2050年の脱炭素社会を実現するために、自動車メーカー各社が電気自動車(EV)の開発を進めています。徐々に販売される車種も増えてきているようです。日本を代表する自動車メーカーの1社であるホンダでは、燃料電池車(FCV)とEVによる電動車比率を段階的に高めていき、2040年には100%にすることを目標に掲げていています。
2020年には、ホンダ初の量産EV「Honda e」を発表し、話題となりました。タイプは2種類あり、価格は451万円~495万円と高価。このため、EVの普及に向けた国や自治体による補助金制度も用意されています。
この記事では、ホンダの電気自動車EVの状況をはじめ、初の普及型EVとなる「Honda e」の特徴、そして、モーターを積極的に活用するハイブリッドシステム「e:HEV」などを紹介します。
EVやホンダの車に興味がある人は、ぜひご一読ください。
ホンダとは
ホンダとは、日本を代表するメーカーである本田技研工業が展開しているブランドです。自動車や2輪車のイメージが強いですが、発電機や耕運機、船外機などのライフクリエーション製品も手掛けています。2020年度の全ての製品の世界販売実績は2,530万台を越えており、世界中から支持されているメーカーのひとつです。
ここでは、ホンダブランドの概要を見ていきましょう。
2020年にEVを発表! 北米ではSUVタイプの発売予定も
ホンダは2016年3月、水素で発電を行い電気で走るFCV「CLARITY FUEL CELL」(クラリティフューエルセル)の販売を開始。そして、初の量産EVとなるHonda eを2020年8月に発表し、同年10月に発売しました。
Honda eは欧州でも展開していますが、2024年には米国で展開するHondaブランドのEV量販モデル第1弾として、SUVの「PROLOGUE」(プロローグ)を発売することを発表済みです。さらに2024年中には、ホンダが北米で展開している高級車ブランド「Acura」でも、SUVタイプのEVを投入する予定です。
2040年にEVとFCVで販売比率100%を計画
ホンダは、2040年にEVとFCVによる電動車の販売比率を100%にするという目標を発表しました。その背景には、日本政府の掲げる「2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み」があります。
カーボンニュートラルの動きが先行する海外では、近い将来、ガソリンとディーゼルのエンジンを搭載する新車の販売を禁止することを決めた国もあるほど。もちろん、ホンダの電動車戦略も、海外の動きを視野に入れたものです。
電動車感を強めたハイブリッド「e:HEV」を積極的に展開中
現在、ホンダが販売しているEVはHonda eのみ。航続距離も短めのコンパクトカーでありながら価格は400万円を超えるため、なかなか手を出せない人も多いでしょう。
しかし、最も身近な電動車であるハイブリッドカーも進化しています。環境性能の向上と電動車らしい走りを強調したハイブリッド車として発売しているe:HEV搭載車なら、エントリーの「フィット」ならば200万円を切るグレードから用意されるなど選択肢は豊富です。
2024年には軽にもEV導入
ホンダは2024年に軽自動車にもEVを投入する計画です。2021年12月現在、ホンダの軽自動車「Nシリーズ」はガソリン仕様のピュアエンジン車のみ。ただ、小型軽量で燃費に優れる軽自動車は、コストもシビア。そのため、市場全体でもマイルドハイブリッドまでとなっています。現状、ホンダではエンジン車の効率アップで環境性能の向上を図っています。
ホンダEVの中古車は少なめ
Honda eの発売から1年ほどが経過しますが、初年度は販売台数が限定されており、年間販売台数も1,000台に限定するなど、ごく少量の販売にとどまっています。そのため、中古車の流通台数もわずかで、価格も新車に近いものとなっています。また政府のCEV補助金は、中古車は対象外となるため、すぐにEVを利用したい人以外はメリットが薄いのも現実です。
中古市場にもあまり出回っていませんし、価格もあまり下がっていません。
「Honda e」のサイズや特徴
