渡辺王将は終盤のひと押しがなるか
渡辺明王将に藤井聡太竜王が挑戦中の将棋のタイトル戦、第71期ALSOK杯王将戦七番勝負(主催、毎日新聞社・スポーツニッポン新聞社)七番勝負第4局が2月11・12日(金・土)に東京都立川市の「SORANO HOTEL」で行われます。手番は決まっており、渡辺王将の先手番です。今期王将戦七番勝負はここまで、挑戦者の藤井竜王が3連勝しています。
■藤井竜王は充実も内容は紙一重
王将奪取・五冠達成まであと一歩となった藤井竜王。ここまで充実した戦いぶりを見せています。第1局は大熱戦になりましたが、最終盤、お互いが8時間の持ち時間を使い切ったタイミングで、優位に立っていた渡辺王将が玉を早逃げした手の効果が薄く、ここで体が入れ替わりました。最後は攻防の桂跳ねが決め手となり139手で藤井竜王が先勝しました。第2局は序盤早々に優位を築いた藤井竜王の完勝。第3局は渡辺王将が有望な局面の多い将棋でしたが、最終盤お互いに見落としていた筋があり、この錯覚が藤井竜王に幸いした形になって藤井竜王の3連勝となりました。
このように振り返ってみると、第2局こそ藤井竜王の完勝でしたが、第1局、第3局はどちらに転ぶかわからない大熱戦で、星の数ほどの開きは感じられない内容です。あと1勝を上げることが決して楽な戦いではないことは、藤井竜王自身が誰よりも実感していることでしょう。
対して後がない渡辺王将はまず一矢を報わねばどうにもなりません。王将戦七番勝負と並行して行われる棋王戦五番勝負では、永瀬拓矢王座を相手に白星スタートだったので、それもきっかけにしたいところです。第3局終了直後には自身のブログで「序中盤を乗り切ったとしても終盤でもうひと押しがないと勝てないので、それを目指して、次も精一杯やりたいと思います」と振り返っています。そのひと押しを第4局で見せることが出来るかどうか。
■3連敗後の4連勝は過去に2例
将棋界の七番勝負で、3連敗後に4連勝で逆転した例はわずか2例しかありません。しかしそのうちの1例が、渡辺明竜王(当時)が羽生善治名人(当時)の挑戦を退け、初の永世竜王に輝いた伝説的なシリーズ、第21期竜王戦です。
このシリーズでは第3局まで羽生名人のいいところばかりが目立ち、羽生永世竜王の誕生も間近と思われました。ところが第4局、大激戦の末、風前の灯と思われた渡辺玉が、打ち歩詰めの筋で奇跡的に逃れ、1勝を得ます。九死に一生を得た渡辺竜王はその後破竹の4連勝を果たし、将棋界初の3連敗後の4連勝、そして初の永世竜王の称号を獲得したのでした。
伝説の再現に向けても、まずは眼前の1勝が重要です。五冠達成なるか、反撃の始まりとなるか、王将戦第4局は11日に対局開始、対局終了は翌12日の午後以降になると見込まれます。
相崎修司(将棋情報局)