今年11月1日に開園すると発表された「ジブリパーク」。先日メディア発表会にて、第1期にオープンする3つのエリアの詳細や建設中の内部が一部公開された。国内外のジブリファン待望のジブリパーク。エリアごとの展示内容や宮崎吾郎監督のこだわりを紹介する。

  • 愛知県長久手市、愛・地球博記念公園に建設中のジブリパーク

第1期オープンは3エリア

メディア発表会に登壇した大村秀章愛知県知事は、これまで未発表だった第1期開園日について、3つのエリア(「青春の丘」、「ジブリの大倉庫」、「どんどこ森」)を11月1日にオープンすると発表した。残る2つのエリア(「もののけの里」、「魔女の谷」)は、第1期からおおむね1年後に開園する。

  • ジブリパークの整備エリア

チケットについては、安全かつ快適に楽しんでもらうため、日時指定の完全予約制でのスタートとなる。また入場料は未定だが、「いわゆるテーマパークの入場料よりはリーズナブルな設定にしたい」と話した。

また、ジブリパークのエリア配置については、愛・地球博公園内の既存施設や未利用地を活用して整備を進めている。公園全体195haのうち、5つのエリア合わせて7.1haと、全体の3.7%をジブリパークとして活用。その他のエリアは、引き続き公園として無料で楽しめる。

宮崎吾郎監督は、「このあたりは、万博の前からずっと公園として親しまれてきた場所。僕たちがジブリパークを作ることで、地元の人の記憶が壊れたりするようなことがないよう、公園の中で未利用の場所や利用しなくなった場所を活用することで、ジブリが隙間を埋めていけるといいなと思う」と話した。

  • スタジオジブリ・宮崎吾郎監督

3つのエリアの全貌

青春の丘

来場者を迎える、ジブリパークの象徴となるエリア。

  • 青春の丘

『耳をすませば』に登場する「地球屋」やロータリー広場、『猫の恩返し』に登場する「猫の事務所」、『天空の城ラピュタ』や『ハウルの動く城』などの世界観を想起させるエレベーターなどを整備。

地球屋は中身も完全再現し、作品内に登場するからくり時計も準備中。なんと同じからくりで動くように制作しているのだとか。作品の舞台となった聖蹟桜ヶ丘で実際にバイオリンを作っている人と共同でバイオリンも制作中なのだそう。

  • 地球屋完成図

「猫の事務所」は猫サイズとなっており、家具や小物などすべてミニチュアサイズで制作しているという。

  • 『耳をすませば』に登場する「地球屋」。現在はモルタル塗りの状態だが、完成はオレンジ色の壁になるという

  • 前から見ると2階建てだが、後ろの坂の下から見ると3階建てになっている

パークのシンボルのひとつとなるエレベーター棟は、既存のものをリノベーションする形で活用。『天空の城ラピュタ』や『ハウルの動く城』などの、19世紀末の空想科学的要素を取り入れた内外装になる。

  • 既存ものをリノベーション中のエレベーター棟

  • デザインには19世紀末の空想科学的要素を反映している

ジブリの大倉庫

営業を終了した温水プールの大空間を活かし、その内部に建物を作りこんで、屋内に街があるような空間を作り出す「ジブリの大倉庫」。その総面積は、三鷹の森美術館の約4倍の規模となる。

  • ジブリの大倉庫

“倉庫”らしさと、ジブリ作品に見られる懐かしさを感じる和洋折衷の建築空間をイメージし、映像展示室(約170席)、 子どもの遊び場、売店、スタジオジブリの収蔵施設、カフェ棟を建設中。子どもしか入れないプレイルームから大人が楽しめる作品展示まで、盛りだくさんの内容となっている。

  • ラピュタの庭園を再現した「天空の城」

  • プレイスペースには猫バスも

「床下の家と小人の庭」では、『借りぐらしのアリエッティ』でアリエッティと家族が暮らす家と、彼女たちの目線で見た植物を大きなセットで用意したらす家と彼女たちの目線で見た植物の茂る庭を大きなセットで表現。

『天空の城ラピュタ』に登場する廃墟となったラピュタの庭園(「天空の庭」)や、同作の空飛ぶ巨大な船(全長およそ6m)のほか、子どもたちが『となりのトトロ』の世界で遊べる部屋なども設置される。

  • オレンジ色の建物は1階と2階が展示室になっている

  • 時計の下には本格的な映像展示室が

「この大倉庫のはじまりは、本当に“倉庫”なんです。というのも、ジブリの〇〇展とかをやるたびにどんどん造形物が増えていって、ジブリ美術館にもどんどん造形物が増えていく。倉庫代もバカにならなくてもう大変なんですよ……という話が回りまわって大村知事の耳に入ったのが発端です」と宮崎監督。

三鷹のジブリ美術館を根底にしながらも、より大きく、“ごちゃ混ぜ感”を加えたという意味で「大倉庫」と名付けた。

  • 建設中のジブリの大倉庫を案内する宮崎監督

ジブリパークの岡村徹也プロデューサーは、今回プールの跡地を再利用するという構想について、「ジブリパークを作るにあたって、建物を壊すのではなく、すでにあるものをリノベーションする発想で新しくジブリパークになったというのがポイントです」と説明

建物を再利用することで、ゴミを大幅に減らすといった環境への配慮も、ジブリが公園事業を手掛ける意義だと語った。

  • ジブリパーク・岡村徹也プロデューサー(左)

また、スタジオジブリ・鈴木敏夫プロデューサーは発表会の場で、「ジブリの大倉庫に、ジブリ美術館の精神が生きている。ジブリ美術館の発展形をその中に見て、僕は手ごたえを感じた」と太鼓判を押した。

  • スタジオジブリ・鈴木敏夫プロデューサー

どんどこ森

愛知万博で建てられた『となりのトトロ』の「サツキとメイの家」を中心とした、昭和の田園景観を再現したエリア。

  • サツキとメイの家

「サツキとメイの家」の裏山には、トトロを模した木製遊具「どんどこ堂」を設置。小学校低学年くらいまでの子どもであれば中に入ることもできる。その他、散策路も整備。バリアフリーにも配慮し、定員8名のスロープカーも用意する。

  • 木製遊具「どんどこ堂」

パークの楽しみ方は人それぞれ

最後に、パークの建設に携わる宮崎監督と岡村プロデューサーは、パークの楽しみ方について以下のように話した。

宮崎監督「ジブリパークには大きくふたつの側面があって、ひとつは自然の中に建てたサツキとメイの家。そしてもうひとつは、建物の中に建物を作った大倉庫。楽しみ方は人それぞれが見つけてもらえるといいなと思う」

岡村プロデューサー「例えば地球屋は、(パーク外の)芝生広場からでも見えるんです。別に毎回有料エリアに入らなくても、『今日は散策して地球屋を見ながら芝生広場でピクニックしようか』とか、そんな楽しみ方でもいいんです。それぞれが作品と向き合って楽しみ方を見つけてもらえればいいなと思います」

開園まで約9カ月。ジブリの作品に通じる想いや世界観が込められたジブリパーク。その完成が待ち遠しい。

  • エリア内にあった表札。この名前はもしかして……