2~3筋からの速攻が決まる

藤井聡太王位への挑戦権を懸けて争われる、お~いお茶杯第63期王位戦(主催、新聞三社連合)の挑戦者決定リーグ紅組の豊島将之九段―黒沢怜生六段戦が2月26日に関西将棋会館で行われ、101手で豊島九段が勝利しました。

本局は紅組リーグ1回戦のラストとなります。紅組はここまで、近藤誠也七段と伊藤匠四段が白星スタートでした。前期挑戦者の豊島九段と、リーグ初参加の黒沢六段の一戦は、豊島九段の先手で後手の角交換四間飛車となりました。

■鋭い踏み込みで豊島九段が優勢に

序盤早々に黒沢六段が△7二飛と飛車の位置を変えました。これは先手玉の玉頭を狙っています。ですがここで豊島九段が猛然と攻めかかります。▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩に、飛車取りに構わず桂頭を攻める▲3四歩が鋭い一着。以下△2四歩▲3三歩成の進行は飛桂交換で先手の駒損ですが、先手は3三に作ったと金が大きく、後手の金銀のいずれかを取り返せる形です。ここからの実戦はしばらく豊島九段が攻め立てる展開となり、形勢も先手に傾きました。

非勢に陥った黒沢六段ですが、決め手を与えずに粘り強く指し回します。多少なりともチャンスが訪れたとすれば、88手目の局面でしょうか。ここで△7四桂と銀香の両取りに打つ手がありました。次にどちらを取っても先手玉に王手がかかる形です。この桂は▲7四同香と取られる形なので考えにくい順ですが、△同飛と取り返した形は、飛車が先手玉を再びにらみます。飛車、桂、歩の3枚が玉頭に迫っているので、先手も楽観はできません。必然的に▲8五香と懸案の1枚である桂を取ることになりますが、それでも構わず△7七香と打ち込めば、▲同銀△同歩成▲同金△7六歩と攻めることが出来ます。厳密にいえばこれでも先手が指せそうですが、先手玉の危険度を少しでも増すのが勝負手でした。実戦は△5六桂と、こちらも守備のかなめである金を狙った桂打ちですが、構わずに▲7三香成と左右挟撃態勢を築き、豊島九段の勝ち筋となりました。

快勝の豊島九段、藤井王位へのリベンジへ向けてまずは好スタートを切りました。王位リーグ1回戦のラストは、白組リーグの糸谷哲郎八段―澤田真吾七段戦で、3月9日に関西将棋会館で行われる予定です。

復位に向けて好発進の豊島九段(写真は第42回将棋日本シリーズ準決勝のもの 提供:日本将棋連盟)
復位に向けて好発進の豊島九段(写真は第42回将棋日本シリーズ準決勝のもの 提供:日本将棋連盟)