「舞台『刀剣乱舞』綺伝 いくさ世の徒花」が19日より上演される(東京・明治座 3月19日〜4月3日、福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール 4月22日〜4月24日、大阪・新歌舞伎座 4月30日〜5月15日)。同作は名立たる刀剣が戦士の姿となった“刀剣男士”を率い、歴史を守るために戦う刀剣育成シミュレーションゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」を原案に舞台化し、圧倒的な人気を博している舞台『刀剣乱舞』(通称:『刀ステ』)シリーズの最新作。2020年6月~8月の上演を予定していたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、演出を変更した「科白劇 舞台『刀剣乱舞/灯』綺伝 いくさ世の徒花 改変 いくさ世の徒花の記憶 ※”綺伝 いくさ世の徒花”に取り消し線」として上演された。今回ついに本公演として「綺伝 いくさ世の徒花」が上演されることとなった。
今回は、同シリーズで歌仙兼定を演じる和田琢磨にインタビュー。舞台シリーズ初期から同役を演じ、2020年に「科白劇」を率いて成功へ導いた。今回は本公演として演出も本来想定していた形になるだけでなく、前回出演のメンバーに加え新たな出演者も登場するなど、スケールアップした内容を見せていくという。
■新たに『刀ステ』シリーズに触れる人におすすめな点は?
――2020年の「科白劇」以来の上演となりますが、心境はいかがですか?
前回はコロナ禍が始まったばかりで出演者もスタッフの方も右も左もわからず、どういう対策をとっていいのかも確立されていない状況でした。今振り返ってみると、あの時期にあの規模の公演を最後までやり遂げられたのは一つの自信にもなりましたし、今回は初めからみんなの結束力が高いと思います。
――コロナ禍で大変なことも多いですが、逆にこれを機に配信などでも新たに『刀ステ』シリーズに触れてみようと思う方もいるのではないかと思います。『刀ステ』の魅力はどのようなところにあると思いますか?
僕も舞台のお話をいただいて『刀剣乱舞』のコンテンツに触れるようになったのですが、もともと歴史好きだったのもあって、歴史のifを描いたところに想像力をかき立てられると思いました。たとえば「もし織田信長が、本能寺の変で死んでいなかったら?」とか、公演ごとにすごくロマンを感じる物語があって。もちろんさまざまな刀剣男士のキャラクターが出てくるところも魅力ですけど、単純に歴史が好きな方にも楽しんでいただけるんじゃないかな。
「科白劇」の時には大河ドラマ『麒麟がくる』が放映されていて、ちょうど細川忠興やガラシャが出てきていたんです。僕が演じる歌仙兼定は細川忠興の刀で、歴史を遡って元の主人に会いに行くという物語にはすごくロマンがあると思うので、新しい方にもぜひ興味を持っていただけたら嬉しいです。
――ストーリーについても伏線や物語のつながりなども、かなり考察しがいのあるものになっているのではないでしょうか?
脚本・演出の末満(健一)さんが本当にすごいですよね。1人で楽しむこともできますし「自分はこう思う」「ここはこういうことじゃないかな」と、コミュニケーションも取ることができる。役者側もこの後どうなるのか知らないですし、僕らも楽しみにさせてもらっています。欲を言えば、一緒にお酒を飲めるような状況になったら、ちょっと末満さんを酔わせて「最後、どうなるんですか?」と聞き出してみたいです(笑)
あとは殺陣についても、「日本でやっている舞台の中で1番殺陣数の多い公演、クオリティが高い公演にしよう」ということは掲げています。いろいろなスタイルがあると思いますが、『刀ステ』の殺陣は映像やキャラクターごとの違いなど楽しむ要素が本当にいっぱいあります。クオリティの高いものを望めば望むほど危険も伴ってくるんですが、そこは安全にしながら、わくわくしていただけるような殺陣をより追求していきたいです。
実は今回のメンバーの中で、まだ僕だけしか時間遡行軍と戦ったことがないんです。2020年の「科白劇」では出演者も絞っていたので、一対多数の殺陣の緊張感を味わってほしいな(笑)。しかも、稽古場だと相手の顔が見えているんですけど、本番に入って時間遡行軍の格好になると、相手が誰だかわからなくなるんです。前回より出演する役者も増えますし、時間遡行軍の役をやってくださる方たちも増えますし、本来の『刀ステ』をお客様に見てもらえると思いますので、「科白劇」をご覧になった方でも、さらに深みのある仕上がりをお見せできるんじゃないかと思っています。
――本当に隊長という感じですね。
そうなんですよね……すっかりベテラン勢になっちゃいました(笑)
■「戦い続ける座組み」を受け継ぎたい
――「科白劇」に続き七海ひろきさんが細川ガラシャを演じられますが、前回も見た女性が「ガラシャの女」になってしまったという感想も見かけ…
刀剣男士としては「自分たちももっと頑張らないと」と言いたいところなんですが!(笑) やはり宝塚歌劇団で長年男役をやってらっしゃったので、立ち姿や声の出し方など、勉強になるところはたくさんありますし、『刀ステ』で初めて女性の方が登場したというインパクトも大きかったです。七海さんの持っている役者としての魅力も相まって、皆さんが「ガラシャの女」になられるというのは、我々も納得でした。
――いい影響があったということですか?
