未成年の子どもを育てている世帯は、今度かかる教育費を考えたうえで住宅ローンの繰り上げ返済を慎重に検討することが大切です。よく検討しないまま繰り上げ返済をしてしまうと、子どもの進学資金が不足し新たな借り入れが必要になる恐れがあります。

今回は、子育て世帯が繰り上げ返済を検討するときに知っておきたいポイントについてわかりやすく解説します。

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子育て世帯は繰り上げ返済で教育資金が不足しないか考える

子どもの教育資金は、進学ルートによって1,000万円ほどで済むこともあれば、2,000万円以上かかることもあるといわれています。教育資金をローンで賄うこともできますが、住宅ローンよりも金利が高い傾向にあります。

住宅ローンを繰り上げ返済するのであれば、教育資金をローンで借り入れなくても良いように、進学資金が不足しないか考えることが大切です。

子どもの教育資金は高額になる可能性がある

文部科学省の調査によると、幼稚園から高校までにかかる教育費(授業料・入学金・給食費など)の平均は、すべて公立であったとしても500万円以上かかるとされています。幼稚園から高校まですべて私立に通ったときの教育費は、1,800万円以上です(出典:文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」)。以下の表は、幼稚園から高校まで、1年あたりにかかる学習費をまとめたものです。

  • 幼稚園から高校までにかかる教育費(文部科学省「平成30年度子供の学習費調査より引用)」

また日本政策金融公庫の調査では、国立大学に進学したときにかかる入学金や在学中の授業料などは平均481.2万円となっています。私立大学の平均は、文系689.8万円、理系821.6万円です(参考:日本政策金融公庫「教育費に関する調査結果(2021年12月20日発表)」)。

仮に幼稚園から高校まで公立に通ったあと国公立の大学に進学したとしても、単純計算で1,000万円近くの教育費がかかります。幼稚園からすべて私立に通ったときの教育費は、2,000万円を超える可能性があります。

もし子どもを大学へ進学させたいと考えているのであれば、中学校や高校などに通わせながら、計画的に進学資金を準備しなければなりません。進学塾や私立の中高に通わせると、教育費の支払いが膨らみ、大学への進学資金は貯まりにくくなるでしょう。

教育ローンの金利は住宅ローンよりも高い

自己資金で子どもの進学費を賄えないのであれば、教育ローンを借りるのも選択肢です。しかし住宅ローンを繰り上げ返済したことで、教育ローンの借り入れが必要になる事態だけは避けたいものです。

2022年3月現在、住宅ローンの変動金利は、大半の金融機関が1%未満です。0.3%台や0.4%台で借り入れられる金融機関も少なくありません。

一方で教育ローンの変動金利は、低くても1%前後であり、中には3%台や4%台のものもあります。よって住宅ローンを繰り上げ返済しても、教育ローンの借り入れが必要になってはかえって損をしてしまう可能性が高いのです。

教育ローンではなく、奨学金を借りる方法もあります。奨学金は、教育ローンよりも金利が低い傾向にあり、場合によっては無利息で借りることも可能です。その一方で、独立したあとの子どもが返済義務を負うことになります。

以上の点から独立する前の子どもがいるのであれば、住宅ローンを繰り上げ返済しても将来の進学資金が確保できるのかを慎重に検討することが大切です。ファイナンシャルプランナーに相談し、今後の人生で起こりうるライフイベントやそのときの必要資金額、年間の収支をシミュレーションしてもらうのも有効でしょう。

変動金利を選んだ人は繰り上げ返済の資金を準備しよう

将来的に、多額の教育資金がかかると想定される方でも、繰り上げ返済の準備が不要とは限りません。特に、返済途中で金利が変わる可能性がある変動金利型の住宅ローンを組んだのであれば、金利上昇時に備えて繰り上げ返済の資金を準備しておくと安心です。

住宅ローンは、金利の値によって毎月の返済額やそれに占める利息の割合が決まる仕組みです。そのため住宅ローンの金利が上昇すると、毎月の返済額だけでなくそれに占める利息の割合も増え、元金が減りにくくなります。

※住宅ローンの金利は半年に1度、毎月の返済額は5年に1度のタイミングで見直されるのが一般的です。

計画的に資金を準備していると、住宅ローンの金利が上昇したときに繰り上げ返済をして元金を減らすことで、返済負担の増加を抑えられる可能性があります。また繰り上げ返済資金の一部を、子どもの進学資金に充てるのも方法です。