Honda eはまるで、自動車版ASIMOといった感じの可愛くて未来的なデザインを持つ小さなEVです。カラーバリエーションも全7色と豊富で装備も充実しています。ボディサイズはコンパクトカーのフィットより少し小ぶりですが、4人乗りのキャビンを確保しています。
ここではHonda eの注目すべきポイントを見ていきましょう。
2種類のタイプがあり値段も異なる
Honda eには2種類の仕様があり、価格や航続距離燃費は下記の通りです。
価格 | 一充電走行距離燃費 | ||
WLTCモード | JC08モード | ||
Honda e | 451万円 | 283km | 308km |
Honda e Advance | 495万円 | 259km | 274km |
2グレードの主な違いは、モーター出力と装備の差になります。上位グレードの「Honda e Advance」は駐車支援機能「Hondaパーキングパイロット」やマルチビューカメラシステム、プレミアムサウンドシステムなど装備が充実していますが、その分、価格も高価になります。一方、「Honda e」は装備とモーター出力を抑えていますが、電費が優先され、航続距離が長くなる点がポイントです。
国の補助金で購入支援優遇購入できる
「Honda e」を購入する際には、環境車の普及促進を目的とした国の補助金制度「CEV補助金」が利用できます。現在、申請を受け付けているのは、令和3年度CEV補助金のみとなります。
令和3年度クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金 (再エネ100%電力調達にしない) |
環境省補助金 (再エネ100%電力調達にして4年間のモニター制度等へ協力) |
|
Honda e | 35.0万円 | 66.1万円 |
Honda e Advance | 27.2万円 | 50.5万円 |
CEV補助金は年度毎に補助対象期間と予算の上限が定められているため、早期に補助金の申請が打ち切られる場合もあります。また、国以外でも自治体独自の補助を行っている場合もあります。まずは購入時に販売店に相談するといいでしょう。
5つのモニターに囲まれたコクピット
Honda eのダッシュボードには5つのスクリーンを水平配置しています。左右の画面は、カメラ式ドアミラーのモニター。中央の2画面がインフォテイメントディスプレイ。運転席前にはデジタルメーターがあり、いかにも未来的なコクピットとなっています。
インフォテイメントディスプレイは多機能で、運転席側と助手席側で画面を入れ替えたり、さまざまな機能の操作を助手席側で行うこともできます。また上位グレード「advance」には高機能サウンドシステムまで備えるなど、エンタメ機能が強化されている点もユニークです。また、運転席側と助手席側で異なるアプリを使うこともできるなど、さまざまな使い方ができるのが魅力です。
運転支援機能も充実している
Honda eは「ノーマル」と「スポーツ」が切り替えられる走行モードを備えるなど、モーターによる走りの良さを楽しめるEVです。もちろん、衝突被害軽減ブレーキなどに代表される先進の運転支援機能「Honda SENSING」も標準化。衝突安全性能や歩行者との衝突時に頭部を保護する機能など、安全運転機能も充実しています。最新の安全性能をしっかりと押さえた頼りになるEVなのです。支援システムやエアバッグなどの安全性能も備えていますので、運転中や万が一のトラブルにも助けてくれる機能を備えたEVです。
電動車らしいを満喫できるハイブリッド「e:HEV」車5選
ホンダにはEVのHonda e以外にも、発電した電気を使い、積極的にモーターで走るハイブリッドシステムのe:HEVがあります。このシステムは、必要となればエンジンパワーも動力に使えるのがメリットです。車種ごとの特徴を見ていきましょう。
「フィット」(ハイブリッド)
コンパクトカーのフィットは、2021年で登場から20周年を迎えたホンダの主力モデルです。パワーユニットはガソリンエンジンとe:HEVから選択できます。
グレードやカラーも豊富で、自分に最適な1台が選びやすいのも魅力。コンパクトなボディを最大限に活用した広くて使い勝手の良好なキャビンが特徴となります。エントリーとなるe:HEV BASIC(FF)の場合、価格や燃費は下記の通りです。
