NTTは2月7日、2021年度第3四半期の決算説明会を実施。登壇した代表取締役社長 社長執行役員の澤田純氏は「対前年比で増収増益でした。営業収益、営業利益、当期利益、いずれも過去最高です」と報告しています。また決算発表後、記者団の質問に答えるかたちで5Gの展開方針、メタバースの取り組み、ドコモの障害、サーバー設置国の公表見送りなどについて言及しています。

  • 澤田純氏

    NTT 代表取締役社長 社長執行役員の澤田純氏(写真中央)。今回はNTT持株のみの会見となり、NTTドコモの会見は行われなかった

増収増益、過去最高益へ

2021年度第3四半期の営業収益は8兆9,232億円(前年同期比+1,852億円)、営業利益は1兆5,397億円(同+373億円)、当期利益は1兆303億円(同+1,992億円)でした。好調の要因として、営業収益についてはNTTデータの増収と為替の影響、営業利益についてはグループ各社の増収やコスト削減の努力があったと澤田社長。また、当期利益については「NTTドコモの完全子会社化による少数株主見合いの利益取り込みの影響がありました。民営化された1985年以来、初めての1兆円超えです」と話しました。

  • 2021年度第3四半期連結決算

    2021年度第3四半期、連結決算の状況

5Gの普及に対しては新周波数帯(NR)の5Gを本命視

澤田社長からの決算発表の後、メディアから寄せられた質問に引き続き澤田社長が回答しました。質疑の内容は一問一答形式でご紹介します。

――来年度の設備投資の規模感は。

計画はこれから練っていきます。5G投資を加速し、IOWN(アイオン)の研究開発も進めます。形としては増加傾向ですが、投資の効率化を図りながら実施していきたい。特に既存のネットワーク投資については、より効率性を高めます。

――通信料金について。値下げ施策は落ち着いたのか。

個人・企業にとって「通信は安くて使いやすくあるべき」というのは、常にあるニーズと考えています。料金、サービスの内容については、お客様に受け入れられるよう、これからも努力します。コスト削減も含めて頑張っていきたい。政府からは、国際的な通信料金と比較したうえで「値下げを加速してくれ」と言われてきましたが、これについては世界一の安さになりました。そういう意味では、一旦、競争は一息をついているのだろうと思います。ARPU(1ユーザーあたりの平均売上)を高める、コスト効率を上げる、サービスを増やす、そういう営みで次の投資を生んでいく努力を、事業者は継続的にするべきだろうと考えています。

――ahamoの契約者数は。

NTTドコモが開示していないのでお伝えできませんが、好調です。200万契約の真ん中くらいまで来ている。数字はご勘弁をいただきたい。

――エコノミーMVNOの手応えは。

色んな状況もあり、まだ世間の認知が不十分。昨年(2021年)12月くらいからプロモーションを入れており、これからどのくらい増えるか楽しみ。ドコモとしては増やしていきたい意向ですし、持株会社としては見守りたい。

――NTTデータが順調な理由は。

国内外ともに順調です。一般企業向けのところは、1件1件の案件は大きくなくても、利益率の良いDXに関するコンサルティングを求められている。これがどっと増えています。金融関係では昨年、大きな案件があった。来年もその傾向は続いていくと考えています。公共についてもDXを進めていますが、日本国内ではデジタル庁がどういう調達方針をとるか分からないので不透明なところもある。外国、例えばアメリカでは病院、ヘルスケアといった医療関係でDXが進んでおり、来年以降も案件が続いていくと思っています。

――総務省では23年度中に5Gの人口カバー率を9割にするという目標を掲げている。今後、どのくらいの設備投資をしていくか。

我々は“本当の5G”を体感できるサービスを重視していくべきと考えています。総務省が仰るのが、既存周波数帯の転用5Gなのか新周波数帯(NR)の5Gなのか、いまハッキリとしないんですが、他社では既存周波数帯の転用5Gを普及率と仰っている。4Gの電波を流用した、いわゆる“なんちゃって5G”です。お客様が5Gの本当の良さを感じるのは(4Gを利用しない)新周波数帯(NR)の5Gのサービスです。ドコモが普及率80%と言っているのは、新周波数帯(NR)の5Gのほう。ただ今後、総務省からの要請で既存周波数帯の転用5Gのエリアを拡大することになっても、設備投資費はそう大きくならないと考えています。

【修正のお知らせ】記者会見における澤田氏の発言に基づき、初出時は5Gのサービス展開について「ノンスタンドアローン」「スタンドアローン」を対比させる表現をしておりましたが、正確を期するためにそれぞれを「既存周波数帯の転用5G」「新周波数帯(NR)の5G」と修正いたしました。(2022年2月8日 13:00)

