帝国データバンクは2月16日、「首都圏・本社移転動向調査(2021年)」の結果を発表した。調査は、2021 年に首都圏と地方を跨いだ「本社所在地の移転」が判明した企業について、保有する企業概要データベースのうち業種や規模が判明している企業を対象に分析したもの。

  • 2021年の首都圏・本社移転動向

    2021年の首都圏・本社移転動向

2021年に本社移転を行った企業は、全国で2,258社。このうち、首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)から地方へ、本社または本社機能を移転した企業は351社と、これまで最多だった1994年の328社を大幅に上回り、過去最多を更新。大手芸能事務所のアミューズ(東京→山梨県富士河口湖町)のほか、仏タイヤ大手の日本法人・日本ミシュランタイヤ(東京→群馬県太田市)、光学・電子製品向け材料部品製造のデクセリアルズ(東京→栃木県下野市)などが地方へ。

一方、地方から首都圏へ本社を移転した企業は、前年から約1割増の328社。この結果、2021年における首都圏の本社移転動向は、転出社数が転入を23社上回り、11年ぶりに「転出超過」に転じた。

  • 転出先・転入元都道府県(2021年)

    転出先・転入元都道府県(2021年)

首都圏からの移転先としては、「大阪府」が最多の46社と過去最多を更新。次いで「茨城県」(37社)、「北海道」(33社)と続き、特に「北海道」に関してはコロナ前の19年(7社)から約5倍に急増。そのほか、「福岡県」(20社)、「宮城県」(14社)、「広島県」(10社)なども、首都圏からの転出先として過去最多(広島県は最多タイ)となり、これまで、首都圏からの本社移転先は大都市部、北関東3県など首都圏近郊が多かったが、リモートワークが定着したことで、遠隔地のほか、人口密度の低い地方・中核都市が本社移転先の有力候補に新たに浮上した。

一方、首都圏への移転元では、「大阪府」が最多の67社。次いで「愛知県」(26社)、「北海道」(23社)、「茨城県」(22社)などが続き、前年から大きな順位の変化は無かった。

2021年の企業移転動向を都道府県別にみると、転入・転出ともに最も多かったのは「東京都」。転出数は前年から約200社増加の893社と、2004年(970社)以来の高水準に。なお、最も転入が少なかったのは「山形県」(ゼロを除く)、最も転出が少なかったのは「高知県」(それぞれ1社)。

  • 首都圏から転出した企業(業種別)

    首都圏から転出した企業(業種別)

首都圏から転出した企業の業種は、「サービス業」が156社で最多。このうち、ソフトウェア開発やベンダーなどソフトウェア産業が23社あり、サービス産業全体の1割超を占める結果に。次いで「卸売業」(60社)、「製造業」(51社)が多かったものの、卸売業の割合(17.1%)は過去最低、製造業(14.5%)も19年(11.8%)に次いで低水準だった。

一方、首都圏への転入でも、「サービス業」が124社と最も多く、2015年(126社)に次ぐ高水準に。以下、「卸売業」(52社)、「小売業」(35社)など流通業種が多くを占めた。