帝国データバンクは2月14日、2022年度の「賃金動向に関する企業の意識調査」の結果を発表した。調査は1月18日~31日、全国2万4,072社を対象に行われ、1万1,981社から有効回答を得た。
2022年度の企業の賃金動向について尋ねたところ、正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引上げ)が「ある」と見込む企業は54.6%となり、2年ぶりに5割を上回った。一方、「ない」と回答した企業は19.5%と前回調査(28.0%)から8.5ポイント低下した。
企業規模別にみると、「大企業」「中小企業」「小規模企業」の3規模全てで、賃金改善見込みの割合が前回調査から上昇。業界別では、『製造』(59.7%)が最も高く、次いで『建設』(57.2%)、『サービス』(54.0%)と続いた。
賃金改善の具体的な内容をみると、「ベースアップ」が46.4%(前年比10.5ポイント増)、「賞与(一時金)」が27.7%(同7.4ポイント増)とそれぞれ増加し、「ベースアップ」は調査開始以降で最高の水準となった。
賃金改善が「ある」と回答した企業に、その理由を尋ねたところ、人手不足などによる「労働力の定着・確保」(76.6%)が断トツに多く、企業からは、「建設労働者不足を解消するためにも賃金アップは必要不可欠」「高校生の新卒求人が難航している。求人基本給を上昇させるためにも現従業員の賃金底上げを計画している。それにともない社内賃率の改定を行っているが、なかなか客先で承諾してくれるところが少ない」といった声が。そのほか、「自社の業績拡大」(38.0%)、「物価動向」(21.8%)、「同業他社の賃金動向」(18.4%)、「最低賃金の改定」(17.9%)と続いた。
他方、賃金改善が「ない」企業の理由としては、「自社の業績低迷」が突出して多く64.7%。次いで、「同業他社の賃金動向」(17.6%)、「人的投資の増強」(15.5%)、「物価動向」(14.2%)と続き、賃金改善が「ある」「ない」ともに、「物価動向」を理由にあげる企業が2021年度見込みと比べ増加傾向にあることがわかった。
同社が2022年1月に実施した「原材料不足や高騰にともなう価格転嫁の実態調査」によると、原材料の不足や高騰の影響を受けている企業は77.3%。また、原材料価格の高騰に対して少なからず価格転嫁ができている企業は4割程度に留まっている。
そこで、価格転嫁の状況別に、賃上げの有無を確認したところ、「影響はあるが、価格転嫁は全てできている」(60.9%)や「8割程度できている」(65.7%)、「5割程度できている」(63.7%)など、5割以上の価格転嫁ができている企業においては、6割を超える企業で2022年度に賃改善があると見込んでいることが明らかに。
一方、「2割程度できている」(58.7%)や「価格転嫁は全くできていない」(51.8%)は5割台となり、価格転嫁が進んでいない企業では、進んでいる企業と比べて賃金改善が「ある」割合が低い傾向となった。
次に、2022年度の自社の総人件費が2021年度と比較してどの程度変動すると見込むかを尋ねたところ、「増加」を見込んでいる企業は67.1%と、2021年調査から12.9ポイント増と大幅に増加。「減少」すると見込む企業は8.7%(前年比7.0ポイント減)だった。その結果、総人件費の増加率は前年度から平均2.68%増加すると見込まれ、また、資本金1億円超の企業において、総人件費の増加率が3%以上とした企業は27.2%、資本金1億円以下の企業において、総人件費の増加幅が1%以上とした企業は67.7%となった。