マンションの老朽化や居住者の高齢化などによって、マンションが管理不全に陥る問題は、今後増えていくことが予想されます。こうした問題に取り組むために、「マンション管理計画認定制度」が創設され、2022年4月から施行されます。この制度によって、マンション管理がどのように変わるのか、マンション所有者の立場から知っておきたい制度の概要とメリットをお伝えします。
マンション管理計画認定制度とは
昨年6月に「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」が改正されました。その中の目玉である「マンション管理計画認定制度」は2022年4月から施行されます。
マンション管理計画認定制度とは、マンション管理組合の申請により、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、適切な管理計画を持つマンションとして自治体から認定を受けることができる制度です。
認定を受けることができるのは、自治体が「マンション管理適正化推進計画」を作成している地域にあるマンションです。
マンション管理適正化推進計画とは、マンションの管理の適正化の推進を図るために、国が策定した基本的な方針に基づき、地方公共団体が作成する推進計画のことです。地方公共団体は国のマンション管理適正化指針に加えて、都道府県等の地域性を踏まえた独自の指針を定めることも可能です。これによって、地域のマンションの立地状況や政策の方向性に合わせて、独自の助言・指導又は勧告や、管理計画の認定に係る基準を設けることができるようになります。
認定を受けたいマンションの管理組合は、管理規約や長期修繕計画、総会議事録等をまとめた管理計画を地方公共団体に提出して認定の申請をします。地方公共団体は認定基準を満たしているかを判断し、満たしていれば、適切な管理計画を持つマンションとして認定します。認定は5年ごとに更新をする必要があります。
管理計画の認定の基準
認定を受けるためには、以下の認定基準を満たしている必要があります。
1.管理組合の運営
(1)管理者等が定められていること
(2)監事が選任されていること
(3)集会が年1回以上開催されていること
2.管理規約
(1)管理規約が作成されていること
(2)マンションの適切な管理のため、管理規約において災害等の緊急時や管理上必要なときの専有部の立ち入り、修繕等の履歴情報の管理等について定められていること
(3)マンションの管理状況に係る情報取得の円滑化のため、管理規約において、管理組合の財務・管理に関する情報の書面の交付(または電磁的方法による提供)について定められていること
3.管理組合の経理
(1)管理費及び修繕積立金等について明確に区分して経理が行われていること
(2)修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと
(3)直前の事業年度の終了の日時点における修繕積立金の3ヶ月以上の滞納額が全体の
1割以内であること
4.長期修繕計画の作成及び見直し等
(1)長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠し作成され、長期修繕計画の内容及び
これに基づき算定された修繕積立金額について集会にて決議されていること
(2)長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われていること
(3)長期修繕計画の実効性を確保するため、計画期間が30年以上で、かつ、
残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれるように設定されていること
(4)長期修繕計画において将来の一時的な修繕積立金の徴収を予定していないこと
(5)長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと
(6)長期修繕計画の計画期間の最終年度において、借入金の残高のない長期修繕計画となっていること
5.その他
(1)管理組合がマンションの区分所有者等への平常時における連絡に加え、災害等の緊急時に迅速な対応を行うため、組合員名簿、居住者名簿を備えているとともに、1年に1回以上は内容の確認を行っていること
(2)都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること
出典:マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針(令和3年9月28日 国土交通省告示第1286号)
認定を取得することのメリット
認定を取得することで、次の効果が期待できます。
・区分所有者の管理への意識が高く保たれ、管理水準を維持・向上しやすくなる。
・適正に管理されたマンションとして、市場において評価される。
・適正に管理されたマンションが存在することで、立地している地域価値の維持・向上につながる。
・住宅金融支援機構の【フラット35】及びマンション共用部分リフォーム融資の金利の引下げ等が検討されている。(令和3年11月末日時点)
マンション所有者のメリット
マンション所有者にとっては、住んでいるマンションの価値が上がることで、売却時に高く売れる可能性がある他、良質な管理水準が維持されることで、そのマンションのみならず、周辺地域の居住環境の向上につながり、地域価値が上がることも期待できます。
これからマンションの購入を考えている人にとっても、中古マンションを買う際の明確な判断基準となります。これまで、マンションの管理状態はなかなか見えにくい部分だったものが、認定を受けたマンションというお墨付きがあることで、管理面での心配が払拭できます。さらに、フラット35などの金利の引下げも検討されていることから、資金面でのメリットもあるかもしれません。
「マンションは管理を買え」とはよく言われてきたことです。「マンションを買うなら、管理がしっかりしたマンションを買いましょう」という意味ですが、管理の状況は実際に住んでみないと細かい部分までは分からないものです。今回のマンション管理計画認定制度の施行により、管理状態を客観的に判断する基準ができたことで、購入者は適正に管理されたマンションを容易に選択することができるようになります。中古マンションの価値に占める「管理」の比重が大きくなることで、適正に管理されたマンションが増えることを期待したいと思います。