2022年10月、法改正により児童手当が見直されます。これまで、一定以上の収入があっても児童1人につき5,000円もらえていた「特例給付」に、所得制限が設けられるのです。では、この改正で影響を受けるのは、年収いくらの人なのでしょうか。今後の児童手当の条件について、家族構成による所得制限の違いなども交え、詳しく解説します。

  • 児童手当がもらえる年収はいくらまで? 「特例給付」の対象をチェック

■児童手当とは

児童手当は、家庭における生活安定と、児童の健全な育成および資質の向上を目的に、児童を養育する人に支給される手当です。児童手当を受け取るには、子どもの誕生後、自治体に「認定請求書」を申請します。また、毎年6月頃に、受給条件を満たすことを示す「現況届」を提出する必要があります。

なお、支給は毎月ではなく、6月、10月、2月の年3回。前月までの4ヶ月分(2~5月分、6~9月分、10~1月分)がまとめて支払われる仕組みとなっています。

児童手当の対象となるのは、0歳から中学校卒業までの児童で、0歳以上3歳未満は一律1万5,000円、3歳以上小学校修了前は1万円(第3子以降は1万5,000円)、中学生は一律1万円が支給されます。

ただし、児童を養育している人の所得が「所得制限限度額」以上だと、特例給付として支給額は一律5,000円に。所得制限限度額は、扶養親族等の数により異なります。

たとえば、前年の12月31日時点で扶養親族等が0人(子どもがまだ生まれていない)の場合、所得制限限度額は622万円(収入額目安は833万3,000円)、1人の場合、所得制限限度額は660万円(収入額目安は875万6,000円)です。

■児童手当は見直しでどう変わる?

現状では、たとえ収入が多くても、特例給付により月5,000円の手当がもらえます。しかし、2021年5月に法改正で児童手当が見直され、2022年10月以降の支給条件が変更に。これにより、世帯主の年収が1,200万円以上だと、児童手当の特例給付が支給されなくなります。

なお、内閣府によると、年収1,200万円で特例給付が廃止となるのは、扶養親族等が3人のケース。前年度末の扶養親族等が0~2人の場合、特例給付の対象外となる所得額は、以下のようになっています(※)。

扶養親族等の数と特例給付対象外となる所得額

  • 扶養親族等の数と特例給付対象外となる所得額(カッコ内は収入額目安)

ただ、改正後も特例給付は継続されます。扶養親族等の数にもよりますが、たとえば、会社員の夫が年収103万円以下の妻と子ども2人を扶養しているモデル世帯の場合、夫の年収が960~1,200万円未満だと特例給付に該当します。

共働きの場合は、夫婦合わせて年収1,200万円以上になったとしても、これまで通りの金額を受け取ることができます。今回の見直しにおいて、所得基準を世帯年収とする議論もありましたが、それは見送りとなりました。そのため、あくまで世帯主の年収が1,200万円以上となるケースのみ、児童手当の特例給付が廃止となります。

世帯主の定めについては、共働きなら、一般的には年収の多いほうが該当するでしょう。ただし、自治体によっては条件が異なる場合もあります。詳しくは、お住まいの自治体に確認してください。

(※)令和3年9月1日内閣府子ども・子育て本部児童手当管理室より「令和3年児童手当見直しに関する全国説明会資料」

■特例給付廃止の影響は

今回の改正で、児童手当の対象から外れる子どもの数は約61万人にのぼり、年間約370億円もの財源が得られるとのこと。この財源は、待機児童解消に向けた保育所整備に充てられ、2024年度末までに、新たに14万人分の保育の受け皿が創設される予定です。

こうした目的があるにしても、月額5,000円もらえていた児童手当が0円になる影響は、決して小さいものではありません。年間で考えても、1人につき6万円の給付が消えます。0歳~中学校卒業まででは、「5,000円×12ヶ月×15年間」、総額90万円がなくなる計算です。

「高所得層なら大きな問題ではないのでは」と感じますが、この層が所得制限に引っかかるのは、特例給付だけではありません。あらゆる給付金や助成金等においても、ほとんどの場合、対象外となってしまうのです。

子育て関連だけ見ても、収入が多いほど高くなる保育料、高校の授業料なども減免の対象外。奨学金も、所得制限によって借りられないケースがあります。

また、給与所得控除枠の減少や、年少扶養控除の廃止による増税など、高所得層への経済的負担は年々重くなっています。累進課税により多額の税金を納めている一方、いざ手当や給付金等となると、その恩恵を受けられません。

特例給付の廃止は、もともと重かった高所得層の負担をさらに増やしました。収入の多い家庭こそ、節約や家計管理の重要性が高まっていると言えるでしょう。

■特例給付廃止に備えよう

これまで特例給付を受け取っていた人の中には、手当を使わず、将来のために積み立てていた人も多いでしょう。今後、手当がなくなる場合は、自らこれを補わなければなりません。これを機に家計を見直し、固定費の中に節約できるものがないか探すなど、今から備えておきましょう。