ダイエットに何度挑戦しても成功しない。一時的に体重が減っても、すぐにリバウンドしてしまう。もし、あなたがそうなら、自分の意志が弱いからだと考えてはいけない。すべては「脳のせい」だと加藤俊徳先生は言う。
必要なのは「肥満脳」を「ダイエット脳」に変えること。8つに分けられた「脳番地」を知り、そのうえで脳を敏感にすれば必ずダイエットは成功、リバウンド知らずの「やせ体質」も得られるのだ。具体的なやり方を加藤先生が実体験をもとにレクチャー。
■10キロも体重が増えた原因
──前回、教えて頂いたチャート(『「肥満脳」から「ダイエット脳」に変えるための「脳番地」とは?』参照)をもとに、どの脳番地が衰えているかを自己診断してみました。当てはまる項目が結構多く、いくつかの脳番地が衰えているんだと気づきました。
加藤 そうでしょう(笑)。また、その中で衰えの激しい脳番地が何処なのかにも気づかれたかと思います。まずは、その部分から脳を鍛えていけば、意外に早く「肥満脳」から「ダイエット脳」に変わります。
実は私も以前に、かなり太っていた時期がありました。身長は171センチなのですが、体重が83キロまで増えてしまったのです。38歳頃にアメリカで暮らしていた時のことです。
──では、それからかなりやせられたんですね。
加藤 はい。いまは68キロくらいですね。中学時代と、ほぼ同じ体重です。
大学時代は71、72キロ、医師になった30代前半の頃も72~73キロで推移していました。それがあろうことか、渡米して10キロも太ってしまったわけです。
ここからは、私の実体験を踏まえて「肥満脳」から「ダイエット脳」にいかに変えるか、衰えた脳番地をいかに正していくかを解説しましょう。
太ってしまった原因は、いくつかありました。
まず、家族が一時帰国し一人での生活になったこと。日常的な会話がなくなり口を動かす機会がめっきり減って、それを食べることに向けていたのです。これは<運動系脳番地>の衰えでしょう。
実感としてつくづく思うのですが、人間は寝ていても起きていてもカラダの何処かを動かしていないと落ち着かない。「ついクセで貧乏ゆすりをしてしまう」のも、その代表的な例です。カラダを動かしたい、でもそれができないとなると手軽に動かせるのは口だけ。そのため、ついつい食べてしまうのです。
当時は、それほどお金もありませんでしたから、安くて脂質の多い高カロリーのものばかりを食べていました。だから、あっという間にぽっちゃり体型になってしまったんです。
──そうだったんですね。
加藤 ほかにも問題点はありました。
体重が80キロ以上になってしまうと、それ以上増えても「太った」と感じなくなる、つまり自覚できないんです。ある程度の体重になってしまうと「やせたい」と思わずに「別にこのままでいいんじゃない」と考えてしまう。これは<理解的脳番地>が機能しなくなっている状態ですね。
また当時の自分にとっては研究が最優先事項であり、「太る」ことに注意が向いてもいませんでした。<思考系脳番地>が衰えていたんです。いまでは、「自分のことを振り返る時間を日常的に設ける」ことの大切さを理解していますが、当時は気づいていませんでした。
■我慢をせずにやせられた
──では、そのような状態からどのようにして「やせなければ」と思えたのでしょう?
加藤 気づけた背景は2つあります。
ひとつは、太ってくるとアイディアが欠乏し、イライラすることが多くなります。それを実感したからですね。
もうひとつは「カラダが重い」と感じる機会を得たこと。私はもともとスポーツが好きで、ある時からジョギングを始め走行距離を3キロ、5キロと伸ばしていったのですが、その過程でカラダの重さが邪魔になったんです。「やせなければ」と強く思いました。
──それでダイエットに取り組まれた。
加藤 そうです。でも、すぐにやせられたわけではありません。私も何度もダイエットに失敗しました。それでも、最終的に体重を落とし、現在もそのカラダを保てているのは、ダイエットを成功に導くのは「意志」ではなく習慣、つまり「脳」を変えることだと理解できたからです。
脳番地で言うと、私は<運動系脳番地><理解系脳番地><思考系脳番地>の3つが特に鈍化していたわけです。だから、そこを改善しました。
まず取り組んだのは、食事制限でも運動でもありません。睡眠の改善でした。研究室から家に戻った後、ついダラダラ過ごしていました。すると就寝時間が遅くなり4~5時間しか眠れません。そこを思い切って、夜9時半にベッドに入るようにしたんです。これで7時間以上眠れるようになり、睡眠不足が解消されました。
スッキリと目覚められると、思考がクリアになりイライラ感からドカ食いをすることもなくなりました。<思考系脳番地>を敏感にすることで、やせやすい環境を作れたのです。
──睡眠をしっかりととることで<思考系脳番地>が敏感になったと。
加藤 はい。
次にウォーキングを習慣にしました。朝スッキリと目覚めた後、1時間ほど外に出て歩くようにしたんです。これにより<運動系脳番地>もクリアになりました。
一日の運動量で消費した以上のカロリー量を体内に取り込まなければ、体重が落ちることは当然です。加えて、しっかりと眠って朝ウォーキングをする…この習慣が「基準」になったことにより<理解系脳番地>も刺激できたのです。体重を管理する習慣が身についていったんですね。
脳の変化を意識しダイエットを始めて、約6カ月で体重を8キロ落とすことができたんですよ。
──83キロあった体重が75キロまで落ちたと。
加藤 ええ。でも、それから忙しい時期が続き生活のリズムを乱してしまったこともあり、なかなか、それ以上は体重を落とせませんでした。ただそれから時間を経て「そんなに食べなくても人間は生きていける」「少し食べただけでも満足感が得られる」と考えられるようになってから、約10カ月で10キロのダイエットに成功したのです。
──合計18キロのダイエットに成功したわけですね。
加藤 この間、無理な食事制限はしていません。食べる量が減ったのは確かですが、それは「ダイエット脳」が、私にそうさせたに過ぎないのです。我慢は必要なく、ストレスを溜めることもありませんし、リバウンドも起こりません。
また、「ダイエット脳」になると、頭の中が研ぎ澄まされ思考もクリアになり、仕事やプライベートでのプラス効果も実感できます。もっと健康的で有意義な人生を送るためにも、ぜひ皆さんに「ダイエット脳」になることをお勧めします。
最後に、「肥満脳」時と、「ダイエット脳」になってからの私の1日の過ごし方を紹介しておきます。見比べて参考にして頂ければと思います。
文/近藤隆夫、監修/加藤俊徳