Looopは2月10日、「第6回気象ビジネスフォーラム〜気象データとグリーン社会〜」(主催: 気象庁、気象ビジネス推進コンソーシアム(WXBC)/2月8日〜10日)で講演。「電力ベンチャーにおける気象データ活用」と題し、同社電力事業本部エネルギー戦略部の渡邊裕美子部長がどのように気象データを活用しているかについて解説した。

  • Looop電力事業本部エネルギー戦略部の渡邊裕美子部長

同社は、東日本大震災の際に代表取締役社長の中村創一郎氏が被災地で太陽光パネルを設置するボランティアをしたことをきっかけに創業。太陽光など再生可能エネルギーを中心としたビジネスを拡大してきた。

2016年の電力小売事業の自由化に伴って電力の小売り事業にも参入し、30万人以上に電気を供給。「エネルギーフリー社会」=エネルギーを無料に近づけることを目指して、創エネ、O&M、電力小売、蓄エネを一手に行う。

同社では、データアナリティクス担当部署を立ち上げ、大学との共同研究や産学連携組織によって、データ分析やデジタル技術を活用。業界内での差別化を図り、電源調達やマーケティング、サービス設計に役立てている。

電力需要は気温に関係しており、その需給バランスによって電力卸市場価格が決まる。災害情報などから設備の故障予測などを行うビジネスも想定される。気象データを活用することが、電力業界でのビジネスでの重要なヒントや強みになるという。

電力小売事業でのリスク評価に活用

同社では、電力卸市場価格に影響を及ぼす要因である「気象」「化石燃料の価格」「発電所の稼働状況」から価格変化をモデル化。複数のシナリオを想定することで、将来の市場価格のシミュレーションを行っている。

そのシミュレーションをもとに、リスク評価やストレステスト、会社の予算作成、売価設定などを実施。その変動リスクをヘッジする手段として、「天候デリバティブ」(気象現象によって発生するリスクを取引の対象とする金融派生商品)の活用も検討している。

畜エネ機器を制御

同社では、気象データを活用して充電池の自動制御を行う「Looopでんち」を自社開発して販売。開発された2016年当時、一般的な蓄電池はあらかじめ設定されたパターンで充電・放電されていたが、Looopでんちでは気象データによって最適な充電・放電を行う。

気象データから警報など停電の恐れがある場合には放電を停止し、充電を最優先。それ以外の場合には、買電価格が安い時間帯に充電するなど需要家にメリットが高い形で充放電時間が設定される。

蓄熱式給湯器も蓄電池充電と同様に、余った電気を貯めることができる。同社が開発した「エネプラザ」を用いたさいたま市浦和美園エリア内のスマートコミュニティでは、気象データを活用し制御された蓄熱式給湯器が導入されている。

太陽光発電で余剰となる電力を予測し、晴天の日中など余剰となる時間帯にお湯をつくる、曇天など電力の創出が見込めない場合には電気料金の安い深夜にお湯をつくるといった制御を行っているという。

発電量に連動した料金メニューを提供

このスマートコミュニティでは、「みその再エネでんき」というこの街区だけの電気メニューで電力が提供されている。

コミュニティ内の太陽光発電余剰に応じて従量料金単価が変動するプランで、発電余剰が出ていると単価が安くなる。翌日の従量料金単価は、各家庭に貸与されるデバイスにて前日19時頃に通知されるという。

機器の異常検出サービス

発電所を所有するオーナー向けには、太陽光発電予測・実績比較による異常検出サービスでも気象データが活用されている。

気象情報と発電所の詳細情報から期待発電量を算出するほか、実績発電量との比較により機器故障などの異常発生を自動検知できるというもの。人工衛星から取得される情報を利用することで、計測機器を設置することなく対応可能になる。

同社では今後も、気象データに関する関係各所との連携を図りながら、新しい分析や開発に努めていきたいとしている。