本の要約サービス「flier」を運営するフライヤーとグロービス経営大学院は2月15日、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2022」の受賞7作品を発表した。総合グランプリに輝いたのは『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(藤尾秀昭 監修/致知出版社)。この結果を受けて翌16日より、全国の書店で受賞作品を展開するブックフェアが開催される。
どんな書籍が選ばれた?
読者が選ぶビジネス書グランプリ2022は、過去最多のエントリー数となる126冊で争われた。全6部門がもうけられ、一般投票を経て「有益だった」「実用的だった」ビジネス書籍を決定した。なお、一般投票数は昨年の30%増を記録。フライヤーでは「コロナ禍により、ビジネスパーソンがビジネス書に寄せる関心が高まっているのでは」と分析する。
一般投票で選出された全6部門賞と「総合グランプリ」、および今回から創設された「ロングセラー賞」は下記の通り。
- 総合グランプリ:『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(藤尾秀昭 監修/致知出版社)
- 自己啓発部門賞:『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(藤尾秀昭 監修/致知出版社)
- イノベーション部門賞:『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』(尾原和啓/幻冬舎)
- マネジメント部門賞:『ビジョナリー・カンパニーZERO ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になる』(ジム・コリンズ、ビル・ラジアー、土方奈美 訳/日経BP)
- 政治・経済部門賞:『稲盛和夫一日一言』(稲盛和夫/致知出版社)
- リベラルアーツ部門賞:『認知症世界の歩き方』(筧裕介/ライツ社)
- ビジネス実務部門賞:『超ファシリテーション力』(平石直之/アスコム)
- ロングセラー賞:『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン、久山葉子 訳/新潮社)
本発表を受けて2月16日より順次、紀伊國屋書店新宿本店、八重洲ブックセンター本店など全国 約1,300店舗の書店で店頭フェアを開催する。今回の店頭フェアは過去最大規模になるという。
著者の思い、執筆の背景
総合グランプリ・自己啓発部門賞をダブル受賞した『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(藤尾秀昭 監修/致知出版社)は、40余年の歴史を持つ致知出版が実施してきた1万本以上におよぶ人物インタビューのなかから、心に残る話を編集部が厳選した傑作選。稲盛和夫氏、王貞治氏、井村雅代氏、山中伸弥氏、佐藤可士和氏など、ジャンルを超えた著名365人の仕事術、発想法、生き方の哲学に触れられる。
担当編集の小森俊司氏は「月刊致知の購読者は全国に11万人おり、皆さんが『この雑誌は普通の雑誌ではない。毎号が永久保存版だ』と一様に仰る。そうした言葉を入社後の20年間、いつも耳にしていました」と説明。そこで心を熱くする話を1冊の書籍にまとめる企画が持ち上がり、編集部が総力をあげて1年半をかけて選定したいう。なお、続編の計画もあると話していた。
総合順位で2位にランクインしたのは、ビジネス実務部門賞を獲得した『超ファシリテーション力』(平石直之/アスコム)。テレビ朝日のアナウンサーであり、報道番組「ABEMA Prime」の進行を担当する平石直之氏がファシリテーションについてまとめた一冊。
授賞式で平石氏は「ビジネスの枠を超えて、例えば学校の先生から役に立ちましたと言われたり、消防士さんからチームワークに繋がったとメッセージもいただきました。いまの社会、様々な場面でファシリテーションのスキルが求められているのを感じます」と挨拶。執筆の背景については「1人喋り、インタビュー、会話の方法を提案する本はたくさんあるけれど、3人以上の場でどのように仕切っていくか、これまで教科書が存在しなかった。そこで日々、感じていたことをまとめました」と語った。
総合順位で4位に入ったのは、リベラルアーツ部門賞を獲得した『認知症世界の歩き方』(筧裕介/ライツ社)。認知症の高齢者が日々の生活のなかで経験する様々な出来事を、認知症世界を旅する旅人の「旅のスケッチ」と「旅行記」の形式で紹介していく。
著者の筧裕介氏は執筆の背景について「認知症のかたにインタビューして、どんなところに困っているか、障害を感じているのかをまとめました。これまで認知症の関連書籍は、医療の観点からの対処法だったり、あるいは介護者やご家族がどう対処していくかの視点でしか存在しなかった。認知症を発症した本人は、どんな思いなのか。その情報がなかったことに衝撃を受けたし、何とかしたかった」と説明。そして「認知症は特殊なことではなく、我々の生活と地続き。すぐ目先にあると実感した。これから超高齢化社会を迎え、認知症のかたがいるのが当たり前の社会になる。そうした人々がごく自然に生きられる世の中になればと思います」と述べた。
最後に、フライヤー代表取締役の大賀康史氏は「このコロナ禍の1年間でビジネスパーソンは、変わりゆく環境への対応力が求められました。難しい判断が続くなかで疲れ、確固たる本質を頼りにしたい、という思いが生まれたのではないか。ビジネス書籍のトレンドとして、普遍的なものに回帰する傾向が見受けられました。総合グランプリに輝いたのは、今も昔も変わらない経営の指針、生き方を示した作品でした」と分析。
そして「長期化するコロナ禍だからこそ、本は私たちを支えてくれる。本に携わる方々に、いままで以上に感謝する1年でした。ビジネス書籍のグランプリを勝ち抜いた本は、よりたくさんの人たちに感動を呼んだ本とも言えます。そうした受賞作を世の中に届ける使命を持てることを嬉しく思います。これからも最大限に力を尽くし、書籍を展開していきます」と締めくくった。