10連覇の大記録にあと1勝と迫る
渡辺明棋王へ永瀬拓矢王座が挑戦する第47期棋王戦五番勝負(主催、共同通信社)の第2局が、2月19日に石川県金沢市の「北國新聞会館」で行われました。結果は103手で渡辺棋王が勝利し、五番勝負の成績を2勝0敗としました。
本局は渡辺棋王の先手番で相掛かりに進みました。25手目の▲6六歩が渡辺棋王いわく「趣向の手」。自らの角道を止めるので意外な手に見えますが、以下の進行も含めて渡辺棋王はほとんど時間を使っていません。入念な研究であることがうかがえます。さらにこの歩は▲6五歩まで進められて、先手は6筋の位を確保しました。
■永瀬王座が好判断でリードを築く
駒組みを完成させた渡辺棋王は57手目に▲4五歩と動きますが、このタイミングで△6四歩と前述の位を奪還しに行ったのが永瀬王座の好判断でした。渡辺棋王も自身のブログで「ここからはやや苦戦を意識して、崩れないようにという方針で指しました」と振り返っています。後手は位を奪還し、さらに△6四角と好位置に角を据えることができました。とは言え渡辺棋王も先ほどの動きを生かして、▲4四歩と後手玉のそばに拠点を作ります。結果的にはこの拠点が勝敗を左右したかもしれません。
■永瀬調の一手が敗因に
ポイントは79手目の局面で、渡辺棋王が▲2九飛と飛車を引いて下段をケアした局面。この手自体は指したい手ではありますが、8筋は後手の飛車が素通しで6六歩の拠点も残っている状態なので、これらを直接受けないのは先手にとって相当に怖いところです。ここで後手が△6七角あるいは△8七角と踏み込んでいれば、リードを奪えていたようです。実戦の△4一玉は受けの手で、いかにも永瀬調といった手ですが、この数手後から攻めに転じた渡辺棋王が徐々に局面をリードしていきます。永瀬王座をひるませた一因に4筋の拠点があったとすれば、前述の▲4五歩は疑問手ながらも勝利に貢献した一着だったのかもしれません。
最後は永瀬王座のせめてもの一太刀に対して、冷静に応じた渡辺棋王が勝利し、2連勝。10連覇にあと1勝としました。これまでタイトル戦で2桁連覇を達成したのは大山康晴十五世名人(名人13連覇、王位12連覇)と羽生善治九段(王座19連覇、棋王12連覇)の2名しかいません。渡辺棋王は以前、竜王戦で9連覇を達成しましたが、その時はV10を逸しました。大記録へ向けて再度のチャンスが懸かった第3局は3月6日に行われます。
相崎修司(将棋情報局)