米労働省が2022年3月4日に発表した2月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数67.8万人増、(2)失業率3.8%、(3)平均時給31.58ドル(前月比0.0%、前年比+5.1%)という内容であった。
(1)2月の米非農業部門雇用者数は前月比67.8万人増と市場予想(42.3万人増)を上回った。前月分が48.1万人増、前々月分が58.8万人増にそれぞれ上方修正された結果、雇用情勢を基調的に見る上で重視される3カ月平均の増加幅は58.2万人となり、小幅ながらも前月の57.2万人から加速した。業種別では、レジャー・接客のほか、外食、宿泊など、コロナ禍で打撃を受けたサービス業を中心に雇用者が増加した。
(2)2月の米失業率は前月から0.2ポイント改善して3.8%となり、2020年2月以来の水準に低下した。市場予想は3.9%だった。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率が62.3%へと上昇したにもかかわらず失業率は改善した。ただ、フルタイムの職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は7.2%と、前月から0.1ポイント悪化した。
(3)2月の米平均時給は31.58ドルとなり、伸び率は前月比0.0%、前年比+5.1%で、いずれも市場予想(+0.5%、+5.8%)を下回った。比較的賃金の水準が低いサービス業で雇用者が増えたためと見られる。なお、週平均労働時間は34.7時間と前月の34.6時間から増加した。
米2月雇用統計は、新型コロナ変異株・オミクロンの感染拡大が下火となる中で、米国の経済活動が正常化に向かっている事を改めて示す内容であった。賃金の伸び鈍化も、3月15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げについて、50bp(0.50ポイント)ではなく25bp(0.25ポイント)を支持するとしたパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の見解を正当化する内容だったと言えるだろう。
もっとも、市場はすでに3月の25bp利上げを織り込んでいた他、緊迫化するウクライナ情勢に関心が集中していたため、雇用統計に対するドル/円相場の反応はきわめて小さかった。雇用統計の発表後は、ウクライナの原発をロシアが砲撃・占拠した事への懸念からユーロ売りが活発化。ドルと円がいずれもユーロに対して上昇した事から当初は大きく動かなかったドル/円相場は、安全資産の米国債に買いが集まり利回りが低下すると115円台を割り込んで下落した。