Intelは先にAlder Lakeベースの第12世代Core Mobileプロセッサの詳細を発表しており、まずはTDP 45WのHシリーズが出荷され、2月中には搭載製品が市場に投入される予定としていた。これに続き、今回TDP 28WのPシリーズと、TDP 9/15WのUシリーズについても詳細が公開されたので、その内容をご紹介したい。

ラインナップそのものは既に公表済みであり、PシリーズがCore i3/5/7で合計6製品Uシリーズが同じくCore i3/5/7で合計5製品となっている(ちなみに公表されているにも関わらず、未だにark.intel.comでは出てこないのが不思議である)。

そのPシリーズであるが、基本的な構成は既に公表されているHシリーズと全く違いが無い(Photo01)。一方Uシリーズについては、P-Coreが最大でも2つしかないため、CPU側のダイが異なるものになる。これもあって、特にUシリーズでもTDP 9Wのものは28.5mm×19mm×1.1mmの小さなパッケージとなる、というあたりは第11世代までと同じである(Photo02)。

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Photo01: コア構成を含め、PシリーズはHシリーズの省電力版という位置づけになるから、これは不思議ではない。パッケージサイズも50mm×25mm×1.3mmで全く同じ。

Photo02: CPUのダイが小さくなった関係で、TDP 15Wの方はPCHが小さくなったかのように見えるが、PCHそのものはH/Pシリーズと同じと思われる。

さて、内部構造と機能に関しては、別にAlder Lake-P/UがAlder Lake-Hと違うという訳ではなく、単純に動作周波数とか利用できるコアの数が異なる(Uシリーズの中でもTDP 9WのSKUは省パッケージということもありI/Fの数が減っているが、これは純粋に信号を引っ張り出していないというだけの話である)だけの違いなので特に新しい話は無く、話題は主に性能という事になる。ということでまずは演算性能がこちら(Photo03)。比較対象はTDP 28WのCore i7-1195G7で、これを100%とした場合、TDP 15WのCore i7-1265Uは15WでほぼCore i7-1195G7と同等、TDP 28WのCore i7-1280Pは20W辺りで既にCore i7-1195G7を上回り、28Wだとほぼ50%ほど性能が高くなる、としている。以下、Blender(Photo04)、WebXPRT 4/Photoshop(Photo05)、CrorssMark(Photo06)、1080p Gameplay(Photo07)と続く。Gameplayは単独での性能比較になっているのは、ここではRyzen 5000 Mobileには敵わないという想定があっての事かと思う。

  • Photo03: Ryzen 7 5800UとApple M1も一応比較対象に上がっているが、M1はともかくAMDの方はRyzen 6000 Mobileが比較対象となってから、改めてこの結果を見たいものである。

  • Photo04: このクラスのノートでBlenderを、しかもCPUでブン廻すことにどの程度の意味があるのか? というとちょっと疑問ではあるのだが、まぁそれでもCore i7-1195G7と比較して大幅に性能が改善している事だけは判る。ところで、Ryzen R7 5800Uは間違っていると思う。

  • Photo05: WebXPRT/Photoshopともに、Core i7-1195G7はもとよりRyzen 7 5700UやApple M1と比較しても十分高速、としているが、さて。

  • Photo06: Intelなので、UL BenchmarkのPCMark 10ではなくBapcoのCrossMarkを選ぶのはまぁ「さもありなん」というところ。まぁ比較対象にApple M1/M1 Proを入れると、PCMark 10では動かないという問題があるので仕方ないのかもしれないが。

  • Photo07: Medium Settingsなら結構多くのゲームがプレイできるし、一部のゲームではHigh Settingsでも通用するとしているが、F1 2020がMedium Settingsで53fpsという辺りは厳しく見える。

