ドイツのミーレは世界で認められている高級家電メーカー。日本でも食洗機や洗濯機といった大型家電が人気です。そんなミーレの隠れた人気製品のひとつが掃除機。ミーレの掃除機は昔ながらのコード式キャニスター型ですが、日本でも根強いファンがいる実力派なのです。そこで、ミーレの高機能掃除機「Compact C2 CleanMeister PowerLine SDCO4」(以下、SDCO4)を実際に確かめてきました。

  • ミーレの高機能&ハイパワー掃除機「Compact C2 CleanMeister PowerLine SDCO4」

掃除パワーに“全振り”した、いさぎよい仕様

現在、ミーレの掃除機ラインナップは「Compact C2」と「Compact C1」という大きく2種類が用意されています。今回試用したSDCO4は最上位モデル(公式オンラインストア価格は71,500円)です。

  • ミーレの掃除機、メインのラインナップは3モデル。左から(公式オンラインストア価格)、Compact C1 Pure Suction PowerLine SCAO3(39,600円)、Compact C2 CleanMeister PowerLine SDCO4(71,500円)、Compact C2 Cat & Dog PowerLine SDBO4(63,800円)。おなじCompact C2でも、SDCO4とSDBO4では付属品や内部に標準セットされたフィルターの種類が異なります

日本では取り回しのラクなコードレススティッククリーナーが主流になっていますが、ミーレの掃除機はこの流行とは異なる電源コード必須のキャニスター式。もちろん、日本でも「バッテリーの時間を気にせずしっかり掃除をしたい」というユーザーからキャニスター式掃除機は人気がありますが、最近はキャニスター掃除機も持ち運びしやすいよう軽量・コンパクト化しています。

一方、ミーレのSDCO4は本体サイズが幅253×奥行き428×高さ230mmと少々大きめ。さらに、重さは標準パイプやヘッドを装着した状態で6.3kg。最近のキャニスター掃除機は標準質量が4kg以下が一般的なので、かなりズッシリの印象です。

  • SDCO4には標準ヘッドのほか、フローリング向けのパーケットツイスターフロアブラシと回転ブラシ内蔵のハンドターボブラシを付属。そのほか、ホコリ取り用ブラシとすきま用ブラシ、家具用ノズルが付属。後者3種のブラシは本体のホースまわりにセットして常に持ち運べる仕様です

  • 他社製品が軽量化や低コスト化のために樹脂素材を利用するなか、SDCO4のパイプは耐久性の高いステンレス製。ミーレの掃除機は20年使うことを想定した耐久性があるそうです。金属パイプは見た目にも高級感があります

  • 本体の動作スイッチを足で踏むことで、電源のオンオフを切り替えます。壊れにくい構造にするため、手元スイッチはあえて排しています

重くて大きいという第一印象のSDCO4ですが、それでも人気の理由はなんといっても掃除力。実際に掃除してみると、とくにカーペットのゴミ吸い取り力は驚異的。筆者は仕事柄たくさんの掃除機を試用していますが、カーペット毛足の根元に落ちたゴミや、毛足に絡まったゴミの除去能力は圧倒的でした。

【動画】ペットの抜け毛と粉ゴミをカーペットにこすりつけて、SDCO4で掃除したところ。ヘッドを前進させる動作でほとんどの毛を吸い取っています。この吸引力は驚異的! ただしヘッドを戻す動作では一部、ゴミが残っていました

  • 「Compact C2 CleanMeister PowerLine SDCO4」を試用するマイナビニュース・デジタルの林編集長

高機能掃除機には珍しい非ブラシヘッド

SDCO4の高いカーペット掃除力、理由のひとつと思われるのが、標準ヘッドにブラシを採用せずに床との密着性を高めている点です。最近の掃除機はヘッド内に回転ブラシを内蔵しているのが多数派で、このブラシでゴミをかき取って吸引します。このため吸引力自体はそこまで高くなく、ブラシ毛の届かないカーペット奥のゴミが除去しにくいという一面があります。

また、他社性の掃除機は非ブラシ式ヘッドであっても、あえて床との密着性を低くしています。ヘッドの密着性を高くすると、ヘッドの滑りが悪くなるからです。SDCO4は掃除力を重視して密着性の高いヘッドを採用しているため、標準ヘッド&最大パワーでカーペットを掃除するときは、両手でグッと力を入れないとヘッドが動きません。カーペットの掃除にはかなりの力を必要としますが、そのぶん優れたカーペット掃除力が得られるわけです。

  • SDCO4の標準ヘッド「標準床用ノズル SBD660-3」は、ヘッド横のスイッチでヘッド裏側を囲むブラシを出し入れ。カーペット掃除時はブラシを収納して床との密着性を高め、フローリング掃除時はブラシを出して床に直接固いヘッドが当たらないようにします。フローリング掃除は、カーペット掃除ほどの力を必要としません

