パソコン代わりにiPadを仕事のメインマシンとして使おうとしたとき、最初に多くの人を悩ませるのが製品選びでしょう。数あるiPadの中からどのモデルを選ぶのか? このたび筆者もiPadを新調するにあたり、迷いに迷いました。そこで今回はiPadの現在のラインアップを確認しながら、これからiPadの購入を考えている人にとって参考となるように、なぜ筆者は「iPad Pro 11インチ」を選んだかについてお伝えしていきたいと思います。

一番の候補は無印iPad

iPadを購入しようとしたとき、まず参考にするのはAppleの公式サイトです。現在のiPadのラインナップを見てみると、「iPad Pro」「iPad Air」「iPad」「iPad mini」という4つのモデルが存在します。iPad Proには11インチと12.9インチがありますので、実際は5つのモデルといったほうがいいかもしれません。

価格順に並べると、スタンダードモデルのiPadが3万9,800円、iPad miniが5万9,800円、iPad Airが6万9,080円、iPad Pro 11インチが9万4,800円、iPad Pro 12.9インチが12万9,800円です(すべてWi-Fiモデル)。

この中から真っ先に候補に挙がるのは、金に糸目をつけないという人を除き、もっとも安価なiPadでしょう。最新のiPadは2021年9月に発売開始されたばかりの第9世代。チップは2019年秋に発売されたiPhone 11シリーズと同じ「A13 Bionic」なので性能はほかのiPadシリーズと比べると落ちるものの、プロの業務用途ではなく、一般的なビジネス用途&仕事用途に使ううえでは十分でしょう。

ちなみに、筆者の場合のiPadの主な使用用途は「パソコン代わり」に、文書作成、資料確認&校正、WEBブラウズ、メール&SNS、ビデオ通話、動画視聴、写真編集、スケッチといったごく一般的なこと。無印のiPadでも十分にこれらの作業はこなせます。

  • 現在ラインアップされているiPadのモデルは4モデル。画面サイズで分けるとiPad Proが11インチと12.9インチの2モデルがあるので、計5モデルから製品選びをすることになります

  • 中でももっともスタンダードなのがiPadです。2021年9月にリリースされた第9世代ではA13 Bionicチップの搭載と、センターフレームへ対応した12MPのフロントカメラ、True Toneディスプレイのサポートにより、前世代から進化しています

iPadで足りないところ

では、なぜiPadを購入しなかったのか。筆者の場合は、以下の4つが大きな理由でした。
1)第2世代のApple Pencilに対応していない
2)ポートが依然としてLightningのままである
3)生体認証がFace IDではなく、Touch IDである
4)Smart Keyboardにしか対応していない
1)に関しては、第1世代と第2世代のApple Pencilを比較する別の記事で詳しく取り上げたいと思いますが、PDFに手書きで校正したり、ラフスケッチを描いたりするときにどうしても第1世代は使い勝手が悪いのです。具体的には第1世代だとLightningポートに挿し込んで充電しなければならないという手間があることから使いたいときにApple Pencilが充電されていないことが多かったり、形状が丸いのですぐに転がって床に落ちてしまったりするのが大きなネックです。

また、2)に関しては、USBメモリや電源アダプタなどを利用するとき、Lightningのままだと、Macなどで利用しているUSB-C対応の周辺機器やアクセサリを使い回すことができない。3)に関してはiPadを机の上に置いてパソコン代わりに使う際、いちいちホームボタンにタッチしてロックを解除するのが面倒。4)に関しては、文書作成の際などできればトラックパッドを搭載したMagic Keyboardを使えたほうが快適、といった理由からiPadはパスせざるを得なかったのです。

さらに、iPadは2〜3年以上は買い替えたくはなかったため、ほかのiPadと比べて見劣りする以下の点を踏まえると、もう少しお金を出して上位のモデルを購入したほうが長期的には満足すると考えました。
5)ベゼルが太く、表示領域が狭めの旧世代のデザイン
6)背面カメラが8MPである(そのほかのiPadシリーズは12MP)
7)Wi-Fiが11acまでにしか対応していない
8)ディスプレイがP3、フルラミネーション、反射防止コーティングに非対応
もちろんiPadは毎年のように新しいモデルが出るので、今後のモデルでは上記の点にいくつか改良が図られるでしょう。現時点でこうした点が気にならなかったり、iPadを1〜2年で買い換えるつもりであったり、とりあえず「初めてのiPad」として購入したりするのであれば、iPadも十分ありでしょうが、少なくとも筆者の場合はスルーせざるを得ませんでした。

  • 第1世代のApple Pencilの弱点はその形状。丸い円柱のボディなので使っていると頻繁に机から転がって床に落ちてしまいます

  • 第1世代Apple PencilはLightningコネクタに挿して充電しなければならないのに対して、第2世代はiPad Pro右側面にある磁気コネクタにマグネットで取り付けられ、充電できます。使いたいときにバッテリ切れしていることがありません

  • USB-Cの周辺機器やアクセサリが主流となる中、Lightningではパソコンで使っていたものなどを使い回せません。今後iPadをパソコン代わりとして使ううええではUSB-Cがベターでしょう

  • iPadで利用できるキーボードは、Smart Keyboardのみ。iPad AirやiPad Proで利用可能なMagic KeyboardとSmart Keyboard Folioが使えません

iPad miniは素晴らしいデバイスだが…

そうなると選択肢として残るのは、iPad miniとiPad Air、iPad Proになりますが、このうちiPad miniは筆者がiPadでNGとした条件をたいていクリアするものの、8.3インチという画面の小ささから購入には至りませんでした。やはり、日常的にメインマシンとしてパソコン代わりに使うには、さまざまな作業を行ううえで大きな画面のほうが作業がしやすいからです。

