三菱自動車工業の新型「アウトランダー」は、先代に比べ大幅にパワーアップしたPHEVシステムが魅力だ。回生(減速)の強さは6段階で調整可能で、センターコンソールのボタンを押せば「ワンペダル」モードがすぐに立ち上がる。電動感あふれる走りを公道で体験してきた。
「イノベーティブペダル」の便利さを実感
先代のデビュー時には「PHEVのSUV」が他になかったので、それだけでも十分に魅力があった。静かでありながら豪快なモーターの加速感には正直に「すごいな」と思ったものだ。ただ、ライバルが増えてきた今では、「PHEVのSUV」であること自体にアドバンテージは少ない。そのため新型アウトランダーは、ツインモーター4WDのパワーアップを図るとともに、ボディ剛性をしっかりと突き詰めた進化を目指したようだ。
センターコンソールにあるダイヤル式のドライブモードセレクターは、「ノーマル」が頂点の位置にあり、左側に「エコ」と「パワー」、右側に「ターマック」「グラベル」「スノー」「マッド」が並んでいる。ダイヤルの中央は、下り坂のスピード調整を自動で行ってくれる「ヒルディセントコントロール」ボタンとなっている。回すと「カチカチ」というはっきりとしたクリック感が感じられて、とても使いやすい。
回生や減速のレベルは、ステアリングのパドルを使って調整する。強さは「B0」から「B5」までの幅で変えられる。シフトノブの右側にある「イノベーティブペダル」スイッチを押せば、アクセルペダルのみで加減速ができる、いわゆる「ワンペダル」走行が可能に。ただし、アクセルオフではクリープ走行状態までしか減速しないので、停止するためにはブレーキペダルを踏まなければならない。これがかなり便利で、市街地では「ノーマル」モード+ワンペダルでほとんどのシチュエーションを走り続けていたほどだ。
新型で気になった点を挙げると、ワンペダル時の減速Gの立ち上がり方が少し強すぎて、乗員に少し負担をかけてしまうところ。また、静かなEV車でよくある、路面状態によってはロードノイズの音圧(音色?)の変化が少し目立ってしまうところ(タイヤの銘柄はブリヂストン「エコピア」、サイズは255/45R20)。それと、水平なラインを保ったダッシュボードやウエストラインはいいのだが、全体のポジションが高めで、例えば街中によくある駐車場の出口でチケットを機械に差し込む際には、窓枠の高さが気になって苦労することがあった。
三菱自動車の広報が「ウチらしくない(笑)」と謙遜しながら教えてくれたのは、新型アウトランダーPHEVの購入者がどこのクルマから乗り換えてきたのかについてのデータだ。同社では従来、三菱のクルマから三菱のクルマへと乗り換える顧客が多かったそうなのだが、新型アウトランダーPHEVは三菱からの乗り換えと他社からの乗り換えが半々くらいになっているという。ちなみに受注は好調で、先行受注を取り始めた2021年10月末から2022年1月23日までで累計9,000台超の注文が入ったそうだ。
さて、実は筆者の父親は初代「ミニカ」から三菱車をずっと乗り続けていた三菱党で、その影響もあり、筆者の最初のマイカーも中古の「ランサーセレステ1.4SR」だった。当時の三菱にはセレステをはじめ、ギャラン「GTO」や「FTO」などカッコいいクルマが多く、その後の初代「ランサーターボ」や「ミラージュ」「パジェロ」など、いいデザインがそろっていた。新型アウトランダーのテレビCMにも、過去の名車たちが登場している。
アウトランダーは受注好調なようだが、せっかくだから、システムはそのままでシンプルなデザインの「PHEV版パジェロ」も出せないのかな、などと思っているのは筆者だけだろうか。アライアンスを組む日産自動車やルノーには、ビッグネームである「パジェロ」のライバルとなるクルマがいないのだから、その空隙を埋める意味でも、三菱製電動オフローダーの存在意義は十分にあると思うのだが……。