  • 吸引力は本体のダイヤルスイッチで切り替え(6段階)。カーペット掃除には右下の最大パワー「max.」が推奨されています

うれしいのは、非ブラシ式ということでヘッドの掃除がいらないこと。回転ブラシ内蔵ヘッドは、髪の毛やペットの抜け毛などがブラシに絡みついて回転が止まることがあるため、定期的なメンテナンスが必要です。ブラシを内蔵しないSDCO4のヘッドなら、このメンテナンスも不要。ただ、ブラシを内蔵していないということで、一部の回転ブラシ内蔵掃除機が備える「フローリング(タイル)床の拭き掃除」効果はありません。

  • 無垢材フローリングに大量の粉をまいて、SDCO4のヘッドを一往復させたところ。フローリング板と板の間にはまり込んだ溝奥のゴミまでしっかり吸引していますが、板表面の浅い凹凸の粉は残っています。拭き掃除が必要な汚れは「拭き掃除」機能を持つブラシタイプに軍配があがりそう

  • 別売りアクセサリーとして、回転ブラシ内蔵の「ターボブラシ (TurboTeQ)」もあります。ブラシはモーターを使わず、吸引時の風を利用して回転させるのが特徴的

海外メーカーならではの違いもいろいろ

ミーレはドイツのブランドということで、SDCO4には日本の掃除機にはない特徴もあります。たとえば、SDCO4は紙パック式掃除機ですが、この専用紙パック「FJM HyClean 3D」は複層構造になっていて、とっても丈夫。釘のような鋭利なゴミを吸い込んでも破れる心配がありません。また、掃除機のフタを開くと紙パックのフタが自動的に閉まるようになっていて、紙パック交換時などにゴミが漏れ出ることもありません。

  • 専用パック「FJM HyClean 3D」をカットすると、内側にフワフワとした緩衝材のような層が見えます。パック内は気流を整える特殊な形状になっており、ゴミが溜まっても目詰まりしにくい構造になっているそうです

ちょっと面白いのは、フィルターを選べるところ。最近の高機能掃除機は、フィルター搭載によって「部屋の空気よりキレイな排気」が半ば当たり前。SDCO4は、このフィルターを「HEPAエアクリーンフィルター」と「アクティブエアクリーンフィルター」の2種類から選択できます(購入時はHEPAエアクリーンフィルターを付属)。

HEPAエアクリーンフィルターは、ウイルス、細菌、粒子の99.95%を除去するHEPA13等級レベルのもの。一方のアクティブエアクリーンフィルターは、活性炭が入った脱臭機能に優れたフィルター。ペットや喫煙者がいる家庭に向いているといいます。

  • HEPAエアクリーンフィルター(写真下)と、アクティブエアクリーンフィルター(写真上)。一般的な掃除機のフィルターは何年も洗って使い続けますが、ミーレのフィルターは使い捨てタイプ

  • フィルターの交換時期になると、フィルター側面のtimestrip部に赤い「replace」ラインが伸びてきます。標準的な使い方をした場合、交換の目安は約1年

ドイツらしいこだわりと感じるのが、追加アクセサリー類の豊富さ。SDCO4には標準で5種類の付属アクセサリーがありますが、それ以外にもさまざまなアクセサリーを別売りで用意しています。

  • 付属アクセサリーの一部。マットレスのすきまなどを掃除する専用の「マットレスノズル」など、かなりニッチな用途のアクセサリーまで用意されています

  • アタッシュケースのようなものは、車内掃除に便利なアクセサリーを4点収納した「カーアクセサリーケース」

万人向けとは言いがたいものの、カーペットのある家にほしい製品

最近は子どもやペットのために大きなカーペットを敷いている家庭も増えていますが、カーペットはダニの温床になりやすいというデメリットも。SDCO4を使ってみたところ、カーペットの奥までゴミをしっかり吸引していました。いままで多くの掃除機を使ってきましたが、ここまでしっかりカーペットを掃除できる製品はなかなかありません。SDCO4には、ダニそのものや、ダニのエサにゴミもしっかり除去してくれるという安心感があります。ハウスダストが気になる幼児やアレルギー持ちの家族がいる家庭にとっては、ベストチョイスとなるかもしれません。

ただし、掃除力の高さのために「掃除の手軽さ」は犠牲になっている一面も。大きく重い本体は、気付いた場所をちょこっと掃除する……という使い方には明らかに向いていません。手軽なコードレススティッククリーナーと併用しながら、普段はコードレスクリーナー、週末にじっくりSDCO4で掃除をするのがオススメです。