自陣の堅さを生かして押し切る
藤井聡太棋聖への挑戦権を懸けて争われる、第93期ヒューリック杯棋聖戦(主催・産経新聞)の決勝トーナメント、久保利明九段―豊島将之九段戦が3月15日に関西将棋会館で行われ、127手で久保九段が勝利しました。
久保九段は2次予選を勝ち抜き、第89期から5期連続となる決勝トーナメント進出です。対して豊島九段は第89期の棋聖戦で自身の初タイトルを獲得しています。翌年に惜しくも失冠していますが、それからも常に決勝トーナメントに名を連ねていました。
本局は先手の久保九段が三間飛車に振り、相穴熊となります。豊島九段が放った54手目の△6六銀がハッとする手。▲同金と取られるただ捨ての一着ですが、これを代償に後手は金を上ずらせ、8筋を突破して竜を作りました。駒割は先手の銀得ですが、形勢は均衡を保っています。
相穴熊はどちらが先に相手玉へ食いつけるかが勝負の分かれ目となりやすいのですが、本局では71手目の▲3三角成が英断の角切りで、△同銀に▲4一銀と打って先手の食いつきが成功しました。以下、形を決めるだけ決めてからの79手目▲6九歩がまさに岩より堅いと言われる金底の歩で、これで後手が先手玉に迫ることが難しくなりました。以下は自陣の堅さを生かして攻めきった久保九段が勝利し、2回戦進出を果たしました。
相崎修司(将棋情報局)