『グランツーリスモ7(GT7)』の発売に先立ち、2022年1月31日から2月1日にデジタルメディアイベントが開催された。イベントでは、「グランツーリスモ」シリーズのプロデューサーである山内一典氏が、『GT7』のゲームプレイ映像とともに機能などを紹介。25周年を迎えるシリーズの最新作はどのように進化したのか。また、PlayStation 5(PS5)ではどのような体験ができるのか。イベントで語られたタイトルの情報をお伝えする。
PS5版では、路面の微妙な凹凸のわずかな振動まで表現
『GT7』は、PS5 / PS4それぞれに向けて、2022年3月4日に発売されるカーシミュレーションゲーム。テーマは「車の魅力と文化を新しい世代に伝えること」で、山内氏はイベントの冒頭に「前提となる知識がまったくなくても、車の魅力に目覚めて、コントロールする喜び、所有する喜び、チューニングする喜びを伝えることが『GT7』の目標」だと語る。
『GT7』の新機能のなかでも特に気になるのは、PS5版での体験だろう。まず、グラフィックのモードについて、PS5版では2つのグラフィックスモードが選べるようになっている。1つは、レース中リプレイ中を問わず、可能な限り高いフレームレート(レース中の基準は秒間60フレーム)でプレイできる「フレームレート優先モード」。もう1つは「レイトレーシングモード」だ。
「レイトレーシング」は、ゲーム内の物体に対して、現実と同様の光の動きを再現すること。レースのリプレイや3Dのステージ、あるいはフォトモードのレンダリングなど、プレイヤーに対して素早いレスポンスが必要ないモードでレイトレーシングを行う。
『GT7』には、時間や天候の変化といった要素も搭載されており、同じコースでもさまざまな顔を見せる。朝から夜までの時間変化はすべてのコースに搭載されているが、夜から朝までの変化は一部のコースのみ対応。また、晴れから曇りへの天候変化はすべてのコースで導入されているものの、雨が降るトラックは限定的だという。
時間や天候の変化について山内氏は、「単なるビジュアルのみにとどまらず、フィジックスのシミュレーションと相互作用するようにしたんです。たとえば、路面の温度が下がってきたり、濡れてきたりしたときに、走行する車とフィジックスに連動させるようにしたことが、我々にとって大きなチャレンジでした」と説明する。ちなみに、夜の星空の再現にあたっては、NASAが公開しているデータを使用。天文学的なシミュレーションを行い、星の位置などをレンダリングしている。
また、PS5版では、3Dオーディオにも対応。3次アンビソニックスと呼ばれる3D音響表現手法を使用してエンコードしたあと、PS5がそれをプレイヤーのニーズに応じてマルチスピーカーに出力したり、2チャンネルのヘッドホンにバイノーラルで出力したりする。
具体的には、レース中に周囲の車が発する音や、コース上空を飛行するヘリコプターの音、雨がルーフを叩く音、ウィンドウにぶつかる音、タイヤが縁石を踏む音などが、それぞれの方向から立体的に伝わる。さらに、『GT7』では、反射して聞こえる音まで表現。フェンスに当たって跳ね返ってくる音やコンクリートに当たって跳ね返ってくる音など、材質の違いによって変わる反射音まで再現するというのだから驚きだ。
PS5の「DualSense ワイヤレスコントローラー」でも、ハプティックフィードバックやアダプティブトリガーといった機能による新たな体験を味わえる。
ハプティックフィードバックでは、路面の微妙な凹凸からやってくるかすかなフィードバックや、縁石に乗ったときにやってくる大きなフィードバックなど、サウンドでは表現しきれないフィードバックをプレイヤーに伝え、アダプティブトリガーでは、車ごとのブレーキの重さの違いなどを表現した。3Dオーディオや細かいフィードバックなど、これらの小さなリアリティの追求の積み重ねが高い没入感につながっているのだという。
このように、PS5版ではさまざまな体験を得られるが、なかでも、大きな影響があったのはローディングスピードだと山内氏は考える。
「レースゲームはワールドのデータをすべて読み込んでからレースがスタートします。そのため、巨大なデータをメモリ上に持ってくる必要があるのですが、PS5で行えば数秒程度で完了するものが、PS4で行った場合より時間がかかる。プレイ体験としてものすごく大きいと思います」(山内氏)
豊富な楽曲を楽しむためのモードも追加
『GT7』で用意されている車は400台以上。車を買う場所は2001年以降の新車を取り扱う「Brand Central」、リーズナブルな中古車ショップ「Used Car Dealer」、100年経っても色あせないような歴史的な名車が並ぶ「Legendary Car Dealer」の3カ所だ。
コースでは、34を超えるロケーションと90を超えるレイアウトを収録する。実在するコースと、架空のコースを用意しており、ゲームでは、「World Circuits」からそれぞれのコースにアクセスする。以前のシリーズと『GT7』が異なる点は、レースやアクティビティがそれぞれのコースごとに開催されている点だ。サンデーカップやクラブマンカップも各コースごとに開催。コースを学ぶためのサーキットエクスペリエンスも、それぞれのコースごとに用意する。
