JR東日本横浜支社は3月31日まで、南武線の支線である尻手駅から浜川崎駅の周辺を題材に、クイズを出題するウォークイベント「尻手駅検定」を開催している。尻手駅社員や地域の関係者らが考案した30問の問題に挑戦し、正解数に応じた認定証やオリジナルグッズをプレゼント。移動に伴う交通費は参加者の自己負担となるが、「尻手駅検定」自体は無料で、誰でも参加できる。
今回、スタート地点の尻手駅から沿線を巡り、30問の問題に挑戦した。横浜市在住の筆者にとって、南武線は比較的身近な路線といえるが、意外に乗車する機会が少なく、クイズに挑戦することで沿線を知る良い機会となった。なお、クイズの「ネタバレ」は極力控えるので、実際の問題は自ら挑戦して確かめてほしい。
■尻手駅の窓口で問題用紙を受け取り、「尻手駅検定」挑戦開始
「尻手駅検定」を始めるにあたり、最初に尻手駅の改札窓口で問題用紙を受け取る必要がある。問題用紙は4ページあり、1・2ページ目に進め方・注意事項・参考地図、3・4ページ目に問題が掲載されている。すべて選択式の解答方法で、解答欄は4ページ目下部にある。ここに、最初の10問は「○」か「×」、11問目以降は選択肢の数字を記入し、解答していく。
問題を解く中で、答えを導き出せる場所として、横浜市矢向地区センター図書コーナー、尻手銀座商店街、川崎市地方卸売市場南部市場・水産仲卸売場棟、松尾芭蕉の句碑、日枝大神社、浜川崎駅(南武線)が指定されており、これらを訪ねることで一部問題の正解に結びつく。ただし、青色の文字で記載された一部問題は問題用紙に掲載されておらず、指定された施設のうち3カ所に掲出されているため、すべての問題に解答するには最低3カ所の施設を訪れなければならない。
■尻手駅周辺の商店街と市場を訪ね、矢向地区センターにも立ち寄る
最初に筆者は、尻手駅の西側に位置する尻手銀座商店街を訪れた。バスが通る大通りから外れた細い路地に、洋品店、青果市場、薬局など、さまざまな商店が軒を連ねている。ここを訪れることで正解を引き出せる問題があるので、街並みをよく観察し、問題文と自身の目で見たものをよく確認して解答しよう。ちなみに、尻手銀座商店街の近くにも日枝神社が存在するが、この神社は「尻手駅検定」とは関係ない。「尻手駅検定」で指定されている日枝大神社へは、川崎新町駅が最寄りとなる。
続いて尻手駅の東側に位置する川崎市地方卸売市場南部市場を訪ねた。水産・青果・花きの卸売りが行われており、一般利用者は通常、水産仲卸売場棟、関連商品売場棟、食堂にのみ立ち入ることができる。月に1度、一般利用者向けのイベントも行われており、その際は一般利用者も青果・花きを購入できる。詳細は川崎市地方卸売市場南部市場公式サイトで確認してほしい。
ここで解ける問題に関しても、尻手銀座商店街と同じように、市場の中で見られるもの、自然と目に入るものが大きなヒントとなる。ぜひ幅広く探してみてほしい。日曜・祝日は休市となるので、その場合は市場の西門を確認すると良いとのこと。
尻手駅周辺の2カ所で問題を解いたら、浜川崎方面へ向かう前に、南武線の矢向駅にも立ち寄っておく。駅の南側に位置する、横浜市矢向地区センターの図書コーナーにもヒントが隠されているからだ。そのヒントは図書コーナー前に置かれた資料に掲載されており、該当するページを読めば正解を引き出すことができる。
ちなみに、地区センターの職員に話を聞いたところ、筆者が訪問した時点で、週末を中心に20~30名ほど「尻手駅検定」挑戦者が訪れているとのことだった。筆者が資料を読んでいる間にも、「尻手駅検定」参加者を見かけた。探索中も、1人で挑戦している人がいる一方で、2人組も多く、参加者層の幅広さがうかがえた。
■南武線(浜川崎支線)に乗車、浜川崎駅では難問も
