JR東日本は18日、水素ハイブリッド電車「HYBARI」(FV-E991系)の報道公開を行った。水素を燃料とする燃料電池と、蓄電池を電源とするハイブリッドシステムを搭載した試験車両として開発・製造され、3月下旬から実証試験を開始する予定となっている。

  • JR東日本が水素ハイブリッド電車「HYBARI」(FV-E991系)を報道公開

水素ハイブリッド電車「HYBARI」は、鉄道車両を設計・製造する技術を有するJR東日本、鉄道用ハイブリッド駆動システム(JR東日本と共同開発)の技術を有する日立製作所、「MIRAI」「SORA」の開発で培った燃料電池の技術を有するトヨタ自動車の3社が連携して開発。水素をエネルギー源とする鉄道車両の開発により、地球温暖化防止とエネルギーの多様化等による脱炭素社会の実現に貢献し、鉄道における環境優位性のさらなる工場とサスティナブルな社会の実現をめざすという。

愛称名の「HYBARI(ひばり)」は、「変革を起こす水素燃料電池と主回路用蓄電池ハイブリッドの先進鉄道車両」をイメージし、「HYdrogen-HYBrid Advanced Rail vehicle for Innovation」から名称を決定。「HY」には「水素(HYdrogen)」と「ハイブリッド(HYBrid)」の意味が込められているとのこと。1号車が「FV-E991-1」(Mzc)、2号車が「FV-E990-1」(Tzc’)の2両編成(1M1T)で、「燃料電池の化学反応から生まれる水を、碧いしぶきと大地を潤すイメージでとらえ、スピード感と未来感を持たせた車両デザイン」に。車体前面・側面に「HYBARI」のロゴも配置した。

  • 車体側面に掲出された「HYBARI」のロゴ

  • 2号車の床下に燃料電池装置を2箱搭載

  • 「HYBARI」の運転台

車内のシートは自然のエネルギーを感じられるグリーン系のカラーリングとし、大自然の山並みと飛び交う「HYBARI」のグラフィックを取り入れた。床面は山間の小川に見立ててデザインしている。2号車の屋根上に水素貯蔵ユニットを搭載しているため、1号車と比べて天井の高さがやや低くなっているとの説明もあった。

燃料電池装置は2号車の床下に搭載。屋根上の水素貯蔵ユニットから高圧水素を燃料電池装置へ供給し、空気中の酸素との化学反応により発電する。1号車の床下に主回路用蓄電池(バッテリー)と電力変換装置(コントロールユニット)が搭載され、「HYBARI」は燃料電池とバッテリーの両方から電力を用いて走行可能。車内にエネルギーフローを紹介する車内情報表示器も設置された。

  • 「HYBARI」の車内。シートはグリーン系のカラーリングに。エネルギーフローを紹介する車内情報表示器も設置

「HYBARI」の最高速度は100km/h、加速度は2.3km/h/s。実証試験は3月下旬から始まる予定で、試験区間は南武線川崎~登戸間と南武線支線(浜川崎~尻手間)、鶴見線とされている。試験の実施にあたり、神奈川県、横浜市、川崎市の協力を得て環境整備を行う。実証試験を重ねることで、将来の社会実装を推進するとしている。