日本テレビ系情報番組『ZIP!』(毎週月~金曜5:50~)で放送されているドラマ『サヨウナラのその前に Fantastic 31 Days』(7:50頃 ※全23話)。隕石衝突による地球最後の31日間を、月曜から金曜まで曜日ごとに視点を入れ替えて描き、5人の主役がリレー形式で紡ぐ作品だが、この“木曜日の主役”を演じるのが、俳優の北村一輝だ。

残された日々を生きる人たちを描くことによって、自分の生き方について考えさせてくれる今作。北村にその人生観を聞くと、「人間らしく生きる」ことの大切さ、そして、今ある日常への感謝を語ってくれた――。

  • 『サヨウナラのその前に Fantastic 31 Days』に出演する北村一輝 撮影:蔦野裕

    『サヨウナラのその前に Fantastic 31 Days』に出演する北村一輝 撮影:蔦野裕

■愛している人に気持ちを日々伝えられているのか

曜日ごとに異なる主人公が存在し、それぞれの視点で描かれるという今作に、「新しいチャレンジをするのだなと思い、個人的にはすごく楽しみでした」という北村。「こういうご時世だからこそ新しいものが生まれるチャンスでもあると思います。大変な時期にこそ、これから先のために良いものを目指そうという意気込みを熱く感じるので、手探り状態の部分もあるのかもしれませんが、そこに参加できるというのがとてもうれしいですし、自分がやるべきことを一生懸命やることで力になれれば」と話す。

“隕石衝突”というSF的な題材については、「もし新型コロナウイルスのパンデミックが起こっていない状況でこれを台本にしても、多くの人が他人事のように考えたのではないかと思います。でも、今は地震や温暖化の現象もあり、何が起きてもおかしくない状態であることから、隕石という少しSFっぽく思われるくらいのほうが、ちょうど良い加減で、うまく作られた世界観だなと感心しました。この物語は僕らの人間性の部分を伝えたいというメッセージが込められていて、あまりに題材が身近すぎると、“人間”という部分が見えなくなってしまうことを考慮したんだなと思いました」と納得。

また、「隕石衝突というのは、“あと何キロ”という距離感が出るのが絶妙なんです。ウイルスは目に見えないもので、気づいたときにすぐそばにあるけれど、このドラマを通して思ったのは、衝突まで31日間という期限があると、人間は何をしたいかと考えることを、常日頃から想定しておくことが大事なんじゃないかなと。もしかしたら明日最期を迎える人もいるかもしれないし、人生本当に何が起こるか分からない中で、理想論かもしれませんが、自分が愛している人に気持ちを日々伝えられているのか。そういう部分を日常で見つめ直してもらえると、僕たちはこのドラマをやったかいがあるのかなと思います」とも語る。

それだけに、もし実生活において地球最後の日がくると分かったとしても、「一番良かったこととは、どこかに行った思い出や、おいしいものを食べたことではないと思っています。どれだけ大事な人と気持ちが通じ合ったとか、そういうことだと思うので、感謝している全ての人にその気持ちを伝えたいですね。自分自身では “あと1カ月”と言われても、そんなに変わることはないと思います」と胸を張った。

■「偉い人間になるよりも、人間らしくいろ」

そう思えるのは、今の暮らしが恵まれていると感じているからこそ。

「細かいことを言えば多少はありますが、健康で、好きな仕事ができ、毎日を過ごせているという何気ない日常に感謝しています。この世界には生まれながらに不遇の方もいる中、どれだけ自分が恵まれているかというのは、常日頃から感じているところでもあります」

この人生観は、今回のドラマに出会う前から抱いていたという。

「人間はどう生きるかということを考えたときに、もちろん成功や出世も1つだと思いますが、僕は“人間らしく生きる”というところにすごく魅力を感じます。僕の今のポジションは本当に運もあり、巡り巡ってこういう仕事に就けていると思いますが、いつなくなるか分からないという危機感は常日頃から考えています」

今回演じるのは教師役だが、自身が中学1~2年生時の担任だった浅田先生の教えに「偉い人間になるよりも、人間らしくいろ」という言葉があった。

「自分の中でちゃんと意識できる価値観を持つ、ということを教えてくれました。だから、僕たちの仕事というのは、選ばれた人たちが多いと思いますが、今この仕事をしている自分というよりも、人生の中で自分がどういるべきかということを常に考えています。俳優だから芸能人だからというより、自分がどうなのかというのを考えることが、いつも大きいです」――“人間らしく生きる”という考え方が形成された背景には、そんな浅田先生の存在も見えてくる。