全勝で2期連続の舞台へ
2月4日に東京・大阪の将棋会館で一斉に行われた、第80期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)の8回戦。渡辺明名人への挑戦権を争い、以下の対局が行われました。
▲斎藤慎太郎八段(7勝0敗・1位)-△豊島 将之九段(4勝3敗・2位)
▲佐藤 天彦九段(4勝3敗・7位)-△糸谷 哲郎八段(5勝2敗・4位)
▲山崎 隆之八段(1勝6敗・10位)-△広瀬 章人八段(3勝4敗・3位)
▲菅井 竜也八段(3勝4敗・5位)-△佐藤 康光九段(3勝4敗・6位)
▲羽生 善治九段(2勝5敗・8位)-△永瀬 拓矢王座(3勝4敗・9位)
斎藤八段はここまで7勝0敗と首位を走ります。本局に勝利すれば挑戦が確定。もし敗れても唯一の2敗である糸谷八段が敗れれば挑戦が確定するという圧倒的に有利な状況です。
▲斎藤八段-△豊島九段戦は、角換わりとなりました。細かな間合いの取り合いを経て、後手の豊島九段が決然と仕掛け、豊島九段の攻めを斎藤八段がどうやってしのぐかという展開になりました。
■糸谷八段が敗れ、斎藤八段の挑戦が決定
一方、2敗で追う糸谷八段は佐藤天彦九段と対戦。相居飛車の力戦型に進みました。焦点は中段に窮屈そうに並んだ先手佐藤九段の飛車と角。糸谷八段は2枚の銀でこの飛車と角を圧迫しにかかりました。しかし△6五銀と角取りに銀が出たタイミングで▲4三歩成の成り捨てがピッタリの反撃。△同歩に▲2二角成と狙われていた角をさばくことに成功し、佐藤九段が優位に立ちました。その後も緩みなく攻めて113手までで佐藤九段が勝ちました。この時点で斎藤八段の挑戦が決まりました。
とはいえ、対局中の斎藤八段は、自身の挑戦が決まったことを知る由もありません。対局が終わるまでは他の対局の状況を伝えないのが将棋界の暗黙のルールです。
■深夜の逆転劇
斎藤-豊島戦は、豊島九段の攻めがますます苛烈さを増し、斎藤八段も攻めをあえて呼び込むような強気の受けを連発。見ごたえのある攻防が続きましたが、徐々に豊島九段の攻めが斎藤陣の急所を捕らえはじめます。斎藤玉は風前の灯というところまで追い詰められましたが、その間に2枚の桂で斎藤八段も反撃の形を作ります。いかにも危なそうな局面で、どうぞ決めてくださいと下駄を預けたのが一流の勝負術でした。
豊島九段は大量の持ち駒を頼りに詰ましに行きましたが、わずかに詰みません。ここで体が入れ替わりました。以下151手で斎藤八段が勝ち、挑戦に華を添えました。終局は翌5日の1時を回る大熱戦でした。
また、降級争いは2勝5敗の羽生九段が永瀬王座に敗れ、29年続いた連続A級在位記録が途絶え、B級1組への降級が決定しました。
大石祐輝(将棋情報局)