「白猫プロジェクト」や「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」などのゲームコンテンツを提供するコロプラが3月1日、新オフィスを公開した。東京ミッドタウンに設けた新オフィスは、専門家監修のもとパナソニックの「エアリーソリューション」をはじめとした最新の感染症対策を導入し、ニューノーマルの働き方に最適化した空間となっている。

テレワークが定着し、どこでも働けるようになった時代に、オフィスはどうあるべきなのか。コロプラ新オフィス内覧会にて、新時代におけるオフィスの姿を探った。

  • コロプラ新オフィスから新時代の働き方を探る

コロナ禍をきっかけにオフィスのあり方が変わった

コロプラは2008年創業のゲーム会社だ。主力タイトル「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」や「白猫プロジェクト」のほか、様々なゲームコンテンツを運営。現在はVR事業など新たな領域にも積極的に取り組んでいる。

同社の従業員数は本体862名、グループで1,424名に上る。以前は恵比寿ガーデンプレイスに本社を置いていたが、2022年2月1日から東京ミッドタウンへと移転した。

移転理由について、同社CFO兼CGROの原井義昭氏は「コロナ禍で様々な影響を受けたこと」だと話す。

「ゲーム開発とは、様々な環境のプロフェッショナルが力を合わせて1つの作品を作り上げる作業であり、チームでのクリエイティブなものづくりには、顔を合わせたコミュニケーションが重要でした」(原井氏)

  • コロプラ 取締役CFO兼CHRO 原井義昭氏

    コロプラ 取締役CFO兼CHRO 原井義昭氏

コロプラの過去のオフィスには、従業員のコミュニケーション活性にこだわった様々な設備が用意されていた。気軽に集まれるコミュニケーションスペース、遊びながらアイデアを生み出せるボールプール、リラックスしながらコミュニケーションできるこたつ部屋やリゾートを模した南国スペースなどである。

しかし、こうした状況はコロナ禍で一変する。出社率が調整され、会食や全社集会、部活動などは禁止となった。出社している従業員と在宅の従業員のコミュニケーションコストが増大し、少人数のオンラインMTGが増加したことにより会議室は慢性的に不足するようになった。

そこで同社が取り組んだのが、コロナ禍でも従業員が安心して働くことができ、なおかつ従業員のクリエイティビティを活性化できる新たなオフィス作りだった。

移転先が決定し、プロジェクトがスタートしたのが2021年1月。約2年をかけて、科学的に根拠に基づく最新の感染症対策を施し、出社・在宅双方の従業員が円滑にコミュニケーションをとれる次世代型のオフィスが完成したという流れだ。

「エアリーソリューション」を導入し、感染症対策を徹底

ここからは、コロプラの新オフィスを紹介しながら、具体的なコンセプトや設備の狙いについて紹介しよう。

まず、新オフィスの特徴の1つといえるのが、リノリウム素材を床材に採用したことだ。リノリウムとは、亜麻仁油などの天然素材から製造される素材だ。カーボンニュートラルでSDGsにも配慮され、抗ウイルス効果や抗アレルギー効果を持つことから、病院や教育施設などでも使用されている。

移転プロジェクトを担当した同社コーポレート本部経営管理部部長の森林太郎氏は、「国内オフィスでの大規模な利用はコロプラが初となります」と胸を張る。

ほかにも、オフィスの様々な場所に感染症対策が施されている。

たとえば、各会議室への入り口に消毒液を設置したり、一部のドアを自動ドアにして接触感染対策を行っているほか、アクリルパーテーションの設置や座席間距離の確保、オンライン会議用に個室ブースを設置し、飛沫感染対策もとっている。ユニークなのは、個室ブースのドアノブが肘で開けられるタイプになっていること。素手で触らないことで接触感染対策にもなっているのだ。

  • 水循環型ポータブル手洗い機「WOTA」

    水循環型ポータブル手洗い機「WOTA」

  • Web会議など使用する1人用個室ブース

    Web会議など使用する1人用個室ブース

また、空気感染対策として、HEPAフィルター空気清浄機を導入したほか、天井のダクトを追加し、換気量を増強したという。調湿機能も強化し、湿度は移転前オフィスの30%と比べて50%にまで向上した。

  • 天井のダクトを追加し、換気量を増強

    天井のダクトを追加し、換気量を増強

空気感染対策の一環としては、パナソニック社の「エアリーソリューション」を導入。エアリーソリューションとは、天井に設置されたルーパーから流れる空気により、下方向への面気流(ダウンフロー)を発生させ、空間内に浮遊するエアロゾルを床に落とすという仕組み。毎分12,000リットルの空気を浄化し、ブース内だけでなく周りの空間の空気も循環させられるという。

  • パナソニック社の「エアリーソリューション」

    パナソニック社の「エアリーソリューション」

コロプラでは、このエアリーソリューションを採用したブースをコミュニケーションエリア内に設置。マスクなど他の感染症対策と合わせて、安全に会話できる環境を作り上げている。

コミュニケーションとクリエイティビティを刺激するオフィス設備

続いて、コミュニケーション活性面での工夫について紹介する。以前のオフィスでも設けていたコミュニケーションのためのフリースペース「コロパーク」は新オフィスでも採用。席間距離を十分にとり、パーテーション設置などで感染症対策を施している。

また、コミュニケーション促進という観点から、オフィスの至るところに立ちミーティングスペースを設けており、「立ち話」からクリエイティブなアイデアが生まれることを期待している。

  • ミーティングスペース

    ミーティングスペース

逆に、1人で集中して作業に取り組みたい従業員のために、飛行機のファーストクラスをイメージしたリクライニング機能つき個人用ブースを用意。

  • リクライニング機能つき個人用ブース

    リクライニング機能つき個人用ブース

また、レトロゲームから最新機種までとりそろえたゲームコーナーや、専門書から漫画、ビジネス書まであらゆるジャンルの書籍をそろえた「クマ図書館」など、従業員のモチベーションやクリエイティビティを高めるための設備が整っている。

  • レトロゲームから最新機種までとりそろえたゲームコーナー
  • レトロゲームから最新機種までとりそろえたゲームコーナー

    ゲームコーナー

  • 様々な書籍が並ぶ「クマ図書館」

    様々な書籍が並ぶ「クマ図書館」

このほかにも、プロのマッサージ師が常駐し、従業員が無料でマッサージを受けられる「Kuma SPA」や、再生ペット樹脂を使用した飲料「コロプラ水」など、健康経営やSDGsに配慮した取り組みも随所に見られた。

  • 従業員が無料でマッサージを受けられる「Kuma SPA」
  • 「コロプラ水」

ニューノーマル時代にあえて出社する意味とは

「感染症対策と従業員のコミュニケーション促進の両立」という難しい課題に取り組んだコロプラの新オフィス。単に感染症対策の面から安心・安全というだけでなく、従業員にとって「ここで働きたい」と思えるような仕掛けが施された魅力的なオフィスとなっていた。

これだけのオフィスを作り上げるには、膨大な費用がかかりそうにも思えるが、実際のところは構築費が坪単価で40万円、感染症対策として1.7億円という予算規模に収まっている。

テレワークが定着し、どこにいても働ける時代に、あえてオフィスに出社する意味とは何か。コロプラの新オフィスが、そのヒントを提示している。