JR西日本は、特急「やくも」の新型車両として直流特急形電車273系を投入すると発表。同社の2月社長会見にて、新型車両に込める思いや車両概要などが説明された。新型車両273系は2024年春以降の営業運転開始を予定している。

  • 特急「やくも」に投入される新型車両のイメージ(詳細仕様、デザインは検討中)

特急「やくも」は1972(昭和47)年3月の山陽新幹線岡山開業に合わせ、伯備線経由で山陰・山陽エリアを結ぶ列車として運転開始。おもに岡山~出雲市間で運行され、今年3月に50周年を迎える。現行の381系は、国鉄時代の1982(昭和57)年、伯備線電化にともない導入された車両。カーブの多い線区に適した「自然振り子方式」の直流特急形電車だが、製造から約40年が経過することもあり、サービスレベルと輸送品質のさらなる向上のため、新型車両を投入することとなった。

JR西日本では、特急「やくも」に新型車両を投入することで、安全かつ快適性・利便性の高い移動空間を提供するとともに、山陰エリアの魅力発信と観光振興を担う列車をめざすとしている。現在、地域の人々にも愛着を持ってもらえるような車両デザイン、グループやファミリー層が利用しやすくなるような車内設備を検討しているとのこと。

新型車両273系では、JR西日本と鉄道総合技術研究所、川崎車両が共同開発し、新たに実用化した「車上型の制御付き自然振り子方式」を採用。車上の曲線データと走行地点のデータを連続して照合し、曲線区間へ入る際に適切なタイミングで車体を傾斜させ、なめらかに遠心力を打ち消すことで乗り心地を向上させる。あわせて車体の衝突安全対策を行い、機器を二重系化するなど、安全性・安定性の向上も図る。

車内においては、座り心地を改善した座席を採用し、座席間隔も拡大して快適性を高める。全席にコンセントを設置し、車内Wi-Fiを搭載するほか、車いすスペースの拡大、多目的室の設置など、幅広い利用者層を意識した設備の充実を図る。空気清浄機や抗菌・抗ウイルス加工による安心した車内環境づくりにも取り組み、車内セキュリティ向上を目的に防犯カメラも設置する。その他、エネルギー変換効率に優れたVVVF制御を採用して環境負荷を軽減し、持続可能な鉄道を実現するとのこと。

仕様・デザインの詳細は2022年度上期中に発表予定としており、「新型『やくも』が皆様に愛され、新たな地域の顔となり、沿線地域の活性化に貢献できる列車となることを期待しています」とコメントしている。総投資額は約160億円。投入時期は2024年春以降、投入車両数は計44両(4両編成×11編成)とされ、特急「やくも」の現行車両381系は順次置換えとなる。

  • 特急「やくも」の現行車両381系

  • 国鉄色の381系はかつて北近畿エリアへの特急「こうのとり」などでも見られた(2014年撮影)

なお、現行車両381系に関して、1編成(6両編成)を懐かしい国鉄色に変更し、3月19日から運転開始する予定。「やくも8・9・24・25号」が国鉄色化リバイバル編成により運転される。