角換わりからの激しい攻め合いに

第80期順位戦B級1組(主催:朝日新聞社、毎日新聞社)の最終13回戦が3月9日に、東京・大阪の将棋会館で一斉に行われています。本日の組み合わせは下記のとおりです。

▲佐々木勇気七段(7勝4敗・12位)-△藤井 聡太竜王(9勝2敗・11位)

▲稲葉  陽八段(8勝3敗・1位)-△郷田 真隆九段(6勝5敗・4位)

▲千田 翔太七段(8勝3敗・7位)-△木村 一基九段(3勝8敗・3位)

▲三浦 弘行九段(6勝5敗・2位)-△松尾  歩八段(2勝9敗・9位)

▲近藤 誠也七段(5勝6敗・5位)-△屋敷 伸之九段(6勝5敗・8位)

▲阿久津主税八段(3勝8敗・10位)-△久保 利明九段(3勝8敗・6位)

抜け番:横山泰明七段(6勝6敗・13位)

■3人に絞られた昇級争い

順位戦B級1組は、上位2名がA級に昇級し、下位3名がB級2組に降級します。自力昇級の権利を持っているのは藤井竜王と稲葉八段、両者のいずれかが敗れた場合、3番手の千田七段にチャンスが巡ってきます。藤井竜王は自身が負けても稲葉八段または千田七段が敗れれば昇級となります。昇級争いはこの3人に絞られました。

■スピード感満点の桂跳ねで開戦

藤井竜王は佐々木七段との対戦です。角換わりを志向した先手番の佐々木七段は、序盤早々に▲3五歩と突き捨てて開戦のゴングを鳴らします。まだ午前10時40分。この手を見た藤井竜王は昼食休憩を挟み1時間半を超す長考に沈み、△同歩と応対します。それを見て佐々木七段はすぐに▲4五桂と跳ね出し、佐々木七段が本局のために温めた速攻策が明らかになりました。

序盤早々に桂を前線まで繰り出すのは、古来より「桂の高跳び歩のエジキ」と言われ、悪手の見本とされていました。が、その認識が覆された象徴とも言える将棋があります。藤井竜王のデビュー直後、アベマTVの特別企画として放映された「藤井聡太・炎の七番勝負」の藤井四段-羽生善治三冠(当時)戦です。学生服姿の藤井四段が、速攻の▲4五桂から第一人者の羽生三冠を攻め倒した将棋は衝撃的でした。

この将棋とは形こそ違え、藤井竜王の登場とともにスピード感を増した将棋戦法のひとつの象徴的な着手が▲4五桂であると感じられます。

■大一番は終盤の難所に突入

入念に準備してきたであろう佐々木七段はその後も快調に攻め続けます。跳ねた桂を犠牲にして端攻めから馬を作り、藤井陣に攻め入ります。対する藤井竜王もしっかりと反撃の形を作り、お互いに一歩も譲らないキビキビとした熱戦になりました。20:00時点で局面は難解。終局は本日深夜または翌日未明になる見込みです。

大石祐輝(将棋情報局)

対局開始前に一礼する藤井竜王(左)と佐々木七段(提供:日本将棋連盟)
対局開始前に一礼する藤井竜王(左)と佐々木七段(提供:日本将棋連盟)