また『GT7』でも注力されているのが楽曲。過去最高となる75アーティスト300曲以上の音楽を収録しており、ロックはもちろん、クラシック、ジャズ、ヒップホップ、エレクトロ、ラウンジミュージックなどジャンルも幅広い。
これについて、「シリーズでは常に楽曲の豊富さを大切にしてきた」と語る山内氏。「レース中やリプレイ中だけでなく、さまざまなメニューでも、いろいろな音楽が聴けますので、ぜひそれを楽しんでいただきたいと思います」と伝える。
その豊富な音楽をより楽しめるよう、『GT7』では、音楽に合わせて自動的にリプレイカメラが生成される「ミュージックリプレイ」を開発。これまでのリプレイは、コースという空間にあらかじめリプレイカメラを設置し、そのカメラが走る車を追いかける構造だった。しかし、ミュージックリプレイでは、音楽という時間に対してカメラを生成し、リプレイを作成する。
山内氏は「映画は時間の芸術ですね。ミュージックリプレイは、言ってみればその技法をレースのリプレイで実現するテクノロジー。これは『GT7』における大きな発明の1つと言ってもいいのではないかと思っています」と自信をのぞかせる。
さらに、音楽を楽しみながらドライブを楽しむモードも搭載した。それが「MusicRally(ミュージックラリー)」だ。
ミュージックラリーは、速く走るのではなく、音楽を最後まで聴くことがクリア条件のモード。プレイヤーは一定の「ビート数」を持ってレースをスタートする。ビートは、走行中、時間が経つごとに徐々に減っていき、ビートがゼロになったら音楽が止まってゲームオーバー。コース上に設けられたエクステンドゲートをくぐればビートを加算できるので、持ちビートを増やしながらコースを走る。最後まで曲を聴ければゲームクリアだ。
「音楽に関してちょっとした悩みがありました。レース中にBGMを聴きたいけれど、エンジンやタイヤのスキール音が聞こえないので、運転に集中したいときには、BGMをオフにする必要があったんですね。また、多くのプレイヤーから、美しい景観、景色のなかで、音楽を流しながらリラックスしてドライブしたいという要望もありました」と山内氏。今回のミュージックラリーは、そのようなニーズに対する回答でもあるという。
そのうえで、「もちろん、上手なプレイヤーはビートを余らせてゴールできるでしょう。なので、走行中にドリフトを入れてもいいと思います。それをミュージックリプレイで再生して楽しむ。そういった遊びかたもできると思います」と、多様な遊びかたができることを示した。
『GT7』の世界を1つずつ理解していく「カフェ」モード
新たなモード「グランツーリスモカフェ」も登場する。『GT7』は、車をとことん楽しむためのカーライフシミュレーター。搭載されている機能はあまりにも膨大で、プレイヤーがその世界のすべてを理解するには相応の時間が必要だろう。
その課題を解決するモードが「カフェ」だ。カフェは、さまざまなクエストをメニューブックという形で受け取り、それをクリアしていくことで、『GT7』の広大な世界への理解が深まるようにデザインされている。
さらに、メニューブックをクリアするごとに、関係する自動車の文化などについて、カフェのマスターから話が聞けるほか、プレイヤーが乗ってる車のデザインナー本人が登場して、その車についての思い出を語ってくれることもあるという。
「カフェは、システムを理解するまでの道しるべとして機能します。それぞれの難易度はそこまで高くないんですが、メニューブックを順番にやっていくことで、『GT7』の世界で何ができるのか理解できるようになるでしょう」(山内氏)
カフェには30以上のクエストが用意されており、すべてクリアすると、キャンペーンモードにおける一応のエンディングを迎える。だがこれは「終わることのないカーライフの始まりでもある」と山内氏は語った。
また、『GT7』ではチューニングやカスタマイズが復活。当然それらをセットアップするセッティングが重要になってくる。マシンセッティングの画面では、左側に車のパフォーマンスを表す指標が並び、右側に膨大なセッティング項目が並ぶ。
車のパフォーマンスを表す数値も進化。以前は簡単な式で計算していたパフォーマンスポイントがシミュレーションベースになり、自動車物理エンジンがパフォーマンスを導くようになった。ほぼリアルタイムで行われるので、プレイヤーがセッティング画面でパーツを交換したり、スライダーを調整したりしたあとに赤い計測ボタンを押すだけで、すぐに車のパフォーマンスがどう変化したのか数字で確認できる。
セッティング画面は山内氏のお気に入りでもあり、「ここで試行錯誤して、セッティングシートに保存したり、あるいは実際にコースに車を持っていって成果を確認したりと、そういったルーティーンがおそらく『GT7』の楽しい遊びかたの1つになるだろうと思っています」とアピールした。
そのほか、プレイヤー自身が作ったコンテンツを保存したり、ほかのプレイヤーに向けて共有したり、ほかのプレイヤーが作ったコンテンツ作品を探してダウンロードしたりできる「ショーケース」も用意するという。
なお、『GT7』は、基本的にオンラインに接続した状態で遊ぶタイトル。これについて「オンラインで遊ぶモードが多いことに加えて、セーブデータのチート対策としてオンライン側にデータがないと防げないので、そのための仕様です」と山内氏は説明した。
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