ただ、最新のiPad miniはiPad同様に2021年秋に出たばかりのモデル。iPadの廉価版では決してなく、"mini"というののはサイズだけで、一部のスペックはiPad Airもしのぐほど大幅に進化しています。また、小さいがゆえに「手軽に持ち運べる」というのが他にはない大きなメリット。毎日卓上でちょっとしか使わない、持ち運んで仕事することが多い、文章作成の際はBleutoothキーボードで構わない人や、仕事以外にもたとえば車やキッチン、ベッドサイド、お風呂などで特定の用途に活用したい人にとっては、もっとも万能でもっとも使えるデバイスかもしれません。ほかのiPadだと、どうしてもそのサイズゆえに、卓上に置いたままになりがちですからね。もう1台iPadを購入するなら、断然iPad miniです。

  • 最新の第6世代のiPad miniは第5世代から飛躍的に進化しています。その小ささゆえにさまざまな用途に手軽に活用できるメリットはありますが、卓上でパソコン代わりに長く使う用途には画面の小ささもあり、あまり向いていないでしょう

iPad Proか、それともAirか?

さて、筆者の場合はこうしてiPad ProとiPad Airのどちらかで最後は悩むことになり、最終的にはiPad Pro 11インチ(第3世代)を購入しました。iPad Proと比べた際のiPad Airの違いは以下の点です。
1)チップがA14 Bionic(iPad ProはM1)
2)Touch ID(iPad ProはFace ID)
3)2スピーカ(iPad Proは4スピーカ)
4)フロントカメラが7MP(iPad Proは12MP)
5)背面カメラは12MP広角のみ(iPad Proは12MP広角と10MP超広角)
6)センターフレーム非対応などカメラのスペックがやや古い
7)ディスプレイがProMotionに非対応
8)LiDARスキャナ非搭載
9)Thunderbolt/USB4非対応
iPad AirとiPad Pro 11インチの価格差は、もっとも安価な64GBモデルのiPad Airが6万9,080円、もっとも安価な128GBのiPad Pro 11インチが9万4,800円なので約2万5,000円。この価格差に対して、上記の差がどう映るかは人によって大きく異なるでしょう。iPad Proのほうが最新のM1チップかつストレージ2倍なのでそれだけでも価格差に見合うと考える人もいれば、1)〜9)の点はすべてオーバースペックで必要なく、2万5,000円の価値はないと考える人もいるはずです。

筆者の場合は、特にFace IDであることとセンターフレーム対応(あまり使わないかもしれないが)に重きを置き、かつそれ以外のスペックが全体的に良いことを踏まえるとiPad Pro 11インチにしたほうが安全かな、という判断のもとプラス約2万5,000円の出費を決意しました。とはいえ、購入後はiPad Airでもよかったなぁと思うこともあり、このあたりの判断は本当に難しいところです。

ちなみに、iPad Proの12.9インチの価格はもっとも安価な128GBモデルで12万9,800円なので、iPad Airと比べて約6万円の差となります。iPad Pro 11インチと12.9インチのスペックはディスプレイサイズ以外は共通なので、筆者の場合は大画面に魅力を感じつつも、さすがに6万円の価格差は大き過ぎると判断し、12.9インチはパスしました。

  • 現行のiPad Airは2020年10月に発売されたモデル。Face IDやセンターフレームに非対応など、世代的に古い点があります。iPadシリーズの中でもっとも早く最新モデルが今後リリースされそうです

iPad Pro 11インチには大満足

こうして筆者の場合は、久しぶりに新しいiPadとしてiPad Pro 11インチ(第3世代)を手にしたわけです。カラーはシルバー、ストレージは128GB(ほかにも、256GB、512GB、1TB、2TBが選択可)、Wi-Fiモデル(Wi-Fi+セルラーモデルはプラス1万8,000円)で価格は9万4,800円。これに、第2世代のApple Pencil (1万5,950円)、Magic Keyboard(3万4,980円)を加えて、トータル14万5,730円です。iPad本体は10万円を切る価格でも、このようにアクセサリを足していくと、その価格はゆうにMacBook Air(11万5,280円〜)を超えてしまいましたので、それに見合うアウトプットをこのiPad Proには出してもらわないとなりません。

すでに購入してから1週間ほど経ちますが、今のところはパソコン代わりのメインマシンとして十二分の活躍をしてくれており、大変満足しています。特に驚かされたのは、やはりM1チップ。M1搭載のMacBook Airと同レベルで、何をやるにしてもこれまで以上にスピーディです(M1のMacBook Airとの処理速度の比較は今後別の記事で紹介します)。また、Magic Keyboardや第2世代のApple Pencilの使い勝手も非常に抜群です。これからは、このiPad Pro 11インチをベースに本連載の記事も執筆していきますので、どうぞご期待ください。

  • iPad Pro 11インチに加え、第二世代のApple Pencil、Magic Keyboardをあわせて購入。Apple Care+(1万6,280円)は資金的な問題でつけられませんでした(正直ここまでの金額を出したら、Apple Care+は無料にしてほしいところです)

  • iPad Pro 11インチをM1のMacBook Air(13インチ)と並べて。画面が一回り二回り小さいので、人によってはiPad Pro 12.9インチのほうがいいと感じる人もいるかもしれません。プラス6万円が許されるのであれば、ですが