なんでもすぐ否定する人、重箱の隅をつついてくる人、何度言っても伝わらない人……、できれば関わり合いたくないけど、仕事なのでどうしても関わらないといけない面倒な人、いますよね。

こういう相手に対してはついつい感情的に対応してしまいそうですが、それは得策ではありません。不毛な戦いで疲弊するのは自分のほう。うまく「対応する技術」を身につけたいところです。

"伝わる技術"をテーマに書いた拙著『バナナの魅力を100文字で伝えてください』(かんき出版)を読んでくれた方から反響が大きかった箇所の一つが「伝えるのが面倒な人への対応策」です。面倒な人に悩んでいる人が多いんですね。

以前、『頭に来てもアホとは戦うな!』(朝日新聞出版)や『バカと付き合うな』(徳間書店)という本がベストセラーになりました。これも面倒な人に悩んでいる人が多いからではないでしょうか。

  • 「話が通じない人」を相手にして困ることはありませんか?

話が通じない人には「2段階」で対応する

面倒な人のなかで、例えば「話が通じない人」にはどう対応したらいいのでしょうか。僕は2つの段階に分けて対応をするのがいいと思っています。

1段階目は「伝わる構造」を意識して、まずは伝わるための努力をすること。こちらが言いたいことをただ伝えるだけでは「話が通じない人」にはなかなか伝わりません。

そこで「伝わる構造」が大切になります。「伝わる構造」は7つの要素で作られています。「ゴール設定」「納得感」「相手ベース」「見える化」「聞く力」「親近感」「信頼感」。これらを入れ込み、話をしてみることです。

2段階目は、伝わる構造をベースに話しても、どうしても伝わらないという人であれば、無理してコミュニケーションを取らないということです。そこに時間をかけても伝わらない可能性が高いからです。

もちろん教育現場や医療・介護の現場にいる人など、コミュニケーションを取らないといけない役割や場面もあるかと思いますが、そういうときも、「伝わるのは難しい」という前提でいるのがいいかと思います。

人は「自分が理解できる範囲」でしか理解しません。だからどうしても「伝わらない」ということは起きてしまいます。どうにかして伝えようと時間をかけ、労力をかけるのももちろん悪いことではありません。

でも、いくら時間や労力をかけても伝わらない相手は存在します。

そんなときはあきらめることがひとつの手です。
あきらめることはどうしてもネガティブな印象を持ちがちですが、そんなことはありません。あきらめるには「明らかにする」という意味もあります。つまり適切な選択であるともいえるのです。

対話をあきらめる「見極め」ポイントは3つ

分かっていても、なかなかあきらめられないときはどうしたらいいか。僕がお勧めする方法はこの3つです。

(1)自分時間の価値の再確認
(2)感情の切り離し
(3)ゴールの再確認

「自分時間の価値の再確認」は、有限である自分の人生の大切な時間をそこにかけるべきかを改めて判断すること。そうすると、ムダなことをしているのではということが明らかになり、あきらめようという意識が出てきます。

「感情の切り離し」は伝わらなくても感情的にならないことです。感情に引っ張られると適切な判断ができなくなることがよくあります。感情を切り離し、意識して俯瞰視点を持ち冷静な判断をすることです。

「ゴールの再確認」はゴールを達成するために何を優先すべきかを再確認し、伝わらないことにかける時間がもったいないことを認識することです。

感情的になるとストレスもかかります。また目的やゴールにもなかなか近づきません。今回紹介した以外にも面倒な人に対するさまざまな「対応策」があるので、それらをぜひ身につけて有限な人生をより大切なことに時間をかけてもらえたらと思います。

著者プロフィール:柿内尚文(かきうち・たかふみ)

編集者
1968年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学文学部卒業。
株式会社アスコム取締役編集局長。長年、雑誌と書籍の編集に携わり、これまで企画した本の累計発行部数は1,000万部以上、10万部を超えるベストセラーは50冊以上に及ぶ。著書に「考える技術」をテーマにした『パン屋ではおにぎりを売れ』『バナナの魅力を100文字で伝えてください』(ともにかんき出版)がある。