「お金に強くなるマネーカウンセリング」をモットーに年間100人以上のクライアントのお金に関する悩みを解決しているマネープランナーズの裏門が、今回解決するのは社会人1年目22歳男性のご相談。「新入社員が65歳退職まで毎月5000円をiDeCoで運用すると、合計でいくら年金が増えるでしょうか?」という内容です。では、そのカウンセリング内容を見ていきましょう。
ご相談者の状況
相談者:石綿さん(仮名)
男性・22歳・会社員・年収350万円・社会人1年目
石綿さんの相談内容は以下です。
最近上司から退職金準備としてiDeCoをやったほうが良いと教えてもらいました。上司はiDeCoで毎月1万円を運用しているようですが、僕は5,000円で始めようと思っています。 「毎月5,000円を65歳までiDeCoで運用するといくら年金が増えるのでしょうか?」
FPからの回答
まずはiDeCoがどのような制度なのか知りましょう。
iDeCo(イデコ)は、自分が拠出した掛金を、自分で運用し、資産を形成する年金制度です。掛金を60歳になるまで拠出し、60歳以降に老齢給付金を受け取ることができます。
iDeCoには3つの税制優遇メリットがあります。
(1)掛金が全額所得控除される
(2)確定拠出年金制度内での運用益が非課税で再投資される
(3)受給時に所得控除を受けられる
ただしデメリットとして、60歳になるまで原則として資産を引き出すことはできないため、あくまでも退職後の老後資産として考えることが重要です。
また、iDeCoの運用には、「元本確保型」と「価格変動型」の2つがあります。「元本確保型」は安全性が高い反面、大きな収益は期待できません。一方の「価格変動型」は元本割れなどのリスクがある一方で、運用結果によっては収益が期待できます。
元本確保型の場合のシミュレーション
まずは、元本確保型で貯めていった場合で見ていきましょう。
元本確保型には、「定期預金」と「保険」の商品があります。
今回は金利0.1%の定期預金でシミュレーションしてみます。毎月5,000円の掛け金で60歳までの38年間積み立てると、以下のような運用結果になります。
積み立て元金:2,280,000円
運用益:492,319円
最終合計金額:2,772,319円
さらに、上記に加えてiDeCoのメリットである税額控除を踏まえると
38年間の節税額:456,000円(※平均年収の500万円で試算)
となります。
価格変動型の場合のシミュレーション
価格変動型の場合、「投資信託」という形で株式・債券への投資を行い運用します。
投資信託は投資先によって様々なタイプがありますが、今回は主要な4つの投資信託を見ていきましょう。
国内債券型:国内の債券を中心に投資する商品
国内株式型:国内の株式を中心に投資する商品
外国債券型:海外の債券を中心に投資する商品
外国株式型:海外の株式を中心に投資する商品
どのタイプの投資信託を選ぶかで、リスク・リターンが異なります。
さらに投資信託を複数組み入れることで、リスク・リターンも変化します。それぞれの特徴をよく理解した上で、自分にあった投資先を選びましょう。
ここからは安全性・収益性の2パターンのシミュレーションを見てみましょう。
▼安全性中心のポートフォリオで貯めていった場合
まずは安全性メインの運用を目標にして、国内債券や国外債券を組み入れた場合です。運用利率は3%で想定します。
積み立て元金:2,280,000円
運用益:1,964,647円
最終合計金額:4,244,647円
38年間の節税額:456,000円(平均年収の500万円で試算)
という結果でした。
元本確保型と比べて、運用益は+1,472,328円でした。
▼収益性中心のポートフォリオで貯めていった場合
次は収益性の運用がメインで、国内株式や外国株式を中心に組み入れた場合です。運用利率は5%で想定します。
積み立て元金:2,280,000円
運用益:4,511,466円
最終合計金額:6,791,466円
38年間の節税額:456,000円(平均年収の500万円で試算)
という結果でした。
元本確保型と比べて、運用益は+4,019,147円で、安全性資産と比べても、運用益は+2,546,819円でした。
ただし、収益性を狙うと元本割れリスクも高まるため注意しましょう。
▼安全性と収益性の両方で貯めていった場合
最後に、安全性と収益性を半分ずつ入れたパターンです。
国内・外の債権を25%ずつ、国内・外の株式を25%ずつ組み入れた場合です。運用利率は4%で想定します。
積み立て元金:2,280,000円
運用益:3,061,024円
最終合計金額:5,341,024円
38年間の節税額:456,000円(平均年収の500万円で試算)
という結果でした。
元本確保型と比べて、運用益は+2,568,705円で、安全性資産と比べても、運用益は+1,096,377円でした。
まとめ
iDeCoの運用商品を選ぶ際には、目標とするリターンに合った投資対象を選ぶだけでなく、iDeCo以外の保有資産も含めた全体のバランスを考慮することも重要です。また、税制優遇の面でもメリットがありますが、60歳まで引き出せないなどデメリットもあるので、自分に合った掛け金やタイミングで始めると良いでしょう。
この記事を執筆したファイナンシャルプランナー
裏門春菜(うらもんはるな)
所属:株式会社マネープランナーズ
2級ファイナンシャルプランニング技能士