電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」を手掛けるLuupが、新しい電動キックボードを導入する。すでに設置も始まっているが、今回のアップデートは何を意図したものなのだろうか。ボディカラーを変えた意味は? Luup代表取締役兼CEOの岡井大輝さんに話を聞いた。

  • LUUPの電動キックボード

    LUUPの新型電動キックボード

ひと目でLUUPとわかる色にした意味

LUUPの新型電動キックボードはボディカラーを刷新。従来は黒ベースだったボディが、白ベースにグリーンのアクセントを加えたデザインに変わっている。

  • LUUPの電動キックボード

    左が新型、右が従来型

カラーチェンジの狙いは? 岡井さんは「夜間の視認性向上」に加え、こんな意味があると説明する。

「市販されているキックボードは、ほぼすべてが黒を基調にしています。これだと、事前のテストや免許証の登録という厳しい基準をクリアして『LUUP』に乗っている人なのか、そうではない電動キックボード(個人で購入したものなど)に乗っている人なのかが、遠目にはわかりません。なので、ちゃんと緊張感を持って乗ってもらいたいとの意味も含めて、LUUP独自の色合いでほかの電動キックボードと差別化を図りました」(以下、カッコ内は岡井さんの発言)

  • LUUPの電動キックボード

    Luupはこのほどロゴも刷新。LUUPのポートをイメージしたデザインで、新型電動キックボードと色合いが同じだ

機能面では、サイドスタンド式だったスタンドをセンタースタンドに変更した。これにより水平に停車できるので、スペースの有効活用にもつながるという。

「LUUPではキックボード2~3台分の小さなスペースをポートに活用させていただくケースが多いのですが、そういう場所だと、少し斜めになっている場所も結構あります。逆にいえば、そういう場所だから空いているともいえるのですが、そうした場所でもセンタースタンド式であれば綺麗に整列できるので、安全性や安定性が高まります」

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    新型が採用するセンタースタンド(写真左)。従来型(写真右)よりも取り付け位置が前にきている

  • LUUPの電動キックボード

    ナンバープレートの取り付け位置を上げることで段差の衝撃を緩和し、故障のリスクを低減する工夫も見受けられた(写真左が従来型、写真右が新型)

こうした改良はユーザーやポートオーナーの声を反映したものだというが、2019年に私有地での実証実験を開始したLuupが、電動キックボードのアップデートを行うのは今回で実に11回目。この短期間にこれだけ頻繁に改良を加えるというのは、かなり珍しいケースだろう。

「クルマでもそうですが、販売している商品であれば、すぐにアップデートすることはなかなかできません。私たちはシェアなので、新しいものができればすぐに市場に投下できます。継続的、連続的な早い回転でアップデートを行えるというのはLUUPならではのメリットです」

新型電動キックボード発表イベントには、マイナビニュースで連載中の紙ドライバーF氏が居合わせたので試乗してもらった。

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    最近、LUUPのポートを行動範囲内で見かけることが多くなったという紙ドライバーF氏。新型モデルについては「安定感があって、倒れそうになる心配がありません。操作も簡単なので、通勤やちょっとした移動手段として便利そう」と高評価だった

確かに街中で電動キックボードを目にする機会は増えてきたが、LUUPはこれまでのところ、プロジェクトとして順調に進捗しているのだろうか。岡井さんは「かなり順調に進んでいます」とし、その理由を2つ挙げた。まずは、ポートの拡充がかなり進んでいることだ。

「以前はカフェの前のようなカジュアルでお洒落な場所への設置が多かったのですが、最近は駅前やオフィス、それに完成前の新築マンションに設置が決まるなど、公的な場所でのポートの拡充が進みました。プライベートだけではなく、駅前からLUUPでオフィスまで移動するなど、日常的に使用してもらえる頻度は増えていると思います」

  • LUUPの電動キックボード

    東京メトロ「永田町駅」9a出口のポートに並ぶ新型電動キックボード

次に岡井さんは、実証データで集まったデータ量を挙げた。

「実証実験中という立場ではあるのですが、LUUPは有料であり、なおかつ利用にあたってのルール(免許証の登録や事前テストのクリアなど)も厳しいと思うんです。その中で多くの方に利用していただき、約半年間で40万キロを超えるデータが集まりました。利用者からはもちろん、並走するクルマやバイクのドライバー、歩行者からも、横をLUUPが走った時にどう感じたのかという声がかなり集まっています。これらのデータは政府にも提出しており、法改正にあたって十分に参考できる規模だと思います」

  • LUUPの電動キックボード

    ポート数は現時点で850カ所ほど。ポートの拡大が進み、電動キックボードは社会実装に向けた次のフェーズに移りつつあるというのが岡井さんの見解だ

最後に、電動キックボードの普及に向け、今後の課題をどのように捉えているのかを岡井さんに聞いてみた。

「例えば渋谷だと、ほとんどの人は電動キックボードを見たことがあると思うのですが、乗ったことがある人とない人がいます。乗ったことがない人はやっぱり、何か漠然とした不安を抱えている方がかなり多いです。法令がちゃんと定まって、『これが正しいルールです』『安心して乗れる乗り物です』ということになれば、より多くの人、例えば私たちの親世代にも、ちゃんと届けられます。新しく定められた法令の啓発・周知活動をいかに行っていくかが、今後の大きなポイントになると考えています」

今はまだアーリーアダプターの乗り物といった印象の電動キックボードだが、今後はマスに広がっていくのか。まさに正念場だ。