桃の節句とも呼ばれるひな祭り。この日には、ちらし寿司や菱餅、ひなあられなどの食べ物を食べるのが慣例となっています。

しかし、なぜこの日にこれらの行事食が食べられるのかという理由を知らない方も多いでしょう。本記事では、ひな祭りで並ぶ食べ物の意味や由来などについて、くわしく解説していきます。

  • ひな祭り・桃の節句の意味と由来

    ひな祭りで並ぶ食べ物の意味や由来などを紹介していきます

ひな祭りで定番の食べ物の意味と由来

ひな祭りには菱餅やひなあられ、ちらし寿司などの行事食を並べるのが慣例となっています。このような食べ物が並ぶ理由を、くわしくみていきましょう。

菱餅(ひしもち)

菱餅は、古代中国の上巳の節句で食べられていた母子草(ははこぐさ)に由来しています。日本では母子草を使ったお餅は「母子をついて餅にする」と嫌がられたため、蓬(よもぎ)を使うようになりました。

なお、菱餅の桃(赤)・白・緑の3色には下記のような意味合いが込められています。

桃(赤):魔よけ
白:純潔
緑:健やかな成長

ひなあられ

ひなあられは、貴族階級の子どもがひな人形を持って川辺や野山に出かけ、人形に春の景色を見せる「ひなの国見せ」という風習に持参して食べていたのが由来です。ひなあられに使われている桃・緑・黄・白の4色は四季を表しており、「1年を通じて幸せを祈る」という意味が込められています。

なお、ひなあられと呼ばれるお菓子は、地域によって異なります。関東では「米に圧力をかけて膨らませたポン菓子に砂糖で味付けしたもの」をひなあられと呼び、関西では「揚げた餅を塩や砂糖醤油で味付けしたもの」をひなあられと呼びます。

はまぐりのお吸い物

はまぐりは1対2枚の貝殼を持つ二枚貝で、対の貝殻としか絶対に合わないことから、「良縁」や「夫婦和合」などの象徴とされています。また、「よい結婚相手と結ばれて末永く幸せに過ごせるように」という願いも込められています。

ひな祭りではまぐりのお吸い物を盛り付けるときには、開いた貝の両側にひとつずつ身を乗せるのが一般的です。

ちらし寿司

平安時代、お寿司の起源とされる「なれ寿司」の上に、海老や菜の花などを乗せていたものがちらし寿司の由来とされています。時代の流れとともに華やかな見栄えのお寿司に変わり、現在の「ちらし寿司」になったようです。具材の華やかな彩りが春を呼ぶため、ひな祭りの食べ物としても定着していきました。

なお、ちらし寿司の具材には、下記のような願いが込められています

  • 海老:腰が曲がるまで長生きできるように
  • レンコン:先が見通せるように
  • 豆:健康でマメに働けるように

白酒と甘酒

古代中国において、桃は邪気を払って延命長寿をもたらす霊木とされていました。また、「桃の花が流れる桃花水を飲んだところ300 歳の長命を得た」という故事もあります。

そのため、中国の影響が強かった奈良時代の王朝貴族は、3月3日に「曲水の宴」を催して桃花酒(とうかしゅ)を飲んだとされています。桃は百歳を意味する「百歳(ももとせ)」に通じていることも、桃花酒を飲む風習につながったのです。

江戸時代になると白酒が飲まれるようになります。しかし、白酒はアルコール度数が10%前後あるため、ひな祭りでは子どもでも飲める甘酒が用意されるようになりました。

  • ひな祭りの食べ物の意味と由来

    ひな祭りの食べ物の由来がわかると、お祝いの意味に対する理解も深まるでしょう

そもそもひな祭り・桃の節句の意味と由来とは?

ひな祭りの由来には諸説ありますが、古代中国の「上巳(じょうし)の節句」が遣唐使によって日本に伝えられたという説が有力とされています。ひな祭りが「桃の節句」と呼ばれる理由も、上巳の節句で厄よけとして桃の花が使われていたことに由来するようです。古代中国では、桃の花に魔をよける力があると考えられていました。

遣唐使によって伝えられた上巳の節句は、日本で禊(みそぎ)の神事と結びつきました。上巳の節句では川で身を清める習慣もあったため、日本でも体を紙などで作った人形で体を撫でて穢れを移し、川や海に流すようになりました。現在でも一部地域で行われている「流し雛」は、この名残とされています。

技術が発達して立派な人形が作られるようになると、川や海に人形を流すのではなく、人形を飾る習慣へと変わります。やがて、貴族の子どもに流行していた人形遊び(ままごと)と結びつき、ひな祭りの形になったとされています。江戸時代には女の子の成長と幸せを願う行事として定着し、ひな人形も豪華になっていきました。

なお、ひな祭りは、七草や七夕などと並ぶ五節句のひとつとしても知られています。改めて五節句を確認しておきましょう。

  • 1月7日「人日(じんじつ)」(七草粥)
  • 3月3日「上巳(じょうし)」(桃の節句)
  • 5月5日「端午(たんご)」(菖蒲の節句)
  • 7月7日「七夕」(しちせき)(笹の節句)
  • 9月9日「重陽(ちょうよう)」(菊の節句)
  • ひな祭り・桃の節句の意味と由来

    古代中国の上巳(じょうし)の節句が遣唐使によって日本に伝えられたのが、ひな祭りの由来とされています

ひな祭りの食べ物の意味にはそれぞれに意味がある

ひな祭りの由来には諸説ありますが、古代中国から日本に伝えられたという説が有力のようです。ひな祭りで並ぶ食べ物にも、それぞれに由来や意味があります。意味を理解したうえでひな祭りの行事食を食べれば、お祝いがより楽しくなるでしょう。