ものすごくありました。七海さん自身は『刀ステ』初めての女性キャスト、しかも女性の役を演じるのも退団後は初めてということで不安を感じられていたみたいなのですが、そんなことは微塵も感じさせないぐらい、素敵なガラシャを演じられていました。
――ちなみに、前回を振り返ってキャストについて印象的だったことはありましたか?
『刀ステ』の殺陣は本来時間遡行軍の方がたくさん入ってきて派手な立ち回りを見せるものなのですが、前回の「科白劇」は1人でステージ上に立ち、映像に合わせて見せるものでした。だからみんな、自分の演じるキャラクターの刀の振り方や動き方を研究していまして、中でも篭手切江役の大見(拓土)くんは、本当に公演を重ねるごとに殺陣を自分のものにしていったという印象があります。『刀ステ』には初参加だし、性格もすごく優しい子なので不安がっていたようでしたが、稽古中だけでなく本番に入ってからもどんどん自分で研究を深めていて、「すごいな」と思いましたし、他のみんなもどんどん役を自分のものにしているように感じました。
――本公演という点では、IHIステージアラウンド東京での公演がシリーズ史上最大のスケールと言われていましたが、その次の公演を引き継ぐ形になることについてはいかがですか?
もともと僕が参加する前から、三日月宗近役の鈴木拡樹さんが「戦い続ける座組み」という指針を立ててくれたので、公演ごとに受け継いでいく気持ちです。今回は座長という立場もいただいているので、その気持ちは絶やさずにやっていきたいですし、去年のIHIステージアラウンド東京での公演は東京のみだったので、地方のお客様にも「『刀ステ』いいな」と再認識していただけるよう、改めて頑張っていきたいです。
きっと2年半ぐらい生で『刀ステ』に触れられていない方もいらっしゃると思うので、元気を与えられるように頑張っていきたい。『刀ミュ』(ミュージカル『刀剣乱舞』)は各地で公演をやってらっしゃるので、『刀ステ』も負けじと全国の方に魅力を届けられるように、とにかく千秋楽まで走り切ることを目標に頑張っていきます。どのような形でもいいので応援していただければ非常に嬉しいなあと思っています。
――いい意味で「負けじと」という気持ちもあるのでしょうか?
もちろん、意識する気持ちはあります。『刀ミュ』の良さもたくさん知っているし、逆に『刀ステ』にしかない良さもありますから、これからも両方のファンの方に楽しんでいただければ嬉しいです。
■和田琢磨
1986年1月4日生まれ、山形県出身。2009年より俳優として活動し、ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン(11年〜12年)、『ダイヤのA The LIVE -』シリーズ(15年〜17年)、舞台『刀剣乱舞』シリーズ(17年〜)などで活躍。近年の主な出演作に舞台『首切り王子と愚かな女』(21年)、『舞台サザエさん』(22年)、ドラマ『#コールドゲーム』(21年)、映画『劇場版ほんとうにあった怖い話2020 呪われた家』(21年)など。