「日曜日の夜になると、明日の仕事や勉強のことを考えて憂鬱になる」というのは、ほとんどすべての人に経験があることでしょう。その理由となると、単純に「会社や学校に行きたくないから」なのかもしれませんが、心理カウンセラーの中島輝さんは「理由はそれだけではない」と語ります。

  • 憂鬱な日曜日の夜…。「仕事に行きたくない」というネガティブ感情の手放し方 /心理カウンセラー・中島輝

日曜日の夜に憂鬱な気分になることには、心理学的に明確な理由があるのだそう。その理由と併せて、そんな憂鬱な気分を手放すための方法を詳しく解説してもらいました。

■日曜日の夜に憂鬱になるのは、人間としてごく自然なこと

——いわゆる「サザエさん症候群」という言葉も存在しますが、なぜ日曜日の夜になると憂鬱な気分になるのでしょうか。
中島 これには「サーカディアンリズム」と呼ばれる人間の体内リズムが大きく関係しています。平日に働いている人であれば、金曜日の夜から日曜日にかけてゆっくり過ごすなかで、サーカディアンリズムによって自律神経のうちリラックスしているときに働く副交感神経が優位になっていきます。

ところが、日曜日の夜になると「明日はあの仕事を進めないといけない」といったことも考え出します。つまり、自律神経のうちアクティブになっているときに働く交感神経が優位になっている場面を想像するわけです。

すると体は、「ゆっくりリラックスしよう」という状態になっているにもかかわらず、なかなかそうすることができなくなる。そのために、体と心の状態がミスマッチを起こして憂鬱な気分になってしまうのだと考えられます。

——体内リズムが関係しているとなると、日曜日の夜に憂鬱になるのはごく自然なことということでしょうか。
中島 まさにそのとおりで、このことは人間にとって自然なこと。とはいえ、必要以上に「明日はこうせねば…」といった義務感を覚えたり、あるいは「まだ手をつけていないあの仕事はどうしよう…」といった不安を感じたりし過ぎないように務めることが大切です。

■コンビニに行けば日曜日の夜の憂鬱な気分が消える?

——では、義務感や不安を覚え過ぎないようにするためにも、日曜日の夜の憂鬱な気分への対処法を教えてください。
中島 ひとつは、憂鬱な気分、つまりネガティブ感情を増幅させないために、日曜日の夕方以降はネガティブ感情を促すような情報やSNSの投稿といったものを見ないようにするということ。なるべくポポジティブ思考になるような情報を意識的に取り入れるだけでも、週末の憂鬱な気分は和らいでいきます。

そういう意味では、自分がわくわくできる「来週の予定」をたくさん立てるのもおすすめです。ネガティブに傾きがちな思考の方向が変わり、自然と心がもとのニュートラルな状態に戻っていくはずです。また、手っ取り早くできる方法となると、明るいコンビニに行くこともひとつの手です。

——コンビニに行く? それはどういうことでしょう?
中島 コンビニに限ったことではないのですが、暗くて憂鬱な気分になっているところから明るいところへ意識的に移動するということです。気分が落ち込んでいるときにその場にとどまっていると視界に入るものなどがなにも変わらないために、気分もなかなか変わりません。コンビニに行くなどしてあえて視界を変えることで、ある意味で強制的に気分も変えてしまおうというわけです。

あるいは、日曜日の夜という時間帯ではありますが、掃除や片づけをするというのもいいですね。掃除や片づけをするときには、ふだんは見過ごしているような汚れやほこり、散らかっているものに目を向けることになります。これもあえて、視界を変えることで気分も変えるという手法です。

■ネガティブ感情を採点して「見える化」する

——「なんとなく憂鬱」ではなく、なんらかの明確な理由があって憂鬱になっているような場合の対処法というものはありますか?
中島 たとえば、会いたくない人がいて「本当に嫌だ」と感じているようなことがあるのなら、その感情にしっかりと向き合う必要があります。そんなときには、「エモーショナル・スケーリング」というメソッドを使ってみてください。具体的には、次のような手順で行います。

【エモーショナル・スケーリング】
1.これまでの人生で経験した不安や怖れといった「最悪のネガティブ感情」を思い出して、これを10点満点中の10点とする。
2.いま感じている不安や恐れといったネガティブ感情について「10点満点中の何点か」を採点する

中島 これは、自分がいま「本当に嫌だ」と感じている気持ちを数値によって見える化して客観視する方法です。

——これまでの「最悪のネガティブ感情」を10点とすれば、どんなに憂鬱であってもなかなか10点にはなりそうにありません。
中島 そうでしょうね。「本当に嫌だ」と思っていたことでも、いざ採点してみると「あの最悪のときのことを考えれば、せいぜい5点くらいのものだ」と思えるということも多いものです。

ただ、このメソッドの大きなメリットは、たとえば8点や9点という高い点数になっても有効だという点にあります。そのメリットをもたらすポイントは「見える化」です。なぜなら、人は見えないものに不安や怖れを強く感じるからです。

たとえば、新型コロナウイルスだって、目に見えないからこそわたしたちは「自分もいつ感染するかわからない…」と強い不安や恐れを感じてしまっています。でも、新型コロナウイルスが目に見えるものだったら、もっと明確な対処法を見出すことができますし、いまほど強い不安や怖れを感じることもないはずです。

それと同じように、たとえいまのネガティブ感情が8点や9点であっても、ネガティブ感情の見える化が、「見えない」という不安感の代わりに「見えた」という安心感を与えてくれますから、それだけでも憂鬱な気分は大きく軽減します。

いずれにせよ、「感情」をつくるのは自分自身です。週末の憂鬱な気分を変えられる手段を身につけ、感情に操られるのではなく、感情を自分で操れるようになってほしいと思います。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/川しまゆうこ