三菱自動車工業のフラッグシップSUV「アウトランダー」が9年ぶりにフルモデルチェンジした。日本仕様はプラグインハイブリッド車(PHEV)のみで、3列シート仕様も選べるところが大きなトピックだが、出来栄えはどうなのか。市販モデルの実車を確認してきた。

  • 三菱自動車の新型「アウトランダーPHEV」

    三菱自動車の新型「アウトランダーPHEV」(本稿の写真は撮影:原アキラ)

体躯も性能も大幅増!

新型アウトランダーのボディサイズは全長4,710mm、全幅1,860mm、全高1,745mm(「M」グレードは1,740mm)、ホイールベース2,705mm。先代に比べて15mm長く、60mm広く、35mm高く、ホイールベースも35mm伸びた。かなりのサイズアップだ。初代アウトランダーの発売当時は少なかったミドルサイズSUVも、今ではかなり増えてきている。今回のサイズアップは、ライバル達と対等に勝負できる体躯を獲得したと見ることもできる。

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    新型「アウトランダーPHEV」はSUVタイプのプラグインハイブリッド車(PHEV)。グレードは価格の安い順に「M」(462.11万円~)、「G」(490.49万円~)、「P」(530.07万円~)の3種類。Mは2列シート5人乗り、Pは3列シート7人乗りで、Gは好きな方を選べる

プラットフォームは日産自動車、ルノーとのアライアンスによる新型「CMF-C/D」を使用。5年前に始まった新型の企画段階では構想になかったそうだが、共有が決まった後で三菱独自のPHEVシステムや3列シートを組み込んだため、調整には苦労したようだ。

パワートレインはツインモーター4WDのS-AWDシステムを搭載するPHEV一択。日本ではガソリンエンジン搭載モデルを売らないことにした。PHEVは先代からの改良型。98kW/195Nmを発生する「4B12 MIVEC」型2.4L4気筒ガソリンエンジンに、前85kW/255Nm、後100kW/195Nmの2モーターを組み合わせる。先代の前/後モーター出力が60/70kWだったから、大幅にパワーアップした格好だ。

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    北米ではガソリンエンジンモデルも販売しているそうだが、日本ではPHEV一択だ

駆動用のリチウムイオンバッテリーは総電力量が先代の12.0kWhから20kWhに増加。EVでの航続距離は同60km前後から87km(Mグレード、G/Pグレードは83km)まで伸びた。通勤や買い物などの一般的な使い方だと、ほぼモーター走行だけで賄うことができるはずだ。燃料タンクの容量も45Lから56Lに増えているので、満充電でガソリン満タンなら1,000kmは走れる。長い航続距離を獲得したところは評価できるポイントだ。

一方でネガなポイントを挙げるとしたら、車体重量が大幅に増えていることだろうか。先代が約1.8t程度だったのに対し、新型は2.0tを超えてしまっている。ただ、樹脂製フェンダーやアルミのボンネットなどを採用して軽量化には取り組んでいるし、バッテリーの重いPHEVシステムを組み込んだ3列シートのSUVとしては、現代の標準的なところに収まっているともいえる。

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    3列シートを装着できるボディサイズにPHEVを積んでいるのだから、2t超も致し方なしか

「写真よりいい」ところとは

エクステリアは、現在の三菱車がアイデンティティとしている「ダイナミックシールド」の顔が印象的。好き嫌いは別として、一目で三菱車とわかるという点でアピール度は高い。

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  • 最近の三菱車に共通する「ダイナミックシールド」の顔つき

「写真で見るよりずっといいな」と思ったのは、インテリアの質感や色使いだ。水平基調でブラックベースのダッシュボードやドアパネルには、落ち着いたサドルタンのソフトパッドが強く主張しない程度の位置とサイズで取り付けられている。セミアニリンレザーの厚みのあるシートには、ダイヤモンド型に縫い込まれたパッドと同色のステッチが(Pグレード)。ちょっとギラついた感じのある外見に比べて、ドアを開けた空間は“大人”の印象なのだ。

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  • ブラック&サドルタン(セミアニリンレザー)のインテリアは「P」グレードのみ

3列目シートはあくまでエマージェンシー用だが、いざという時のためにあると便利なのはいうまでもない。ちなみに、170cm前後の筆者が座ってみると、上下方向はなんとか我慢できるけれど、つま先が前のシート下に入らないのでちょっと苦しい。降りる時にはトリッキーな姿勢になるのでけっこう辛かった。

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    あると便利な3列目シート。スペース的に、大人が長時間座っているのは大変そうだ

3列目シートを折り畳むと、テールゲートを開けて後ろ向きに座るような使い方もできそうだったので、アウトドアで景色を見たりするのによさそうだなと思ったのだが、広報に聞いてみると残念ながらそうした想定はしていないとのこと。PHEV+3列目の組み合わせは、インバーターとリアモーターを一体化して室外に追い出すことでギリギリ実現できた、との説明があった。パッケージングの苦労は大変なものだったのだろうと推察できるのだが、次のモデルでは何とか工夫して、後ろ向きのシートセッティングを盛り込んでいただけないかと思う。

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    3列目を折りたたむと広いラゲッジスペースが出現

販売目標が月間1,000台であるのに対し、先行注文の受付開始から3カ月足らず(2022年1月23日時点のデータ)で9,000台超の受注を獲得した新型アウトランダーPHEV。開発陣や同社広報に聞いてみると、売れ行きについては大いに手ごたえを得ている様子だ。販売の内訳をグレード別にみると、最上級グレード「P」が最も多い76%。7人乗り仕様を選んだユーザーは全体の83%(GとPの合算)に達しているという。ボディカラーは「ホワイトダイヤモンド」44%、「ホワイトダイヤモンド/ブラックマイカ」(ボディが白、屋根が黒)17%、「ブラックダイヤモンド」12%という比率になっている。