eスポーツを活用した教育、人材育成を支援する団体NASEF JAPANは、eスポーツイベント「NASEF JAPAN MAJOR」を一新することを発表しました。
2021年は『Fortnite』の大会を開催していましたが、2022年は『League of Legends』を使用したトーナメントを開催する予定です。全国の高校生、定時制高校生、高等専門学校生(3年生まで)、通信高校学校生が対象で、同一学校に通う高校生5人ひと組での参加が条件です。
また、大会を通じて人材育成を図るプログラム、「Beyond the Game Program(ビヨンド・ザ・ゲーム・プログラム)」を開発。スポーツマンシップレッスンとスキルアップレッスンの2つの観点から参加する生徒の意識や技術の向上を目指します。開講は3月22日ですが、今回、東京都の私立朋優学院高等学校のeスポーツ部がいち早くプログラムを体験。その様子をレポートします。
「Beyond the Game Program」は、困難に立ち向かうための心構えや仲間を尊重しチーム力を高める「スポーツマンシップレッスン」と、上位レベルで戦うための戦略やテクニックを学べる「スキルアップレッスン」といった2種類のレッスンから構成されます。
「スポーツマンシップレッスン」では、eスポーツをプレイする際に必要なトレーニング方法や課題に対して適切に対応するための力を養います。チームメンバーとのグループワークを通して、チームワークやコミュニケーションの取り方などを学びます。
「スキルアップレッスン」では、『League of Legends(LoL)』のグランドマスターに到達した担当者により、ゲームの上達方法についてのレクチャーを受けられます。講義はゴールドランク、シルバーランク、ブロンズランクの3つを用意。初めて『League of Legends』をプレイするような人は、大会へ参加できるレベルまでの成長を目標にしています。また、レッスンには『LoL』のプロチームRascal Jesterのプロ選手もコーチとして参加予定。プロ選手の話を聞ける貴重な機会となっています。
本来は、それぞれのレッスンが2時間ですが、今回のメディアお披露目会では、その半分の1時間で実施されました。NASEF JAPANから2人の講師が派遣され、プロeスポーツチームRascal JesterからSirotama選手とShakespeare選手も参加しています。
最初に行われたのはスポーツマンシップレッスン。NASEF JAPANの岡田勇樹氏が講師として登壇します。「チームワークを重視した考え方」をテーマに、チームワークに関する概念を理解し、お互いを尊重しながら議論をしていきます。
講師が出す提言に対して、生徒は議論を重ねて回答を導き出します。ここでは個人で考えるだけでなく、仲間と一緒に考えていくグループワークを採用。この議論とグループワークこそが、チームワークを良くする要素のひとつであり、実践することで、生徒達はより理解度を深めていきます。
たとえば、講義では、ゲームプレイ時に行われるチャットで相手のミスを責める様子について考えます。オンラインゲームで不特定多数とプレイをする中には、悪態をつくプレイヤーも少なくありません。これについて「ゲーム内では日常である」と結論づけるのではなく、問題のある発言だと認識したうえで、チーム内のコミュニケーションに活かすことを考えます。
グループワークで議論し合った結果「仲間がミスをしても悪く言わない、ポジティブな言葉をかける」など、良いチーム環境を作るために必要な要素を生徒自ら導きだしていました。また、プレイ中は声がけをする人物「コーラー」を指定し、その人が中心となり指示を出すことを決めておくことも重要だと指摘。ただ、コーラーが正しい判断をできるように多くの情報をコーラーに伝える重要性も唱えていました。
Rascal Jesterのプロ選手からは「負けがこんでいるときは自分のミスに気がつかず人のせいにしがち。時間をおいて冷静になってから見直すと自分のミスに気がつくこともある。コーチなど第3者の意見も客観的で自分を見直す機会になります」と、伝え方以前に自分の行動を冷静に見つめ直す重要性についても説いていました。
次に行われたのがスキルアップレッスン。4月16日からブロック予選が開始される「NASEF JAPAN MAJOR League of Legends Tounament Spring 2022」に向けて、『League of Legends(LoL)』の技術向上を目指したレクチャーを行います。
講師はNASEF JAPANの宮川慶吾氏。シーズン9~11でグランドマスターを達成した腕前の持ち主です。レッスンは、いわゆる初心者帯であるブロンズから、シルバー、ゴールドの生徒を対象に行われます。
まずは、『LoL』の基本となるポジションであるロールについての解説です。『LoL』は5人ひと組のチームが対戦し、マップ上にあるそれぞれのチームの最終拠点を破壊したチームが勝利です。
マップ上には中間拠点があり、相手陣地に攻め込むにはそれらの破壊も必須。5人のプレイヤーは、3つの通路、トップレーン、ミッドレーン、ボットレーンのいずれかを攻めます。それぞれのレーンを担当するプレイヤーのほか、暗礁地帯を活躍の場として遊軍的に活動するジャングラー、それらのプレイヤーを支えるサポートの5つのロールがあります。
1人でオンラインに潜って参戦するソロキューでは、ほかのプレイヤーとの意思疎通がしにくく、自分のみの活躍を考えてプレイするため、ほかのロールのことを意識することは少ないかもしれません。多くのプレイヤーは1つのロールのみを担当するので、自分の担当していないレーンでの動きについて知らないことが多くなってしまいます。ですが、チーム戦の場合、自分の役割以外の理解が必要。まずはこのソロキューとチーム戦の違いを解説していきました。
さらにチーム戦がうまく機能するために、チームがどういった作戦で戦っていくかを共有する必要があり、バンピック(相手チームとキャラクターを取り合うシステム)段階からチームの意思が反映する必要性も説きます。
サポートを担当するShakespeare選手は、コンビを組む攻撃的ポジション「ADC」に対して「サポートがADCに求めるのは、生き残って相手にダメージを与えることです。まずは自分の生存を優先してほしい」と、チーム戦としてチームメイトに望むことが明確にあることを伝えていました。
チーム戦では、どういう戦略でいくのか、そのためにはどのチャンピオン(キャラクター)が必要なのか、どのタイミングで攻め込むのかなど、あらかじめ決めておくことが必要です。ゲーム中では状況に合わせた作戦の変更や行動のGOサインなども必要となってくるため、先のスポーツマンシップレッスンがリンクし、相乗効果が得られるようになっていました。
eスポーツ部など、高校におけるeスポーツ活動はまだ始まったばかり。部活の顧問や担当する教師にとって分からない点、不慣れな点をフォローするためにNASEF JAPANは存在しています。さらに今回の試みで、部活や高校の代表として大会に参加するための準備ができていない生徒に対しても「Beyond the Game Program」によってフォローされるようになりました。OBやOGがおらず、コーチのあてもない高校にとっては、ありがたいプログラムだと言えます。
「Beyond the Game Program」は3月22日より4月15日の大会予選開始直前までオンラインにて行われます。興味がある学校や生徒、先生方は是非ともNASEF JAPANに連絡してみてはいかがでしょうか。