ここから先は南武線(浜川崎支線)に乗車し、浜川崎方面へ。まずは八丁畷駅で下車した。京急線との乗換駅だが、改札がJR・京急の共用であるため、南武線ホームにICカード用の簡易改札機が設置されている。南武線を利用するためにICカードで八丁畷駅に入場・出場する場合、必ず南武線ホームの簡易改札機にもカードをタッチしなければならない。きっぷでの入場・出場時は通常通り、改札機にきっぷを通す。
八丁畷駅の改札を出て、踏切を渡らずに進むと、理髪店の横に松尾芭蕉の句碑があり、答えを導き出せる場所のひとつに指定されている。横にある看板には、松尾芭蕉が伊賀へ帰郷する際、川崎宿に立ち寄り、門弟たちとの別れを惜しんで「麦の穂を たよりにつかむ 別れかな」という句を残したことが解説されている。ここに関係した問題においても、句碑とその周囲にあるものをよく確認すれば、自然と答えにつながるだろう。
次は川崎新町駅で下車し、日枝大神社を訪問。公式サイトによれば、日枝大神社は比叡山の地主神・大山咋命(おおやまくいのみこと)を御祭神とし、西暦948(天暦2)年に日吉大社より分霊を勧請したという。1,000年以上の歴史を持つ古い神社である一方、サンリオキャラクターの御守り発祥の地でもあるようだ。
日枝大神社がヒントとなっている問題も、神社の中で見られるものの中にヒントが隠れており、難しい内容ではない。この場所で見られるもの、自然と目に入るものをよく観察し、正解を導き出してほしい。ちなみに、日枝大神社への最寄り駅は川崎新町駅とされているが、隣の小田栄駅から歩いて行くことも可能だ。
日枝大神社から南武線(浜川崎支線)の沿線を歩き、最後に浜川崎駅を訪れた。南武線側の券売機横に、南武線の歴史にまつわる問題を掲出しているが、ヒントを出している他の場所とは異なり、駅や周辺を見渡すだけでは正解を引き出すことが難しく、個人的に今回の最難問ではないかと感じた。その場で答えることが難しいと感じたら、問題文と選択肢をメモしておき、後で資料にあたってみるのも手だろう。
ちなみに、筆者が浜川崎駅を訪れたとき、同じタイミングで問題を解きに来た親子がいたが、その親子は問題文と選択肢をメモし、後でゆっくり考えようとしている様子だった。別の日に浜川崎駅を訪れた際も「尻手駅検定」参加者を見かけ、問題を読みながらスマートフォンでヒントを探っている様子だった。
■尻手駅改札窓口で認定証と記念品を受け取る
すべての問題に解答できたら、尻手駅に戻り、改札窓口で駅係員に採点してもらう。正解数に応じて、「尻手駅検定」認定証(3~1級)とオリジナルのステッカー(2・1級)、手ぬぐい(1級)が1人1回プレゼントされる。ステッカーと手ぬぐいはなくなり次第終了とのこと。筆者は30問中29問に正解し、「尻手駅検定」1級を獲得できた。うっかり忘れていたことがあったため1問間違えてしまったが、それでもヒントの出される全6カ所をまわったことで、正解を多数引き出せたので、十分に満足している。
採点と記念品のプレゼントは各日10~17時。認定証は名前の印字もできるが、その場合は少し待ち時間が発生する。期間中であれば解答時間の制限はないので、間に合わなかった場合は翌日以降に尻手駅を再訪したほうが良いと思われる。各問題の公式解答・解説は、4月1~30日に尻手駅の改札周辺に掲出される。
ところで、全30問の解答にかかる時間だが、筆者の場合は問題の答えやヒント、指定施設で見たものや気づいたことなどメモ書きしながら進めたため、全問解き終わるまでに2日かかった。早いペースで進められる人なら、開始時間にもよるが1日ですべての施設を見て回れるかもしれない。
通常の試験問題であれば、試験中に外出したり、資料を開いたりすることは禁止されると思うが、「尻手駅検定」はウォークイベントであるため、むしろ積極的に沿線を歩き、自ら答えを探すことに大きな意義がある。これから「尻手駅検定」に挑む場合はぜひ、「その場所で見られるもの」「自然と目に入るもの」を幅広く、ときに注意深く観察してみてほしい。普段の移動であればあっさり通り過ぎてしまいそうなところにも、大きなヒントが隠れているはず。新型コロナウイルス感染症対策を各自行った上で楽しんでほしい。