価格 | 燃費 | |
WLTCモード | JC08モード | |
199万7,600円 | 28.6km | 38.6km |
小回りが利いて燃費もよく、ホンダ登録車の国内販売ではトップを飾る人気車です。
「ヴェゼル」(ハイブリッド)
ホンダのコンパクトSUV「ヴェゼル」は、2021年にフルモデルチェンジしたばかり。とても人気が高い1台です。パワーユニットはガソリン車とe:HEVの2種類ですが、主力はe:HEVです。
ハイブリッド仕様のエントリーモデル「e:HEV Z(FF)」の場合、価格や燃費は下記の通りです。
価格 | 燃費 | |
WLTCモード | JC08モード | |
265万8700円 | 25.0km | 30.4km |
ヴェゼルは扱いやすいサイズと燃費の良さが好評のSUVです。もちろん、e:HEVでも4WDが選べます。
「インサイト」
セダンタイプの「インサイト」はe:HEV専用車です。
歴代モデルがハイブリッドカー専用車として開発されているインサイトは、少し高級感のある上級パーソナルセダンです。エントリーグレード「EX」の場合、価格や燃費は下記の通りです。
価格 | 燃費 | |
WLTCモード | JC08モード | |
335万5,000円 | 28.4km | 34.2km |
フォーマルなセダンながら、e:HEVにより高い燃費を実現しています。
「オデッセイ」(ハイブリッド)
ホンダのフラッグシップミニバン「オデッセイ」は、7人または8人乗りの多人数乗車が可能な高級車です。パワーユニットはガソリン車とe:HEVが選択できます。
エントリ―となる「e:HEV ABSOLUTE」(8人乗り)の場合、価格や燃費は下記の通りです。
価格 | 燃費 | |
WLTCモード | JC08モード | |
419万8000円 | 20.2km | 25.2km |
大型ミニバンですが、ハイブリッドならば20.2km/Lと比較的燃費も良好。多人数での快適な移動を楽しむ人には最適な1台といえるでしょう。伝統の低床フロアによる走りの良さも魅力のひとつです。大型車とあってセダンタイプやコンパクトカーに比べると燃費はそれなりです。2021年9月には出荷台数ランキング32位であり、比較的売れている車種です。
「ステップワゴン」(ハイブリッド)
ホンダの主力ファミリーミニバンであるステップワゴン。ガソリン車では、7人乗りと8人乗り仕様が選択可能ですが、e:HEVは7人乗り仕様となり、デザインもスポーティーなスパーダに限定されます。
「e:HEV SPADA G・Honda SENSING」の場合、価格や燃費は下記の通りです。
価格 | 燃費 | |
WLTCモード | JC08モード | |
342万7,600円 | 20.0km | 25.0km |
ステップワゴンの特徴は、e::HEVの方がスポーティーな走りを実現しているところです。ミニバンで運転を楽しみたい人にもおススメできる1台です。こちらは2021年9月時点で国内出荷台数15位と、人気があります。広々とした車内はファミリーカーにおすすめです。
脱炭素社会に向けてホンダの挑戦が始まる
ホンダは、2020年に量産初EVのHonda eを発売しました。しかし、EV普及の取り組みの前に、1999年にホンダ初のハイブリッドカー「インサイト」を投入するなど、エコカーに積極的に取り組んできたメーカーでもあります。今の主力は2モーターハイブリッドのe:HEVですが、このハイブリッドはエンジンで発電し、モーターで走ることをメインにしているので、EVに極めて近い存在といえます。これらの技術も活用してEVの開発を進め、2040年には販売する自動車のすべてをEVとFCVにすることを目標としています。
ただし2021年10月時点では、ホンダでHonda e以外に日本で販売しているEVはなく、EVに近いハイブリッドであるe:HEV車が主流です。
しばらくは現状のハイブリッドカーが中心となりますが、今後はEVも積極的な展開が期待されます。Honda eのように、ホンダらしい個性的なEVの登場が楽しみですね。
EVはますます増加していくことが予想されます。この記事で紹介した車を参考に、車選びに役立ててください。