テレワークが普及するに伴い、Webカメラも一般家庭に広く普及するに至っている。ビデオ会議などで自宅内が映り込まないよう、カメラの角度に苦心している人も多いかと思うが、今回紹介する「OBSBOT Tiny 4K」は4K解像度で撮影対象の自動追尾までしてくれる優れものだ。使用感をレポートする。

  • OBSBOT Tiny 4K

OBSBOT Tiny 4Kは、中国REMO TECH社が開発した追跡型Webカメラだ。通常のWebカメラはカメラ本体が固定式で、被写体が動いても画角は変わらない。最近AppleがiPadなどのインカメラで「センターフレーム」(英語ではCenter Stage)として、超広角カメラとデジタルズームを使って被写体が中央に入るよう追尾したり、被写体が増えた時にズーム倍率を下げたりして全員が映るように調整する機能を付けているが、OBSBOT Tiny 4Kにはブラシレスモーター内蔵の3軸ジンバルが組み込まれており、カメラ自体がパン(水平方向への首振り)・チルト(垂直方向への首振り)・ズーム(拡大・縮小)に対応している。回転はそれぞれの方向にほぼ360度の自由度があるため、かなりの広範囲を映すことができる。

こうした機能はいわゆる「PTZカメラ」として、防犯カメラのような遠隔操作カメラに採用されているケースはあるが、あくまでWebカメラというところがポイントだ。

カメラ本体は台込みでW58xH142xD58mm、重さは台込みで176gと、一般的なWebカメラと比べて大きめだが、自動回転機能付きだと考えると、かなりコンパクトだと言っていいだろう。本体背面には電源ポートとUSB Type-Cポートがあり、USB Type A-電源ポートのケーブルとUSB Type-Cケーブル、Type-CをType Aに変換するアダプターが付属する。

  • カメラは電源オフ時には下を向いているので、物がぶつかったりしてもレンズが傷ついたりすることはない。ちなみに本体にはマイクも内蔵されているが、外見上は識別できない

  • 背面にUSB Type-Cポートと電源ポートを装備。PCに接続する際、パソコン側のType-Cポートに接続する場合はUSBケーブルだけでいいのだが、Type Aポートに接続する場合は電力が足りないため、上の電源ポートも併用する

本体の底面には1/4インチサイズのネジ穴が開いており、三脚に固定できる。また、底面は付属の磁石付きマウントユニットと接続できる。磁力はかなり強力で、逆さにしても問題ない。机の上に直接置く、マウントユニットを使ってディスプレイの上に置く、三脚に固定すると、さまざまな利用スタイルが取れる。

  • 本体の底は平坦ではなく、三脚穴の周りは若干凹んでおり、磁石マウントはこの凹みに装着する。三脚穴を使うときはこの凹みのぶんを考慮しておきたい

  • ディスプレイの上に設置するときはマウントに固定して、折りたたみ式の足で角度を調整する。今回は極薄タイプなのでちょっと斜めになってしまったが、カメラ自体が回ってくれるので実用上は問題ない

本体にスイッチ類は特に付いておらず、電源が入ると自動的にカメラが起き上がり、撮影が開始される。USB UVCに対応しており、パソコンと接続するとドライバーソフトをインストールすることなくWebカメラとして認識され、すぐに利用できる。ZoomやMicrosoft Teams、FaceTimeなど、Webカメラを認識できるソフトであれば特に問題なく利用できる。

カメラの画角は約120度(35mmカメラ換算で焦点距離が約12mm相当)で、一般的なWebカメラと比べても広めだ。

  • MacBook Airの内蔵カメラ(左)と比べると、OBSBOT Tiny 4K(右)は同じ距離でもより広い範囲が写せている

本機の目玉機能である被写体の自動追尾は、顔を認識してジンバルを動かして追尾してくれる。マスクをしていても追尾してくれるのはこのご時世にうれしい点だ。通常、こうした処理は接続したパソコン側でやりそうなものだが、OBSBOTの場合、カメラ本体にAIが内蔵されており、パソコン側は一切追尾処理に関わっていない。

追尾機能はかなり優秀で、多少左右に移動する程度であれば難なくついてくる。さらにジェスチャーによる操作が可能で、撮影中に手のひらをカメラに向けると追尾をオン・オフできる。ジェスチャー機能は追尾のオン・オフのほか、ズーム(デジタルズーム)にも対応している。ズームしたい被写体が顔の横で親指と人差し指を出すとズームイン/ズームアウト動作となる。標準では2倍ズームになるが、別途パソコン用のソフト「OBSBOT TinyCam」によって最大4倍まで設定可能だ。このソフトは各種設定の変更に加え、パソコン側からのリモート操作もできるので、操作役がいる場合にはかなり柔軟な撮影ができる。

  • ジェスチャーの認識中はカメラ前面のLEDが青く点滅する

  • 「OBSBOT TinyCam」でズーム倍率やHDRの有無など細かな設定を行える

実際にOBSBOT Tiny 4kを使ってジェスチャーや追尾時の反応を撮影した動画を掲載するので、その動作を確認していただきたい(フルHDで収録)。

動画は最大で4K(3840x2160ドット)まで対応しているが、実際に4Kで撮影する機会はまだほとんどないだろう。とはいえ性能的には余裕があるので、長く使い続けられそうだ。画質的にも十分及第点と言っていいだろう。

自動追尾機能がついたWebカメラは、ビジネス用などで以前から存在はしているが、カメラ本体がかなり大きい、価格が高い、追尾が遅いなどの不満点も多かった。その点OBSBOT Tiny 4Kは本体がかなりコンパクトで価格も比較的抑えられており、追尾速度も実用的であるなど、かなり優れている。本機の目玉機能である追尾機能やジェスチャー機能を活かすことを考えると、一般的なビデオ会議よりも、講義や発表会といった、やや広い場所での撮影・配信のほうが向いているだろう。こうした用途を考えているのであれば、購入候補の上位に入れることをお勧めしたい。また、単純にガジェット的な面白さとしても優れているので、一味違ったWebカメラを探している方にもお勧めだ。