日本テレビ系ドキュメンタリー番組『NNNドキュメント’22』(毎週日曜24:55~)では、東日本大震災の被災3県の地元テレビ局が取材・検証する『東日本大震災11年 それぞれの交“差”点~被災地の本音~』を、6日に放送する。
■テレビ岩手「人情寿司店の親子に立ちはだかる“差”」
岩手県の沿岸南部「奇跡の一本松」で知られる陸前高田市。市は「次の津波に備えて安全な町を作りたい」と、中心部を平均10メートルかさ上げして、高台に住宅地、中心部に商業用地を…といった「職住分離」の町づくりに着手した。津波の被害で店を失った「味と人情の鶴亀鮨」。営むのは「大将」こと阿部和明さん(67)と長男の「真ちゃん」こと真一郎さん(40)。親子は震災前からの借金に加えて融資を受け、何とか2018年に店の再建に漕ぎつけた。
しかし、今は…陸前高田を訪れる観光客は「奇跡の一本松」を見た後、そそくさと次の場所へ(12月18日には青森県八戸市から宮城県仙台市まで自動車専用道路・三陸沿岸道路が全線開通)。中心部に人の姿はない。かさ上げに長い時間を要し、人口の流出も顕著だ。震災前に思い描いていた故郷の姿との落差。差、差、差…。親子は自分たちに言い聞かせる「1日でも長くのれんを出し続ける」ことが成功なのだと。「味と人情の鶴亀鮨」の人気の1品は「つらい時は泣いていいんだよ」とワサビてんこ盛りの「涙巻き」だ。
■宮城テレビ「活気ある水産業の町が…変わってしまった」
宮城県石巻市雄勝地区。かつては水産業や硯石の産地として栄え、人口1万人を超えていたが、現在地区に留まるのは1000人余りと激減。津波で中心部の住宅地、商店街はすべて流され、かつての町の中心部には「約10メートルの防潮堤」がそびえ立ち、今ではもう海を見ることはできない。水産業の町・雄勝では防潮堤の建設を受け入れられない住民と、安全な高台の町づくりを目指す自治体との歩み寄りがなかなか進まず、結果として、防潮堤の建設は大幅に遅れたうえに、多くの住民は地区を離れて他の場所に住宅を再建した。
「風景の差」…防潮堤で風景が一変。「選択の差」…今も地区に残る住民と地区を出た住民の思い。「町づくりの差」…防潮堤を前提とした町づくりの雄勝と防潮堤に頼らない町づくりを行った女川町。そうした中、今も変わらないのは「防災意識の高さ」。雄勝小学校、雄勝中学校はいずれも津波にのまれたが、子どもたちは避難して無事だった。埋められなかった復興の「差」と、住民の変わらない故郷への思いをたどる。
■福島中央テレビ「やわらかいエゴ ~復興と人生の狭間で~」
福島県富岡町の美容院「Mist」。オーナーの佐藤幹子さんは月に1週間だけハサミを握る。「最愛の娘を失った母親」「家を解体した人」「美容院の隣に移住した家族」など…利用客の境遇はさまざま。でも、そこは料理の話や恋バナまで飛び交うあったかい空間だ。取材を始めてから3年、幹子さんは美容師として避難先の神奈川で修業する娘の二菜さんが後を継いでくれたら…と口にするようになった。震災や原発事故さえなければ、何の問題もないはずだったが、長らく居住人口は「0」の状態。お世辞にも生活に便利とはいえない。幹子さんは「娘にここに住んでほしいって“親のエゴ”だよね」と悩んでいた。
その思いを吐露した客の男性も農業の後継ぎがいない。故郷を復興させたいとする世代、そして、避難先で人生を設計する若い世代。「若者たちに復興を託すことはエゴなのか?」「故郷を捨てていいのか?」「故郷って何?」「私の人生って…?」――この10年で生まれた数多くの「差」をハートフルな美容院を通して考える。