入玉した永瀬玉を捕まえる
渡辺明棋王へ永瀬拓矢王座が挑戦する第47期棋王戦五番勝負(主催、共同通信社)の第1局が、2月6日に静岡県焼津市の「焼津グランドホテル」で行われました。結果は140手で渡辺棋王が勝利し、五番勝負の成績を1勝0敗としました。
■千日手打開のアヤ
永瀬王座が渡辺棋王に挑戦するのは4期ぶり、他のタイトル戦では昨年の王将戦七番勝負で当たって以来、1年ぶりとなります。本局は永瀬王座の先手番で、後手の渡辺棋王が雁木に組みました。序盤早々に永瀬王座が▲4六角と後手の飛車に狙いをつけ、まずはこの斜めのラインを巡っての戦いとなります。中盤の入り口では千日手の順も現れましたが、永瀬王座は後手の飛車の利きが素通しになることを覚悟の上で、果敢な打開順を選びます。
しかし、この結果として渡辺棋王に△2七銀という打ち込みが生じました。▲同飛と取れる形ですが、それは△8八飛成と金を取られてそれまで。飛車の利きが直通しているのはやはり大きかったようです。永瀬王座は▲7八飛とかわして辛抱しますが、△3六銀成~△3七成銀と角銀交換に成功した渡辺王座が優位に立ちます。
■入玉をめぐる攻防
ところがこの直後、第一感としては受けに回りたくなる局面で、永瀬王座が果敢に攻め合いに出たのがいい判断となり、形勢は混沌としていきます。先手玉は金銀四枚の空中要塞にもぐりこみ、さらに入玉を目指します。
渡辺棋王は直前の対局でも入玉されての敗戦を喫していました。ですが本局は△6四桂▲6五玉△8七桂成▲6七金に△7三歩で、先手が無条件で入玉するのは難しくなりました。先手玉の周囲にある後手の駒は小駒ばかりですが、うまい具合に配置されています。以下先手も入玉こそ実現しましたが、最後は先手玉を即詰みに打ち取り、開幕局は渡辺棋王が制しました。「数日前に入玉されたので、嫌なイメージばかり浮かんできましたが、なんとか捕まえられて良かったです」とは終局直後に更新された渡辺棋王のツイッターの一文です。
渡辺棋王が10連覇へ向けて好スタート。対して永瀬王座はどのような挽回手段を見せるか。2月19日に行われる第2局からも目が離せません。
相崎修司(将棋情報局)