一応突っ込みを入れておくと、そもそもPhoto03で横軸はSoC Powerとなっているが、これは要するにTDPというかPL1の数字であって、なので実際の消費電力を反映しているか? というと要確認だったりする。実際にはPL2まで行かないにしてもPL1を超えた電力で稼働している可能性は高いが、ここでは反映されていない(例えばCore i7-1265UはPL1が15WだがPL2は55Wである。にも拘わらずグラフは25Wあたりまでしか描画されていない)訳で、その意味ではこれをそのまま信じるよりは、もう少し別の方法で検証する必要はあると思う。ただ性能/消費電力比を抜きに性能だけで考えるのであれば、確かにAlder Lake-P/Uは従来よりも性能が伸びている、という事は間違いないとは思う。

なお、性能以外の部分で紹介があったのはISPの高性能化である。同じIMX488(ソニーのRGBIRイメージセンサ)を、USBカメラ経由で取り込んだ(つまりISPを経由しない)ケースと、PC本体に埋め込んだ形でのケース(ISPを経由する)で画質を比較したのがこちら(Photo08)。Alder LakeのISPではノイズ削減とかカラー再構成、トーンマッピングなどで、より自然な画質での撮影が可能になるとしており、この結果としてノートPCにおけるISPの利用事例が第10世代と比較して10倍、第11世代と比較しても2.5倍になったとしている。

  • Photo08: つまりUSBカメラからの映像をISPを通すAPIを提供すればみんな幸せになれるのでは? という気もしなくも無いが、まぁここが差別化要因の一つであるのは間違いない。

Intelによれば2022年中に250を超えるAlder Lake-P/U搭載製品が市場投入される、としている(Photo09)。ただこれは、次に説明するEvoも含んでの数字なのか、Evo対応製品を含まない数字なのかは確認していない。

  • Photo09: Hシリーズは100以上のデザインとあったので、合計350を超える事になる。まぁこれがEvoは別だとすると、ちょっと考えたくない量のデザインが世の中に出る事になるので、多分Evoも含んでの数字なのだろう。

続いてがそのIntel Evoの話。第3世代Evoの要件がこちら(Photo10)で、Alder LakeとWi-Fi 6Eに加え、FHD以上の解像度を持つカメラも必須事項に入った。このEvoは100製品以上が予定されている(Photo11)との事。この第3世代Evoでは、オプションであるがVisual Sensing Controllerや5Gモデムの搭載(Photo12)、スマートフォンとの連携が更に高まる(Photo13)他、Evoに対応した周辺機器の投入も予定されているとする(Photo14)。ちなみに折り畳み式ディスプレイもEvoでカバーできるようになった、という話である。

  • Photo10: 要するにIntelの提供するReference Designに沿った形で実装をすれば実現する訳で、あとはそこにどうやって各社が差別化要因を入れ込めるか、が鍵になる。

  • Photo11: Photo09のキャプションでも触れたが、この100以上という数字も、先の250以上のデザインに含まれると考えて良いと思う。ということは、つまりEvoに未対応なものが150以上あるという計算になる。なかなか興味深い。

  • Photo12: Visual Sensing Controllerは、周囲の環境を認識して自動的に省電力モードを設定する(例えば利用者がちょっと席を立ったら即座にバックライトの輝度を下げ、戻ったら輝度を元に戻す)機能を搭載する。ただとりあえずは8デザインのみ。5Gモデムも15デザインと、そう多くない。

  • Photo13: これはAlder Lake-HのEvoでも実現している話で、別にP/UシリーズのEvoのみという訳ではない。

  • Photo14: こうした周辺機器は、Evoの要件を邪魔しない。例えばPhoto10でInstant Wakeが1sec未満とされるが、周辺機器の中にはこれを接続していると立ち上がりが遅くなるものもあり、接続している状態だとEvoの要件を満たさなくなってしまう訳で、こうした問題が生じないように工夫されているわけだ。

  • Photo15: この場合BT接続のキーボードの用意が必須、とされるのは面白い。

さて、とりあえずこれでIntelは手持ちの製品を市場に全部公開した格好だ。続くRaptor Lakeの投入まではこのラインナップでRyzen 6000 Mobileと戦う必要がある訳だが、AMDの攻撃をどこまで凌ぐことができるのか、楽しみである。