都営三田線の新型車両として、5月14日から運行開始する予定の6500形。東京都交通局志村車両検修場にて、2月16日に報道公開が行われた。資料や報道公開で撮影した写真とともに、新型車両6500形の特徴などについて紹介する。

  • 都営三田線の新型車両6500形。車外表示器に「6500形デビュー!!」の文字も

2000(平成12)年の目黒~三田間開通に合わせ、東急目黒線と相互直通運転を開始した都営三田線では、直通運転先も含めた沿線の人口増加で乗車率が高まり、ダイヤの工夫等による混雑緩和策も限界に近づきつつあったため、8両編成化して輸送力を強化する方針になったという。既存の6300形は6両編成で、初期の編成は製造から30年が経とうとしており、置換えの時期が近づいていた。これらの状況を鑑み、抜本的な輸送力増強とさらなるサービス向上を目的に、8両編成となる新型車両6500形の開発を開始したと説明している。

新型車両の開発にあたり、「PROJECT TOEI」の一環として車両部門以外の部署を中心とする検討チームを立ち上げ、「スマート+コンフォート」をコンセプトとする基本デザイン構想を策定。これを軸に車両部門および車両メーカーのデザイン部門が深度化を進め、新しさを感じさせるとともに、長期にわたり愛着を持ってもらえるような普遍性をあわせ持つ車両に仕上げたとのこと。車両の製造は近畿車輛が担当している。

昨年11月に第1編成が搬入されて以来、これまでに8編成が搬入済みとされ、報道公開では第7編成の外観と車内が公開された。新型車両6500形は8両編成(4M4T)で、今回公開された編成は1号車(西高島平方先頭車)から「6507-1」(Tc1)、「6507-2」(M2)、「6507-3」(M3)、「6507-4」(T4)、「6507-5」(T5)、「6507-6」(M6)、「6507-7」(M7)、「6507-8」(Tc8)。パンタグラフは2・6号車に2基ずつ設置された。整備時には4両ずつに分割し、簡易運転台による自走も可能だという。

  • 報道公開の途中、都営三田線の現行車両6300形が通過する場面も

車体は大型押出形材をレーザ・MIGハイブリッド溶接で組み立てたアルミニウム合金製ダブルスキン構造とし、高い構体強度を確保。エクステリアはスマートで無駄のない機能美を感じさせる造形となった。先頭部も含めてシンプルな箱型であり、行先表示器や前照灯なども視覚的なノイズとなる要素を極力抑え、標記類も見やすさに配慮しながら総合的に配置している。車体前面はブラックを基調に、都営三田線の路線カラーであるブルーを配色し、車体側面の窓周りにもブルーを配した。

車内はオールロングシート。既存車両6300形の初期の編成である1・2次車では、車端部の一部座席をクロスシートとしていたが、新型車両6500形への置換えにともない、都営三田線の車両はすべてロングシートのみになるとの説明もあった。定員は先頭車139人(うち座席39人)・中間車149人(うち座席45人)とされ、8両合計の定員は1,172人(うち座席348名)。6両編成の既存車両(定員862人)と比べて310人増加する。

エクステリアと同様、インテリアデザインもシンプルな造形でまとめ、シートや乗降ドアをブルーの配色とし、車両全体での統一感を感じられる構成に。ドア間の座席を6人掛けとする一方、1人あたりの座席幅を約25mm拡大したとのこと。袖仕切りや車両間の貫通扉にガラスを多用することで、明るく見通しの良い車内空間となっている。室内灯にはLED照明を採用。ユニバーサルデザインの考え方を取り入れた「人にやさしい車両」をめざす取組みも推し進め、車端部をすべて優先席としたほか、縦手すりを増やし、吊り手の高さに変化を付け、荷物棚の高さも全体的に低く抑えた。乗降ドア付近の空間を広げることにより、乗降時の流動性も高めている。

車いす・ベビーカー利用者などに向けたフリースペースは全車両に1カ所ずつ設置している。フリースペースの二段手すりは縦方向の部分を加え、前後方向の揺れにも備えやすくしたという。ドア上には液晶ディスプレイを3画面ずつ配置し、向かって右側の2画面を行先案内表示器として使用。次の停車駅の案内や乗換案内、運行情報など、つねに複数の言語で一体的に表示し、運行等に関する情報提供を行う。防犯カメラは1両あたり4台、液晶ディスプレイの隣に設置。全車両に防犯カメラを搭載することにより、車内でのいたずらや迷惑行為、犯罪行為の未然防止に加え、テロ対策等に向けたセキュリティ強化を図るとしている。

  • 車内防犯カメラは1両あたり4台。ドア上の液晶ディスプレイは3画面ずつ設置されている

その他の特徴として、デジタル技術を活用し、車両の状態をリアルタイムに可視化する「車両情報収集システム」を2022年度中に運用開始する予定。室内灯や前照灯・尾灯などに消費電力の少ないLEDを採用し、VVVF制御装置に回生ブレーキ特性を向上させるSiC素子を使用するなど、環境負荷の低減もめざした。車両性能は運転最高速度110km/h、設計最高速度120km/h、加速度3.3km/h/s、常用減速度3.5km/h/s、非常・保安減速度4.5km/h/sとされている。

新型車両6500形は5月14日に運行開始した後、2022年度末までに13編成を順次導入し、既存の6300形を置き換える。なお、2023年3月に予定される相鉄・東急直通線の開業後、都営三田線から東急目黒線(目黒~日吉間)・東急新横浜線(日吉~新横浜間)を経由して相鉄新横浜線(新横浜~西谷間)および相鉄本線・いずみ野線まで直通運転が可能になるが、新型車両6500形の相鉄線への乗入れについては現時点で決まっておらず、調整中とのことだった。

  • 都営三田線の新型車両6500形の車内・外観