みなさんの中にもギターシンセに興味がある人は多いと思う。弾いてみたいと思っても、自分の思い通りのサウンドが作れるのか? 設定は面倒じゃないのか? コストが……等々の理由でいまひとつ購入に踏み切れなかった方もいたはずだ。そこで今回はそんなギタリストの悩みを最強コスパで解決してくれるナイスなエフェクターを紹介したい。ちゃんとサウンドもお届けするので参考にしていただければ幸いだ。それではいってみよう!
ハードルが高い? と思われがちなギターシンセ界に朗報
いままでの自分のサウンドだけじゃ物足りない! 何か新しい音を手に入れたい! いやはや、ギタリストの欲望には限りがない。新しい世界を拓くという意味ではギターシンセという存在があって、みなさんも何度となくそのサウンドは聞いてきたと思う。ただし、プロミュージシャンが使うような本格的な機材は高価なものが多くてなかなか手が出ない。もっと買いやすくて音もバッチリなギターシンセはないの? というよくばりな人におすすめのエフェクターがMooerから発売されている「E7」だ。実売価格は13,000円前後。この小さなペダルにどんな可能性があるのか、実際に弾いて確かめてみたので紹介していこう。
E7はとってもコンパクトなエフェクターで手のひらに置いてさらには握ると隠れてしまうほどのサイズの製品。給電方式も通常のセンターマイナス9Vなので、ボードを持っている人ならすぐにでもインストールできてしまう手軽さが魅力だ。
E7には7つの音源が入っており、それぞれは「SAVE」ボタンをタップすることで切り替えられる。ただし、ボタンは小さいので曲中に頻繁に音色を変えるといった使い方にはちょっと向いていない。ボタンを押すごとに順番にサウンドが切り替わっていくだけなので、演奏前にお気に入りのプリセットを決めておく必要はあるが、その辺はサイズ感的にも仕様と割り切っておきたい。
E7に入っているシンセプリセットとコントロール
ちなみにE7に入っているシンセトーンは以下の7つ(メーカーHPより抜粋で紹介)。
MODE1 トランペットライクなシンセトーン
MODE2 オルガンライクなシンセトーン
MODE3 海のさざ波のような暖かなシンセサイザートーン
MODE4 Weeyoのようなブライトなトーンで、スピーディなLFOエフェクト
MODE5 ノコギリ波のシンセサイザー、スローなLFOエフェクトをかけ、ブライトで遅いアルペジエーターを組み合わせたトーン
MODE6 8ビットライクなシンセサイザートーン
MODE7 EDM/PADライクなシンセサイザートーン
基本的にこの7つのトーンに味付けをして好みに近づけていけばよいので、シンプルに考えられるのも魅力だ。ギタリストは意外と面倒くさがりが多いので、十何種類もあるパラメーターをいじりながら悩むよりも、こっちのほうが向いているタイプもたくさんいるに違いない(私もその中の1人だ)。
その味付けだが、本体のコントロールノブでおこなう。ピッキングの強弱をコントロールする「ATTACK」、あとで解説するアルペジエーターのスピードをコントロールする「SPEED」、トーンを調整する「HIGH CUT」「LOW CUT」、原音とシンセオンのバランスを調整する「MIX」の5つのパラメーターがあって、これらによって各シンセトーンをカスタマイズできる。設定できたら「SAVE」ボタンを長押しするとパラメーターは記憶されるので次回からは一発でお気に入りの音色が出てくるという流れだ。
パラメーターによるサウンドメイクは、もとのシンセトーンが大きく変わるということはないが、サウンドのカラーに違いが出てくるという感じの方向性。個人的に作り込みの幅は広いように思うので、じっくりポイントを探っていくと面白い音が見つけられるはずだ。
ちなみに本体横にUSBポートが空いているので、最初に見たときには「お!PCでサウンドメイクできたりシンセトーンを入れ替えたりできるのか?」と期待したが、ファームウェアアップデート用とのことなのでご注意いただきたい。
面白いのは「アルペジエーター」の存在で、各シンセトーンにこれを追加することで驚きの効果を出すことができる。音階は単純だが、非常に目立つ効果なので “いかにも”な演出ができる。しかも、フットスイッチの長押しでオンオフができるので、これに関しては曲中でも切り替えできるのもうれしいところ。ちなみにアルペジエーターは「SPEED」ノブで速度を変えることで曲のテンポに合わせることもできる。曲調によってはこのペダルを主役にすることだって可能というわけだ。
コスパ最強!E7は使えるギターシンセだ!
実際にE7を使って弾いてみると、テーマを弾くにはこんな音、バッキングを厚くするにはこんな音、曲入りやラストに入れたい飛び道具にはコレ、といった具合に7つのシンセトーンの住み分けが出来ているのに気づく。開発陣のセンスが光るサウンドチョイスと言えるが、個人的にはMODE1がテーマやリード、キャラクターがはっきりしているMODE2、曲中のバッキングにうっすらと厚みをつけたいときに使うMODE7が好みだった。特にMODE1でトランペットが主役の曲を弾いてみると雰囲気が出てなかなかおつな感じになるので積極的に使いたくなる。
ただし、自分のバンドに鍵盤担当が居ないからその代わりにという使い方が向いているかというとちょっと厳しいかなという印象もある。もちろん、MODE2のように使い方や曲調によってはうまくはまるサウンドもあるが、個人的には誰かの代わりというよりもギターの音色のバリエーションぐらいに思っていたほうが使い勝手はよいと感じた。
ちなみに遅延やサウンドのバラつきはほぼなく、演奏していてストレスを感じることはない。ただし、ピックアップのブリッジを選択しているときはややピーキーになるので、フロントピックアップのほうが扱いやすいと思う。オーバードライブ系との相性は使っているエフェクターやアンプ次第といったところだが、私が使っているチューブアンプの場合は断然クリーンチャンネルの方が音はきれいに乗ってくれるので好みだった。この辺はみなさんがお使いのシステムとの相性なので、その辺も含めてベストセッティングを見極めていただきたい。
色々と試してみたが、実売価格で13,000円前後ということを考えればかなりの品質といえ、ギターシンセペダルとしてはコストパフォーマンス最強の部類に入ることは間違いない逸品だ。単なる“お試し”だけではなく、しっかり個性を持ったペダルなので、気に入った方はぜひ自分のギターサウンドのひとつのバリエーションとして楽しんでもらいたい。これからギターシンセを手に入れてみようと思っている人にはかなり強力な選択肢になってくれるはずだ。