担当。一方、同期入社の2人は調理担当に。時が経つにつれて同期と大きく差をつけられていく千春さんは、気持ちが焦れば焦るほど失敗し、空回りしていく。一人悩みを抱える中、彼女が向かったのは……。
■まさに『ザ・ノンフィクション』の醍醐味
昨年に続き、レストラン大宮に飛び込んだ新人の物語を見守り、「前回の彼の行方も気になっているんですけど、大宮シェフも相変わらずですし、七久保先輩が新たな道に進もうとしているのを見て、これだけ何年もかけて同じ場所で働いている人たちの生き様を追うということはなかなかないなと、改めて思いました。なので、“新刊”が出たような気持ちで『今日はどんな物語が続くんだろう』と思って、楽しみにして読めました」と語る上白石。
その上で、「誰一人、自分がやりたかったことで100%心を満たしてる人っていない気がするんです。今回も、みんながなりたい理想と現実の間で揺らいでいて、それぞれが何かを切り捨てて何かを選ぶということをしているので、みんな10代なのにすごく大人だし、覚悟があるし、目の奥に強さを感じて、よりパワーアップした『上京物語』になっていると思います。すごく現実的で、まさに『ザ・ノンフィクション』の醍醐味だと思います」と振り返った。
前回収録を終えた際に印象に残った言葉を聞くと、七久保先輩が新人に食材の包丁さばきを指導するときにかけた「オレンジの気持ちになるんだよ」を挙げていたが、今回は、海外にある大使や総領事の公邸で働く公邸料理人を目指す七久保先輩が、その経験者であるレストラン大宮のOBに言われた「向こうに(大宮)シェフはいない。自分がシェフになるんだ」が心に刻まれた。
「まるで映画に出てくるセリフのようなセリフで、カッコいいなと思いました。今まで自分が雇ってもらっている場所にはシェフがいたけれど、行く先は自分がシェフになって自分が回していく。1つ上の段階で君は闘うんだという言葉がすごく印象に残っていて、それはどの世界でも一歩踏み出すときに通じる心構えだなと感じました」
■店の外から「テレビで見た人だ!と思いました(笑)」
実は昨年の放送後、浅草で仕事があった際に、お店の前まで立ち寄ってみたほど、レストラン大宮に魅力を感じていた上白石。
店の中まで入ることはできず、外から大宮シェフの姿を見て「テレビで見た人だ!と思いました(笑)」と立場が逆転してしまったそうだが、「映像を通して、シェフはすごく愛情深い方だし、先輩方もフランクな方が多くて、すごく人間関係が良さそうだなと思いました。職場で人間関係に悩むことって、一番苦しいじゃないですか。でも、レストラン大宮はコミュニケーションがちゃんと取れている上で皆さんがそれぞれ悩んでらっしゃるから、本当に見ていて温かくなって、私もここで修業したいなと思うくらい(笑)。みんなが同じつらい思いをしてきたから分かる気持ちがあって、一丸となっている感じもするので、いい職場だなと思います」と感心する。
改めて、今回の物語について、「2年連続で同じ場所のその先を見ることができてうれしかったですし、新しく上京してきた方の眼差しを見て、私もすごく勇気をもらいました。春は新鮮な季節ですが、どんな人でも揺らぐことが多いと思うので、この『ザ・ノンフィクション』を見て、同じように揺らいだり、悩んだりして皆さんも勇気を得てほしいなと思います」と呼びかけた。
●上白石萌歌
2000年生まれ、鹿児島県出身。11年、第7回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞し、デビュー。以降、テレビ、映画、舞台、「adieu」名義での音楽活動など幅広く活躍。18年『羊と鋼の森』で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。主な出演作に、声優を務めた映画『未来のミライ』、ドラマ『義母と娘のブルース』(TBS)、『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ)、『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK)、『教場II』(フジテレビ)、『ソロモンの偽証』(WOWOW)など。4月からは連続テレビ小説『ちむどんどん』(NHK)、『金田一少年の事件簿』(日本テレビ)に出演する。