NTTドコモが3月19日より、デザインの観点から未来の暮らしを考察する展示会「少し先の未来とデザイン『想像する余白』展」を開催しています。会場には、同社のプロダクトデザインチームと外部デザイナーが共同で行った「デザイン研究プロジェクト」を進める中で生まれたプロトタイプやスケッチ、キーワードなどが展示され、具体的な製品に落とし込まれる前のアイデアや思考プロセスを体感できるものになっています。

  • 少し先の未来とデザイン「想像する余白」展

    少し先の未来とデザイン「想像する余白」展

NTTドコモのプロダクトデザインチームは、プロダクトデザインの方向性を探る目的で、少し先の未来の生活をデザイナーらと考える研究プロジェクトを毎年実施しています。また2010年からは、プロダクトデザインに取り組む姿勢などを表現する展示会も開催してきました。今回はその研究プロジェクトと展示会を合わせ、この「想像する余白」展として開催しています。

  • 宮沢哲氏

    プロダクトデザインチームを率いる、プロダクト部デザインディレクターの宮沢哲氏

今回の「デザイン研究プロジェクト」に参加したのは、3名の社外プロダクトデザイナーとNTTドコモのプロダクトデザインチーム。「人と技術がともに生きる“なめらかな暮らし”」を全体のテーマとし、それぞれのデザイナーが「映像」「音」「移動」をきっかけとして未来の人々の生活のあり方を模索しました。

そのプロセスを見せるものとして企画された今回の展示では、プロジェクトの成果となるような完成形に近い試作品などではなく、あえて未完成の段階のキーワードやスケッチ、デザイン画、素材などで構成。これは、来場者の想像力を喚起し、一緒に考えたいという狙いを込めてのことだそうです。

「映像」というきっかけからプロジェクトを進めたのは家具・インテリアなどを得意とするプロダクトデザイナーの倉本仁氏。家電とインテリアの親和性を高め、テクノロジーとともに快適な生活を営むという意味で「ともに暮らせる」をキーワードに、テレビをとりまくプロジェクターやスピーカーのさまざまなあり方を検討しています。

  • 倉本仁氏のプロトタイプ

    倉本仁氏は「映像」というきっかけから、インテリアの親和性を高めた家電のあり方などについて検討しています

  • スピーカー/プロジェクターのプロトタイプ

    スツールになるスピーカー、足をたためるプロジェクターなど。展示されているのはあくまでもアイデアを検証するためのプロトタイプになります

鈴木元氏は「音」の空間に作用する性質に着目。映像では「画面」という境界が明確に存在しますが、音はその境界があいまいです。そこから、「まざりあう境界」」というキーワードが浮上しました。将来は音の解像度が上がり、気配なども感じられるのではないか……ということから、さまざまなプロダクトが検討されたそうです。会場の展示ではスピーカーの音声も利用していました。

  • 鈴木元氏の展示

    「音」の性質に着目した鈴木元氏は、さまざまな素材や形を検討している様子がうかがえます

  • 空間を広げる小さくするイメージ

    音のデバイスによって空間を広げたり小さくしたりするイメージ

「移動」をきっかけにした三宅一成氏は、これまで移動の距離や効率が重視されていたのが、コロナ禍で自分の生活圏の1~2kmの範囲を散歩することの価値を見直したところから、人にもっと積極的に歩いてもらえるようなツールを考えたそうです。人を乗せて移動するものだけでなく、街を歩く過程をより楽しくするようなアイデアなども検討されていました。

  • 三宅一成氏の展示

    「移動」をきっかけにした三宅一成氏は、たんに移動の効率を上げるといったことではなく、その過程や移動する空間にも着目

  • 都市とはコミュニケーションの可能性そのもの

    キャプションに「都市とはコミュニケーションの可能性そのもの」とあります。これはそのコミュニケーションの場所となる簡易店舗のイメージでしょうか

NTTドコモが販売するスマートフォンなどの製品はメーカーが製造するものですが、どういった端末を販売したいか、スマートフォンがどうあるべきかといった点についてはNTTドコモとメーカーがしっかりディスカッションし、それが製品に反映されるそうです。そのNTTドコモのプロダクトデザインの根本を作り上げていくのが今回紹介されたような研究プロジェクト。そこでどういったことが検討され、どんなプロセスで練り上げていくのかを紹介する興味深い展示でした。

  • 屋外テント

    今回の展示は、検討のプロセスを示す未完成のプロトタイプが中心。そこからさらにステップが進み、このテントのような商品に近いモデルやモックの形になっていきます

展示会概要

  • 展示会名:少し先の未来とデザイン「想像する余白」展
  • 入場料:無料
  • 開催期間:2022年3月19日(土)~3月27日(日)、会期中無休
  • 開場時間:
    • 11時00分~18時00分(3月19日~22日)
    • 11時00分~19時00分(3月23日~27日)
  • 会場:21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3(東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン)
  • 展示会場

    展示会場