退職届や履歴書などによく使われる「一身上の都合」という表現。「退職理由として実際に使うのはダメなのでは?」と不安になる方も少なくないでしょう。
今回は、「一身上の都合」の意味や退職理由として使う上でのポイント・例文をくわしく解説。また、「一身上の都合」を深堀りされたときの答え方なども紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「一身上の都合」の意味とは?
「一身上の都合」とは、会社とは関係のない個人的な事情を意味する言葉です。退職届を出す際などに頻繁に使用されており、結婚や出産、転職や留学などの自己都合で退職したい場合に用いられる表現です。
「一身上の都合」を退職理由として使うのはダメ?
結論、「一身上の都合」を退職理由として使うのは問題ありません。「退職理由の詳細をいいたくない」「波風立てずに円満退職したい」という場合は、退職理由を「一身上の都合により」とまとめてしまってもOKです。労働法上でも、労働者に会社へ退職理由を申告するという義務はありません。
退職理由に「一身上の都合」を使う上でのポイント
退職理由として個人的な事情で退職する際に使用できる「一身上の都合」という表現ですが、注意すべきポイントもあります。
ここからは、退職理由に「一身上の都合」を使う上での注意点について解説していきます。
会社都合での退職時には不適切
退職理由として使用していい「一身上の都合」ですが、どんな場面でも使用できるわけではありません。
結婚や転職など自己都合の退職の際に使うのは問題ありませんが、リストラや早期退職制度への応募などの会社都合による退職の場合、退職理由を「一身上の都合」と表現するのは不適切です。これは、自己都合による退職と会社都合による退職では失業手当に関する条件が変わってしまうためです。
例えば、倒産や解雇などにより退職を余儀なくされた場合は、自己都合での退職者に比べて失業手当を早くから長期にわたって受給できます。自己都合で退職したと判断されると、本来もらえるはずの失業手当が少なくなってしまいます。
制度を正しく活用するためにも、リストラなどによる解雇では「会社都合による退職」と記載する必要があることを覚えておきましょう。
「一身上の都合」は履歴書にも記載できる
「一身上の都合」という表現は、退職届だけでなく履歴書に記載することも可能です。自己都合で退職した場合は退職理由の書き方に悩んでしまいがちですが、基本的には「一身上の都合により退職」と記載して問題ありません。
ただし、転職回数が多かったり職歴にブランクがあったりする場合は、詳細を伝えた方がいいでしょう。
「一身上の都合」の書き方と伝え方
自己都合の退職の際に使いやすい「一身上の都合」ですが、退職届や履歴書への具体的な書き方がわからない人もいるでしょう。そこでここからは、ケース別の「一身上の都合」の書き方を例文とともに解説します。
「一身上の都合」を退職届に記載する場合の例文
退職理由が「人間関係が悪かった」「仕事内容が合わない」といったネガティブな理由な場合、会社には伝えづらく、表現に悩んでしまいますよね。そのようなときは「一身上の都合」を使い、以下のように退職届に記載して問題ありません。
【例文】
このたび一身上の都合により、誠に勝手ながら、令和〇年〇月〇日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
「一身上の都合」を履歴書に記載する場合の例文
履歴書には、退職年月日や会社名とともに「一身上の都合により退職」という文言を記載します。
【例文】
〇年〇月 株式会社〇〇 一身上の都合により退職
ただし、面接などで詳細を聞かれる場合もありますので準備はしておきましょう。
「一身上の都合」を内定辞退時に使う場合の例文
「一身上の都合」は、就職活動や転職活動において内定の辞退をする際にも使える表現です。「一身上の都合で」という表現を添えれば、辞退における詳細な理由は伝えなくても問題はありません。
下記のように内定のお礼を伝えた上で、辞退する旨を伝えましょう。
【例文】
先日は内定のご連絡をいただき誠にありがとうございました。大変申し上げにくいのですが、一身上の都合により内定を辞退させていただきたくご連絡いたしました。
「一身上の都合」を深堀りされたときの答え方は?
退職理由の詳細を語りたくないときに使いやすい「一身上の都合」ですが、会社としては従業員の退職理由は気になるポイントなので、深堀りされることもあります。
また、転職活動の面接においては、前職の退職理由をくわしく聞かれる可能性が高いです。そのため、「一身上の都合」ということで退職するにしても、内容は伝えられるよう準備しておくのがよいでしょう。
ここからは、「一身上の都合」の詳細を口頭で説明しなければいけない場合の伝え方について解説します。
家庭の事情だと伝える
例えば、結婚や配偶者の転勤による引っ越し、家業を継ぐことなどが家庭の事情にあたります。家庭の事情は人それぞれなので、退職の理由として詳細を伝えても納得してもらえることが多いでしょう。
よって、家庭の事情を理由に退職する場合は、そのまま伝えても問題ありません。
スキルアップしたいということを伝える
「将来を見据えて転職したい」や「新しい分野の仕事に挑戦したい」などは、ポジティブな退職理由なので伝えても問題ありません。転職活動の面接においては、前職の退職理由はネガティブな印象にならないことが大切です。
在職中の職場に退職理由を伝える際も、スキルアップしたいということが理由であれば、周囲に不快感を与えることはないでしょう。
職場環境や仕事が合わなかったことを伝える
転職活動の面接において、前職の職場環境や仕事が合わなかったことを正直に伝えるのも一つの手です。その場合はネガティブな内容や愚痴にならないように注意する必要があり、後ろ向きな退職理由を前向きな表現に言い換えることが望まれます。
例えば、労働時間が不規則なことが理由で退職した場合は、「生活リズムを安定させて働きたいと考えた」などと言い換えるようにしましょう。
なお、在職中の職場で退職理由を聞かれた場合は、職場環境や仕事が自分に合わなかったことを不平・不満として伝えるとトラブルが生じる可能性もあります。円満退社を目指すのであれば、言い方や内容には十分注意して退職理由を述べるようにしましょう。
意味やポイントを理解して「一身上の都合」を使おう
「一身上の都合」は、会社とは関係のない個人的な事情を意味する言葉で、労働者が詳細を語らずに退職を伝えたいケースなどに使われる表現です。「本当の理由をいいたくない」「会社を責めず円満退職したい」という場合は、状況に応じて使って問題ありません。
ただし、転職活動の面接などにおいては「一身上の都合」の詳細を聞かれることもあるので、準備しておいたほうが安心です。
「一身上の都合」の意味や使用上のポイントなどを理解し、適切に使えるようにしましょう。