――5Gのサービスがスタートして2年が経つが、ユーザーがメリットが感じられるサービスはいつ実現するのか。

ビジネス向けには、IoT/高速接続/ローカル5Gといったことで、DXの分野などでメリットが出始めています。ただ一般消費者向けには、まずスマートフォン端末がスタンドアローン対応となり、周波数がミリ波に対応し、エリア内で良いサービスを受けられるようになり、メタバースにも対応する、そこまでいかないと5Gサービスのメリットは実感できないのでは。いま総務省のほうで5Gの普及率について既存周波数帯の転用5Gで議論しているようでは、ちょっとしんどい。つまり、もう少し時間はかかると考えています。

――総務省が進める「ブロードバンド基盤の在り方に関する研究会」についてどう見ているか。

ブロードバンドについては、総務省のほうで整備いただいているところ。ユニバーサルサービスの概念は、これまで電話以外にありませんでしたが、これを拡張してブロードバンドにも適用できるようにしていけたら。NTTでも補助をいただいたりして、頑張って整備していきたい。総務省のブロードバンド整備は、現状を踏まえた、非常に賛同できる政策だと感じています。

「homeでんわ」はNTT東西と競合するのではなく、NTTグループとして“取り返す”もの

――NTTドコモの障害について。

先般、2月1日に障害を起こしてしまい、1万8,000人ほどのお客様にご迷惑をおかけしました。新しい機材に換えるときのサーバー設計、容量設計、トラフィック設計が十分でなかった。前回(2021年10月)の障害は、パートナーのサーバーシステムを含めての不具合でしたが、今回はIPv6の新しいアドレスを読み取るサーバーの容量が足りなかった。端末とサーバーのやりとりが遅延した場合、端末からの情報をカットする機能などが入っており、そこでご迷惑をおかけすることになりました。容量を多めに用意するだけでなく、より深いところでネットワークの設計、過大なパケットが来たときにどの装置がどう動作するかなど、基本的なところをイチから考え直してほしいと思っています。再度、障害を起こさないよう、ご迷惑をかけないように深い対策をとってもらいたいと考えています。

――「homeでんわ」は、NTT東西と競合するサービスでは。ラストワンマイルを無線に置き換えていく考えは。

(「homeでんわ」は)固定電話とモバイルをセットで契約できるサービスです。すでに他社はやっているので、NTT東西としては、どんどん顧客を取られている状況。そこにドコモが入る。NTTグループとしては、取り返す構造になります。ようやくスタートラインに立てます。ドコモを完全子会社化した後にやる、と言っていた融合サービスのひとつです。ラストワンマイルを無線でという考え方ですが、利便性、コストから考えると、無線が多くなる時代が来ると考えています。

  • homeでんわについて

    homeでんわについて

――世界の通信分野では、メタバースビジネスの動きが活性化している。NTTの動向は。

私たちも、数年前からデジタルツインコンピューティングという言い方で取り組んでいました。世の中にはセカンドライフという言い方もあった。メタバースはバズワードになりました。私たちは、一昨年から「DOOR」(NTTが提供するXR空間プラットフォーム)を用意しています。これはXRを取り入れたサービスで、メタバースを意識した動きです。次のステップに向けて基盤をつくっていこう、ということ。XRの切り口から、仮想空間の世界を検討していきます。長期的には、法律の整備もまだまだ必要ですし、現実感の強いコンテンツにしていくにはとんでもないデータ量が必要にもなる。そのためにIOWNを構想しています。エネルギーの面でも情報処理能力の面でも、IOWNのような世界を通じて実現されていくのでは。つまり、現状対応しながら将来をにらんでいく、ということです。

――総務省の「電気通信事業ガバナンス検討会」では、サーバー設置国の公表は見送られることになったが、受け止めは。

事業者は、お客様の不安を取り除くことが第一です。サーバーは自分がハンドリングできる自国に置くことが正しい議論ではないか。まあ、考え方が同じ同盟国、信頼のおける国……その定義はまだ不明確ですが、そこまでなら拡張はできる。でも「どこにあっても良いじゃないか」「サーバーがどの国にあるか言いたくない」というのは、私は事業者として、スタンスがちょっとおかしいんではないかと思います。総務省のガバナンスに関する検討会については、他国の状況に遅れることなく、きちっとした対応を是非、進めていただきたいと考えています。

――キャリアメールの持ち運びサービスについて。利用者数はどのくらいか。

競争促進のためということで、各社とも「やろう」と取り組みました。それにより、どっとポートイン/ポートアウトが増えたかというと、それほど変化はないんじゃないか。毎日、SNSなどを通じてドコモのサービスについてお客様の反応を見ていますが、キャリアメールの持ち運びができるようになって良かった、という人も散見されますが、その量は多くない印象です。

決算内容はWebサイトで公開。会見の模様も配信の予定

この日発表された四半期決算の内容は、NTTのWebサイトに公開されています。また、説明会の模様も準備が整いしだいオンデマンド配信を行うとのことです。